第99話「亡者の群れ」
───じょ、冗ぅッ談ッッだろぉぉぉおおお!
ズシン、ズシン!
ギョム、ギョム、ギョム! と、旧エプソが群れと───束になって襲ってくる。
「ク、クラム?」
ちっ! ネリぃぃス……!?
「てめぇは隠れてろっ!!」
バイザー内の火器選択項目で、ショットガンの
残弾は多くはないが、
ドゥン! ドゥドゥドゥドゥドゥン!!
「ぐぉ!」「がぁ!」「ぎゃあああ!」
ドコ~ン! と命中した
いくらエプソの装甲とは言え、ショットガンの口径16mmクラスのそれは至近距離では12.7mm重機関銃のソレをも上回る!
「おらぁぁ! いくらでもこい!」
幸いにも突撃支援射撃がないのが助かる。
連中は、旧エプソをフルプレートアーマーの延長程度にしか考えていない様だ。
数も…………振動センサーに感あり──約30ほどかッ!
100人の
バイザーシステムに、新規情報がアップグレード……魔王かっ!?
ビッビッビ、ビー!!
バイザー内の表示に、敵の脅威度を算出表示。
───王国軍歩兵、
───該当あり、王国軍近衛兵、王太子直属。
ビッビッビ、ビー
───敵集団、脅威度79……
「
ダダダダン、ダダダダン!!
9mmの連射と、取り巻きの突撃が再開───その後方で銃を構えているのは、
「しつこい奴だな! 囚人兵! ……いや、クラム・エンバニアぁぁぁ!!!」
て、
てめぇぇぇはぁぁ……!
あの日、リズを奪っていった男、
たくさんの囚人兵を死地へ追いやった男、
そして、クラムを囚人兵に取り立てた男───
見つけた!
「──見つけたぞ!!」
ここであったが、百年目!!
すぅぅぅ───……
「……『教官』んんんんん!!!」
外部スピーカーが割れんばかりの声量だ。
しかし、負けじと兵を動かす『教官』。
「ふっ。……無礼な口を聞くなと言ったはずだぁぁぁ!! 総員、突撃ぃぃぃ!!」
───おう!!!
と、応じるのは王太子直属だという近衛兵たち。
全員、旧エプソ装備!
飛び道具は───教官のみ?
ダダダダダダダダダダダ!!!
ダダダッダダダンダダダ!!!
「魔王! 敵の火力は薄い! 火器類は残っていないのか?」
『あれは……おそらく第二次「北伐」で
……そうか!
あれは勇者と交戦した武装隊員の銃なのか……。ならば、数はそこそこあっても弾はなかったはず。
「了解! 銃撃は無視していいな!?」
『9mm程度しかないはずじゃ! この施設はまだ生きているとはいえ、流石に火薬の類は劣化して使えんはずじゃからな!』
なるほど……!
旧エプソが大量に残っていたのは、
まぁいい。今更いってもしょうがない──それよりも情報がアップグレードされたことのほうが大事だ。
顛末さえ聞ければ、上々……!
───いくぞッ!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
突撃する近衛兵たちに、負けじとクラムも突撃開始、一気に兵器廠に突っ込んでいく。
敵の装備は精々が斬馬刀に、スレッジハンマー程度の鈍器類。
一応は対エプソ装備ということなのだろう。……間違ってはいない。
エプソの馬鹿力でぶん殴れば、装甲はともかく内部の損傷は免れない。
なにより、王国兵が持つ程度の華奢な剣程度では、そもそも装甲の前にはなんの意味もなさないのだから───。
「──どけぇぇぇえええ!!」
ジャキリと銃を構えると、発射に告ぐ発射!
ドゥン、ドゥン、ドゥ、ドゥドゥドゥン!!!
