第8話

自分を呼ぶ声が聞こえた。和歌子だった。俊一郎は戸惑った。もう、会うことなんて二度とないと思っていたからだ。和歌子が親しげに声をかけてくる。

「会いたかったんですよう。大西さん」

何を今さら。と、怒りがこみ上げてきた。

「ぼ、僕は」

と、言いかけたが次の声が見当たらなかった。

「半年振りですね」

和歌子が言ってきた。

「あの朝、兄と出勤した以来です」

俊一郎は言葉を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る