第65話「エプソ無双っ!」
ラウンドツー!
『ファイト!』
ジャキリと構える大型マシンガン。
先の戦闘で少々の弾の消耗はあったが、まだまだ
た~~~っぷりとある。
背中のコンテナから延びる弾帯をジャラりと揺らし、クラムは銃口を近衛兵団に向けた。
『どうじゃ~、支援してほしいか? ん?』
バイザー内で魔王が余計な一言を入れる。
『冗~談きついぜ。まずは俺がやるに決まってるだろ?』
空中空母の支援射撃を
…………それでは面白くない。
『まだまだ、ウォーミングアップにもなっていねぇよ』
と、野戦師団との戦いなどあって無しの
睨み付ける先───近衛兵団に微かな異変が……。
『なんだ?』
訝しむクラムの視線の先。
ボボボボン!! と、空中に炎の弾が浮かんだ。
ほう?
……あれは、魔法か。
騎兵集団でありながら、異なる兵科の魔導士を組み込んでいるらしい。
浮かび上がった魔法は多重詠唱により、巨大な火球を生み出し、クラムを指向する。
その火球を浮かべたまま近衛兵団は突撃を続けるが、それを見てクラムが嘲るように笑う。
フ……。
『───火力が違うんだよぉ!!』
猛然と銃を構えると、躊躇なく引き金をひく。
ボン!!! と、銃口側面の40mmグレネードを発射。
素早く排莢、装填───発射。
ボン! ジャキン、シャコ……ボン!
と、恐ろしい手さばきで40mmグレネード弾をつるべ撃ち。
ヒュルウルルルル……ドカン! ドカン!
ドカン! ドカン! ドガン!
激しく爆発する榴弾は、無人機の対地ミサイルには敵わないものの、この世界の兵には神の矢のごとし!
重装騎兵とはいえ、所詮は生身の人馬に防げるはずもなく───。
「ぎゃああ!!」「ぐぉぉ!」「ひぃぃ!」
と、爆裂する榴弾に巻き上げられ吹っ飛ぶ多数の騎兵たち。
その爆発やら、
破片やら、
ふっとんだ仲間やら、
その他
だが勇猛果敢な近衛兵団。
多少の損害を出しつつも、まだまだ重装騎兵の集団は止まらない。
はは、
『数は正義ってか!?』
……違うね。
すぅぅぅ……!!
「───火力が正義だ!!」
おらぁぁぁぁぁああああ!!!
くーーーーらーーーーーーえーーーー!!
ドガン! ドガン! ドッガガッ! ガガガガガッガガガガガッガガガガガ! ガガガッガガガガガガッガガガガガガガガガガガガガッガガガ!
唸り声をあげる12.7mm重機関銃。
さらに、
ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
狂おうしいまでの咆哮を奏でる、肩部ガトリング砲。
そして、
バシュバシュバシュシュシュシュシュシュシュ─────……!
舞い狂うわ、肩部対人ミサイルポッド!!
そこにすかさず、
ボンッ! ボンッ! ボンッ!
無慈悲に降り注ぐ40mmグレネード弾!
それらはファンタジーを打ち砕くには容易に過ぎて───。
12.7mm重機関銃の連続射撃は──人も馬も、
5.56mmガトリングの連続射撃は──鎧も兜も、
対人ミサイルの連続射撃は──機動力も装甲も、
40mm榴弾のつるべ撃ちは──生きとし生けるもの全てを……!!!!
王国最精鋭を、
近衛兵団を、
そして、
ファンタジーを──────。
無慈悲に、
一片の容赦もなく、
憐憫の情すらなく……、
───徹底的に打ち砕く!!!!!
そして、破壊の嵐が向かう先。
それらが一斉に近衛兵団に襲い掛かり!
ズドーーーーーーーーーーーーーーン
着弾!!
着弾!
着弾着弾着弾着弾着弾着弾───!!!
チュドォォォオオオンン!!
「「「「ぎゃあああああああ!!」」」」
一斉に襲いかかるわ、火力と火力と火力と火力!!
先頭の騎兵がもんどりうって倒れる。
その騎兵に
重機関銃に撃ち抜かれた近衛兵の上半身が吹っ飛び、馬は主人を失って迷走する。
5.56mm弾が腹に当たった馬が滅茶苦茶に暴れる。
上空から散弾を降らせる対人ミサイルに魔法兵を含む大多数が叩き潰される。
時折思い出したように降り注ぐ40mm榴弾に、将校もろとも吹っ飛ばされる。
もう、無茶苦茶だ!!
無ッッ茶苦茶だッッ!!
大打撃!
大打撃───!
大・打・撃!!
大打撃なのに───。
それでも、進む近衛兵団。
一歩も動かないクラムはいい目標らしい。
グッチャグチャ! と、仲間の死体を乗り越え、見事な馬裁きで
比較的、弾の少ない対人ミサイルは撃ち尽くし、発射ポッドはデッドウェイトになるのを避けるため、強制的に肩から弾き飛ばされる。
重機関銃も、バイザー内の残弾表示が恐ろしい勢いで消耗していった。
それは肩部ガトリング砲も同じで、
ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ………………カタカタカタカタタタタタ……!
と、右肩のガトリングも消耗し、弾切れ。
やはりデッドウェイト防止のため──バシュン! と自動で廃棄される。
ち、そろそろ弾切れか───!!
『──────か・ら・のぉぉぉ!!』
レーダーに映る無人機が旋回し戻る。
そして再び近衛兵の集団に高速で上空を航過する───!!