カラコロ、と軽い音を立てて空のショットシェルが零れていく。
その分だけ弾丸は発射され、旧式のエプソを貫いていった。
「なんだ!? こっちの攻撃は効かないのに、なぜ──?? は、話が違うぞ!」
驚愕しているのは『教官』だ。
銃を乱射しているが、扱いなれていないものだから味方の背中に誤射をブチかましている始末。脅威にすらならない。
反対にクラムの駆るエプソMK-2は最新型で武装も強力無比。
ショットガンゆえ、射程が短いのが難点だが、屋内戦には強い。
白兵戦しか選択肢のない旧エプソの群れでは早々勝ち目はないだろう。
「中古品で勝てるかぁぁぁあ!!」
ドゥン! と、ラスト一発の
貫通力はないが、爆破の衝撃で内部破壊が可能。
そもそも、旧エプソはヘルメットがないため、顔面むき出しだ。
散弾で狙えなくもないが、確実を
「く……」
数体の旧エプソを討ち取ると、不利を悟ったのか、
「ひ、退け! 退けぇぇぇ!!」
『教官』が銃を乱射しつつ撤退指示。
はっ──!!! 笑わせる……!
──どこに逃げるってんだよ!
おらぁぁっぁ!!
「雑魚がああぁぁぁ!!」
ドゥン、ドゥン!!
ヅバァァン、ヅバァァン!! と小爆発を伴う命中弾。「ぐはっ……」と、顔面がグッチャグチャに焼け焦げた近衛兵が吐血する。
いくら装甲が厚くとも爆発のエネルギーは簡単には消せない。
貫通はしなくとも、あれでは内臓がグチャグチャだろう。
だが、即死とはいかないらしい。
ドラム弾倉は
そのためショットガン用の予備弾装はあと一つ。交換してもいいのだが、弾倉内の散弾等が無駄になってしまう。
くそ! 引き返してでも、補給を受けるべきだったか!
『クラム! 弾をケチるなっ。ショットガンの弾もいくらかは
……
『そのまま奥に行かせろ! 距離が開けば
「!……
ダダダダダダダダダッダダダン!!
最後の銃撃の後、近衛兵たちは後退したらしい。遺棄死体を10体ほど残し……後退。
兵器廠の奥にはエプソを保管していたハンガーがあるよう。
「『勇者』に対抗するために、エプソの数を揃えたのか? 質ではなく、……数を───」
『歴代王には、……万が一の時のために『勇者』に対抗する力を与えたのじゃよ……しかし、当然濫用できんようにして、な。……だから、こうも大量に使用できるはずがないのじゃ───何が一体……』
チッ……!
要するに『勇者』の発生を見越した予防措置ということ……。
ならば、王国も一応は『勇者』を
「バカが!! 余計なことしているから、
『!!! ぐぅ……そうであろうな……クソ! 文明基準からしてハンガー内の予備機までものキーロックを解除できるとは思わなんだ!』
アホォ!
どうせ野蛮人だとか言って小バカにしてたんだろうが!
王国の連中が隠してたのは他国に奪われないためで……足元に有効な装備がありゃ研究くらいするわ!
「他に何がある!? もう信じねぇぞ……エプソだけじゃねぇんだろっ?」
っと、
シンと静まりかえった戦場。
撤退完了ってか?
口論しつつも、『教官』達の動きは目で追っている。
バイザー内には、既に火器管制により25mmグレネードの危害半径が表示されていた。
よし!
ここで発砲する分にはクラムには被害が出ないはずだ。
で、魔王───!
話は終わってねぇぞ!
『ぬぅぅぅ……言えん! 言えんが……えぇい! 現在、開示請求をしとるところじゃ!』
何だよ! 開示請求とか……役所仕事かっつーの!!
「不期遭遇にしても、程度が悪すぎるぞ! ───敵の
『待てとしか言えん! 今はそこの敵を殲滅しろぉぉ!』
互いに不信感と、激昂───。
地獄の底で鬼神と魔王が罵りあう……。
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