第5話

「もう別れましたよー」

むんむんとした男性連中の中に、ひとつだけ黄色い声が混じる。

「でも寂しくなるなー。ひかるちゃん、本当に今日で辞めてしまうの?」

「はい。大学の勉強が忙しくて」

「誰か友達紹介してよー」

「誰もいませんよー。こんな仕事する子なんて」

ひかるがアルバイトを辞めるせいで、本当にみな寂しそうだ。

「そう言えば、大西さんはどうなったんですか?ほら、一人、気になってる女性がいるって言ってたじゃありませんか」

ひかるは、俊一郎に話をふってきた。

「え?大西、そんな女いたの?」

誰かが反応し、注目が集まる。

「だめでしたよ。ふられました。こっぱみじんです」

はははははははは、一瞬にして、笑いにつつまれた。

ひかるが言う。

「大西さん。失恋を忘れる方法は、新しい恋を見つけることですよ」

誰かが野次を入れる。

「なーに、ひかるちゃん、また新しい男、好きになったの?」

「そうですねー。ご想像におまかせします」

「まーたー」

はははははははは、現場はまた笑いにつつまれた。

その晩はそうして終わった。

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