第62話「殺陣! エプソMKー2の舞い」
───レッツ、ショウタイム!!!
ビッビッビ、ビー!!
バイザー内の表示が、周囲を取り囲む兵の脅威度を算出表示していく。
───王国軍正規兵、白兵装備、脅威度3
───該当あり、野戦師団第1歩兵大隊。
ビッビッビ、ビー!
───敵集団、脅威度5……。
ハッ。
……………………雑魚だな。
「でりゃあああ!!」
クラムが表示される脅威度にほくそ笑んでいると、恐怖で硬直してでもいるのかと勘違いされたのか、「隙あり!」とばかりに、槍で突き倒されそうになる。
『おいおい……』
グサリと突き刺さった槍──────いや、そうみえただけだろう。
実際はグサリどころか……。
パキィィン! ヒュンヒュンヒュン……!
「あ?」───ドスッ!
折れた槍の穂先が、空気を切り裂く音を立てて空を舞い───。
一番槍を決めた兵の頭に突き刺さる。
「あるぅえ?」
グリンと白目をむいたそいつは……ドロリと血を流し、ビクビクと震えて地に伏せる。
『……効くわけないだろうが?』
───ボケが!
大体、鎧相手に槍とかアホか?
囚人兵でも、もう少しましな戦い方をしたものだ。
フ………。
これが王国軍の正規部隊か。
アホらし───。
『───くたばれ雑魚ども!』
死ねぇぇぇぇ! 斬れぇぇぇぇ! と、叫ぶブーダスを視界の端に捉えつつも、クラムは焦らない。
復讐の味はゆっくりと堪能するものさ。
王国に死を。
兵隊に死を。
ブーダスには、絶望と苦痛と屈辱と激痛と絶望と絶望と絶望と絶望と絶望と絶望と絶望と絶望絶望絶望絶望絶望絶望を与えよう!
さぁ──────。
し、
ね、
ズジャキ!!!
と、重々しくマシンガンを構えると──、
ドガンドガンドガガガガガガガッ!!
ガガガガガガガガガガガガガガッ!!
ズガガガガガガガガガガガガガッ!!
と、腹に響く重機関銃の12.7mmの重々しい射撃音が響きわたるッッ───!!
その瞬間は───なんというかもう……。
筆舌に尽くしがたい!
だってそうだろ?
重機関銃をぶっ放したのは、密集した軽歩兵の群れだ!
彼らの薄っぺらい鎧は何の奴にも立たず。
貫通したソレは人体を損壊してなお止まらず、一人二人と貫き、爆散させる。
グチャグチャグチャ──────! と、血煙が立ち上り、もう──何が何だか?!
「「「「ぎゃああああああ!!」」」」
「「「「うぎゃぁぁあああ!!」」」」
ボンボン!! と、人体が爆散する。
射線上にいた兵はボロクズのように引き裂かれて倒れ……いや、もう───ばら撒かれていく!
「な、ななんあななななんあ!?」
その光景を目の当たりにしたブーダスが、驚愕に目を見開いている。
しかし、その間にも兵はズタズタに。
そして、ボロボロに。
たった数秒の出来事だ。
そこには、一本の線ができる。
───死体の作る、一本の線。
それはクラムの作る死体の帯───唸り声をあげる12.7mm重機関銃の暴威だ。
その線を……。その帯を───。
まるで、掃き清めるように、右へ左へ。
それはそれは、一見して扇を開くように、人の死体の山が放射状に作られるさま。
それでも数に勝る歩兵大隊は、クラムの前方に布陣していた一個中隊を壊滅させられてもまだ健在。
残る兵は数秒の間に起こったことであり、未だ事態がつかめていない。
何か爆発したな? くらいに感じているのだろう。
集団心理は、危機感をかくも薄めてしまうらしい。
バカな王国軍は、何を相手にしているか気付く暇もなく、包囲しているのをこれ幸いとばかり───無防備な後ろを見せるクラムに剣に槍を手にして突っかかる!
「うおおおお!」
「隙ありぃぃぃ!」
「でりゃぁぁぁ!」
勢いだけは一丁前。
その光景に、ブーダスも口を歪めて安堵する。
これだけの大群で取り囲んでいるのだ。負けるはずもない、と。
『後ろが、ガラ空きだとでも思ったか?』
バイザー上に取り付けられているカメラがフィィィン──と、表面をすべるように動き、背後やら左右の死角から迫りつつあった軽歩兵を睨みつける。
そのカメラの映像は、クラムの見るバイザー内にサイド画面として表示。
しっかりと、クラムの目に見えていた。
それを強化手術された脳の処理で捌き切ると───、
『じゃ、ブワァァァァッァとな!』
ウィィィンと、
肩に固定されている「小型ガトリングガン」が右とその右後方から接近する兵を睨みつけたかと思うと───!!!
