第114話「鬼、踊る───」
──ズドォォォォオォオオオオォォン!!
船体がビリビリと震えるほどの衝撃。
辛うじて回避したものの、
テンガの拳は、エプソMK-2の40mmストレートなみの破壊力を見せた。
「ひゅぅ♪ やるぅ」
涼しい顔のテンガが、何でもないように素早く拳を抜くと、
「船を壊さないように言われてるからなー……軽めにしといてやるぜ!! そぉれ──」
『逃げろクラムぁぁぁ!! 殺されるぞ!』
悲痛な声で叫ぶ魔王。
「くっそがぁぁ!!」
カウンター気味に、ガバメント改で至近距離からむき出しの頭部を狙う。
バン、バンバンバンバンバンバンバンッ!
「ってぇ!」
ビシィッ──と、不安定な姿勢で撃ったにしては一発が奇跡的に
だが、
「ッてぇな、この野郎ぉぉ!」
激昂するテンガだが、
──しゅぅぅぅぅうううう………。
「おぉぉ? すげー…ぜ」
追撃に来るかと思われたテンガがピタリと動きを止める。
すると、付いたはずに傷が──シュワシュワと消えていく。
たしかに、頬を掠めた銃弾の傷。だが、その痕を指でなぞると血こそ溢れていたものの……。
「マジかよ……一瞬でかよー! すげーな、あのガキ!」
る、
「ルゥナ……?」
そ、そうだ……コイツはルゥナを───。
「あーそうそう、そうだったな。てめーの娘だったよな、へへへ、おとーたまぁぁ───ひゃははっは」
こ、いつ…………!
「いやー……可愛い子だったけどな、しゃーないよなー……さすがにロリ過ぎるのはちょっとなー」
てへへ、と悪戯っぽく笑うテンガは、
「安心しろ。俺が一生添い遂げてやるぜ? 一緒にな、おとーた」
「死ねぇぇっぇぇえ!!!!」
ズラァァン! と
「うぉ!!」
しかし、それで首が取れるほどテンガも甘くはない。
ギャリィィィイイイン! と、
神速のそれで背中の宝剣を引き抜くと受け止めて見せた。
「あっぶねー……いきなり切れんなよ」
互いの顔数cmのところで必殺の剣がギラギラと輝く。
なんでも切り裂く刀と、伝説の宝剣の
「やかましい! 死ねぇぇぇええ!」
ギギギギギギギギ───バチンッ!
どちらも互角の戦いを見せつつ、バリバリ紫電を放ちながら鍔ぜりあう。
……………って、
なんでも切り裂くんじゃないのかよ!?
「おぉぉぉ~! やるねぇ、おとーたま!」
ギギギギギと、ゼロ距離で睨み合う二人。
余裕に満ちた顔のテンガに対して、親の仇をみるような──。
いや、違う!! 子の仇を見る男の目だ。
「テンガぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
パワーはエプソMK-2の方が勝っているはずだが、テンガは地の力が違う。
旧エプソBisは、あくまでパワーアシストスーツだ。
ならば当然のことながら、最初から化け物クラスのパワーを誇るテンガのこと……エプソを
「くそがぁぁっぁぁ!!」
「ざんねーーーん!! おとーたまの負けでーす!」
ググググ、と押し込まれていくクラム。
不利な体制、押し負けるパワー──。
腕にも足にも負荷がかかり、バイザー内ではピーピーと負荷許容外の警告が出ている。
少々の高さから落下しても警告すら出ないというのに、この
『このままでは……。クラム! すまん!』
唐突に魔王が謝罪したかと思えば、
ピーーーー! と、今まで聞いたこともないような、長めの警告音が鳴る。
なんだ!? と思う間もなく、バイザー内に小さく表示が現れる。
───
「何!」
『鹵獲されるわけにはいかんのだ……許せっ』
ボォン!
「グァ!」「うぉ!」
突然小爆発を起こした刀に驚く二人、
鍔迫り合いを続けていたがため、テンガも体勢を崩す。
クラムはと言えば、僅かとは言え心構えができていたため次の行動に移るのは早かった。
テルミット焼夷剤でも含まれていたのか、激しく燃え堕ちていく
意地を張っている場合ではないと今更ながらに気付いたのだ。
ここでテンガを仕留めるよりも、この船を沈めたほうが早い。
バイザー内のタイマーは30秒を切っている。
「テンガぁ! 土産だぁぁ!」
残った武器はヒートナイフと、ガバメント改(残弾僅か)───それに、
「爆弾か!?」
「
信管を最短に設定しテンガの鼻先に投げつける。
「しゃらくせぇ!」
それを、テンガの神速のごとき剣技がスパンと切り裂くが───ヴアァァァァァァン!!
エンジンルームを一瞬で埋め尽くす大音響と目を焼く光!
「ぐ、ぐぎゃああああああ!!」
それをゼロ距離で喰らったテンガは、流石に
いくら最強とは言え、生物の範疇と言う事か……。
「あとは、」
脱出!
テンガが顔を押さえてバタバタと暴れているのを尻目に、クラムは本命の
ピ、
ピ、
ピ、
小さな電子音を立てるエプソ専用の手りゅう弾。
そう、本命の──。
……ラスト一個の手榴弾だ。
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