第113話「鬼の竈」
示されたルートに従い、奥へと向かう。
ギョム、ギョムと歩き出すクラムの足元は、空中空母ほどではないにしてもしっかりとした構造で作られている船体の床だ。
少なくともエプソMK-2の重量で潰れることもないくらいには頑丈。
デカい……。
「こいつを撃墜するのは至難の業だな」
地下での戦いの際に、ガトリング砲で撃墜しようとしたのが馬鹿らしくなってきた。
これを撃墜しようとすれば大型の対艦ミサイルか、レーザーライフルの
慎重に慎重を
奥行きはそれほどない。
ほんの少し先、
ルートが急な曲がり角を示すと、そこに───。
「これか……」
まるで、一つの巨大な生き物のように唸り声をあげているのが……この船のエンジンだった。
内部はまるで卵の内側のようで、白い外骨格を纏った硬式型の飛行船のようだ。その中に納まっているエンジンが低い唸り声をあげていた。
「こいつを破壊す──」
「よぉ!」
どかぁぁん! と、唐突な衝撃!
「……んな?!」
ガッシャーーーーーーーン!!
重量級のエプソMK-2が吹っ飛ばされて壁に激突する。
「ぐ、グハッ!」
ばかな!
接近警報なんて───?!
ッッ!
「───て、テンガぁぁぁっぁ!!!」
『勇者』だと!?
どーりで接近警報が鳴らないわけだ。……こいつの使う、大魔法って奴か!
「はは! お前は、いッつも呼び捨てにするなー……失礼だぜ、そーいうの」
「……けっ! てめぇ相手に───。…………なんだそりゃ!」
軽口の応酬中、思わず目を剥くクラム。
エプソMK-2を吹き飛ばす程のパワーだ。
何事かと思ったが、勇者なら或いは──とも思っていたが……!
それは最悪の形となって表れた。
「エ、プソ……?」
「───ん~? 知らないのか? これは、伝説の鎧って奴さ。俺専用のな」
コンコン! と自慢げに装甲を叩くテンガ。
なるほど……見た目は、旧エプソには違いない。
だが、それよりも遥かに高性能に仕上げられた代物だ。
……MK-2に勝るとも劣らない。
『ど、どうした?! 奇襲されたのか!? クラムよ、そこは放棄しろ! 脱出に間に合わんぞ』
魔王、邪魔するな!
────脱出なんか考えてねぇよ!
「そ、それよりなんだ、あれは!」
通信できているなら、視覚共有で見えているはず。
……教えろ、魔王!!
『ッッ……!!! むぅぅぅ、あれはやはり! クラム、まずいぞ!!……あ、あれは旧エプソの改良型───Ep-ssの……bisじゃ!』
やはりってなんだよ! やはりってよ!!!
『別名を、プロトタイプ:エプソMK-2……お主の使うのエプソMK-2の直系子孫じゃ』
「は、はぁぁあ!?」
怒気に満ちた叫びを返すクラムに『───ええい! 察しの悪い奴じゃ』と顔を真っ赤にする魔王。
『じゃから、あれは、旧エプソの性能向上型じゃ!!』
だ、
「だから、お前らのものだろうが、あれは!! あーいうのは全部よぉぉお!!」
何でこの後の及んでこんなものが出てくる!!
「ははっはは! 誰と話してんだ? あ?……もしかして魔王って奴か」
ギャムギョムと、歩くテンガは余裕そのもの。
この施設が自爆するのを知っていながらこの態度なら、やはりあと少しで脱出できる算段は整っているのだろう。
『に、逃げろクラム!! プロトタイプといえど、OS制御を受け通るお主の機体とはまた別の意味で高性能なのじゃ! い、今の状態では───勝てん!!!』
ふ、ふっざけろ! やってみないと分からんだろうが!!
ジャキン!
起き上がりざまに銃を抜き放ちテンガに向ける!
おらぁぁ!
「躱せるもんなら躱してみろ!」
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!!!
立ち上がり、前進しながら、ガバメント改を連射する。
が─────。
キィン! と耳障りな反跳音を立てて弾き返される。
「ほ! まぁた鉄砲かよ。……いいよなー飛び道具は───……だ・け・ど、俺はコッチで行くぜ!」
宝剣を構えるのかと思いきや、背中に納刀し素手で
「な! て、てめぇ!」
舐めるな!!
バンバンバンバンバン!!
「効かねぇよ!」
キィン、カァンと耳障りな反跳音を残して銃弾がそれていく。
「格の違いを見せてやる、ラァァァ!」
「ぐぅ!」
迫るテンガの拳を避けるためブースターも活用して姿勢を起こし回避する。
その直後に奴の拳が壁に突き刺さって───……。
ズドォォォォオォオオオオォォン!!
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