『行けっ!』
クラムの気合に答えるように───無人機が急降下する!
そして!!!!!
ダラララララララララッララ!!!
と、航過しつつ、20mm連装バルカン砲で地上を掃き清めていく。
4機、計8門の20mmバルカン砲が生み出す破壊力は航過の一瞬のちには赤い絨毯しか残らない有様だ。
だが、
『───ヒュゥゥ!! すげーな!』
思わず口笛を吹くクラムの前にまだまだ、数の減らない近衛兵団の部隊が多数。
『どうじゃ? 支援するかのー?』
冗談!
全部俺の獲物だ。
っていうか、
『……魔王、お前撃ちたいんだろう?』
と、ついつい本音が漏れる。
いっそ本心を聞きたくなるクラムだが、今は無視。
なんたって、こいつはまだまだ性能を出し切っていないからな!
エプソMK-2に全幅の信頼を寄せるクラム。
『じゃ、こっちもいってみようか!』
ブースト!!
と、バイザーの項目を選択。銃を構えたままクラムは疾走開始──!!
───グオォン!!
とばかりに、腰と足に付いている噴射口から白い炎を吹き出しつつ、ロケット推進装置で急加速する。
目標は正面!!
正面からぶち当てる!!!
みてろーーーーー!!
突撃する騎兵に真正面から──
『おおおおーーーらああああああああ!』
ドガガガガガッガガガガ!
と、重機関銃を使いつつ、急速接近しぃぃぃぃぃいあか!
喰らえぇぇえ───!!!
『騎兵のヴェルダンだ!』
キュバァァァァッァア!
と、銃口側面にある火炎放射器を噴射!
急速に周辺の酸素を圧縮し、連続噴射で5秒!!!
距離50mという長大な炎を吹き出し、接近しつつある騎兵を浄化していく。
「ぎゃああああ」「くおおおおお!!」
と、歴戦の騎兵、若年の騎士、ベテランの傭兵など、かき集めた精鋭からなる新生近衛兵団の
生焼けに焼かれる恐怖は変わらない。
バチバチと馬の体ごと焼かれる兵を見て、さすがに動揺したのか、はたまた突然突っ込んできたクラムに恐れをなしたのか、動きの鈍る近衛兵団。
クラムはそこにすかさず、断続的に火炎放射を放ちつつも、騎兵集団に突っ込む。
いくつかの騎槍がクラムを
懐に躍り込んだクラムは、12.7mm重機関銃はもとより、同銃の下方銃身の9mmガトリングをも同時に発射し、パララララララという軽快な音と元に死をばら撒き、死体を量産品している。
『はは! 全然へらねー。ほんと、凄まじい数だな!!』
もはや、常に白兵距離という状態で次々に近衛兵を打ち倒していく。
ロケット推進のクラムの速度は、騎兵のそれをはるかに上回っている。
縦横無尽に動くクラムを、基本的に直線機動しかできない重装騎兵は捉えることができない。
仮に、攻撃半径に入ったとしても騎槍と剣では、クラムに対して痛打など望むべくもなく──一方的に攻撃される近衛兵。
『ち……』
弾切れだ。と、大型マシンガンを放り捨てるクラム。
バイザー内にはまだ少々の残弾表示が出ていたが、もはやカス程度。
ならば───!!
『剣には剣を!!』
ズラァァン! と、腰に
『いくぞぉぉぉ!』
ヴーーーーーーと、微動音を立て続ける刀身は、ギラギラと輝いて見える。
それはタダの反射などではなく、常に高振動する刀身が光を屈折させ震わせているのだ。
『飛び道具がなければ───』
突っ込んで、仕留めるのみ! クラムに焦りなどない。
銃を投げ捨てたクラムを見てチャンスと勘違いしたのか、勢い込んで突っ込んできた騎兵が、数騎!
それをロケット推進のまま駆け抜けるクラムが、騎兵の脇を抜けざまに刀を差し込んでいく。
脳内処理の高速化ができるクラムは、最適な経路を選び───騎兵の脇を走り抜けていく。その際に押し付けられた刀によって、
「あえ?」「ひで!」「ぶぴ?」「うぉ?」「らう?」
ドチャチャチャチャ! と、次々に上下真っ二つにされた死体が量産されていく。
そして、ガバメント改も撃ちまくる。
バンバンバンバンバンバンバンバン!!
本来、拳銃の命中精度などクソのようなものだが、コンピューター制御と着弾補正システムのお陰で、まぁー当たる当たる。
それ以前に的が多すぎて、どこを撃っても当たりそうだ。
人知れず
『───ははっははっはは!!』
と、
笑う、笑う、笑う!!
……やはり強化手術でどこか感情に変化があるのだろうか?
昔の彼なら考えるべくもない恐ろしいまでの残酷さ。
もんどりうって倒れる騎馬。
刀で切られたことに気付かずジタバタと暴れる近衛兵たち。
その姿にまったくの
ははっはははははははははっはははっはは!!
ゲラゲラと笑い、ブンブンと刀を振り回す。
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!
狂ったように笑うクラムの耳に、
「うかつに近づくな!! 障害物を使え!」
と、ここで冷静な声が響き、戦場に変化が訪れる。
この声───!!
興奮した頭に冷や水を掛けられたかの如く、そして、それでも覚めやらぬ興奮ととともに、
───歓喜!!!
圧倒的歓喜!!!
「見つけたぞ! 近衛兵団長……イッパ・ナルグー!!」
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