ヴァァァアアアアアアアアアアン!!
ヴァァァアアアアアアアアアアン!!
と牛の鳴くような間の抜けた声を上げる。
上げるが───……それは、牛の鳴き声などではない。
あまりの高速射撃につき、音が間延びして聞こえるのだ。
肩の上の小型ガトリングガンは、ぬ~ったりとした動きで動き、軽歩兵達を
12.7mmほどの高威力でなくとも、連続射撃で発射される5.56mm弾はロクな防具もない軽歩兵に防ぎようもない。
それこそ、ローラーで蟻を引きつぶしていくかのように、グッチャグチャのミンチが量産されていく。
「「「がぁ──────?!」」」
「「「ぐぁ──────?!」」」
殆どの兵が即死で、逃れるすべもない。
逆に即死できたものは幸運で、運の悪いものは体のどこかを欠損した状態で血と臓物の絨毯の上でのたうち回るのみ。
もはや、「ぎゃああ」という悲鳴すら上がらない。
左から近づいた兵は、多少マシだったかもしれない。
しれないが……。
左とて無防備ではない!!!
左肩には、対人ミサイルの発射装置がついており、装弾数に比してクラムの敵側の兵のほうが圧倒的に多かった。
百人規模の集団に対し、ミサイルの数は足りない。
そう。
一人あたり一発と見れば足りないが──。
とは言え、これらの事態を想定して取り付けられている対集団戦装備。
エプソMK-2に死角などない!!
ババババシュシュン!! と、白い煙の糸を引いたそれは、猛烈なスピードで発射されたかと思うと、一度ホップアップして上空に向かい……そこからの急転直下。
もっとも熱量の多い───人の密集集団に向かうと……ボンッッ! と自爆。
いや、自爆というよりも、近接信管が作動し、内部に仕込んでいる広域殲滅用の散弾を発射したのだ。
それは、クラムにまさに切りかからんとしていた左側の集団の真上で爆裂すると───グシャッ!!! と、兵を叩き潰す。
「「「あ──────?!」」」
「「「ぷびょ────?!」」」
その様はまるで、蟻の密集したテーブルに掌を叩きつけたかのよう。
内蔵されていた散弾が頭の上から兵を容赦なく切りさいていく。
それがボン! ボンッ! と数発ばかり続くと、左側の集団でも動くものはほぼ消え失せえる。
あるのは人間未満の肉片のみ……。
「え? あ? え?」
あっという間に、
そう、「あ?」っという間に、野戦師団第1歩兵大隊は壊滅。
死者が、生者の数を一瞬のうちに上回ってしまった。
生き残りも
先兵は……壊滅した。
『終わりか? 他愛ねぇな?』
連続射撃で過剰加熱したブシュ~と煙を吹く大型マシンガンを手の中で弄びながら、ギョムギョム──と足音を立ててモチベェに近づくクラム。
『年貢の納め時だな……裁・判・長・どの?』
「ひぃ!」
ギョムギョム……ズン! と、重々しい足音が近づくにつれてモチベェは
わずかに残った兵も、目の前で起こったことが理解できずに思考停止状態。
どけっ───!
クラムの進攻上にあった兵は、
大型マシンガンの銃身で、ブワァキィ~ン! と、殴り飛ばされて吹っ飛んでいく。
エプソMK-2で強化された筋力は易々と兵を吹き飛ばし、時には折り千切る。
「ま、まて! ……なにをしとる! こ、殺せ! わ、わわわ、ワシを守れぇぇぇ!」
それでも、生き汚く……信頼関係も何もない兵に
しかし、既に士気は崩壊───ブーダスを守ろうとする兵などいるはずもなく……。
ひぃぃぃ!
ぎゃあああ!
おたすけぇぇええ!!
と、あっという間に逃げ散っていく。
ならば、クラムには歯向かってこない兵など相手にする気などない。
とはいえ、見逃すほど優しくともない。
『ぶっ飛べ!』
バイザー上の支援項目を視界認識カーソルで選択し、上空の空中空母に支援を要請するのみ。
ピコピコ──────カチ!
『───ほいほーい。さっ、とね!』
軽い調子の魔王により、ほどなくして、……ドカン、ドカン、ドカン、ドカン!! と、凄まじい爆音が上空から響きわたる。
直後、大粒の機関砲弾が逃亡兵の集団に降り注ぎ、哀れな兵どもを綺麗な綺麗な地面のシミに変えてしまった。
「ひぃぃいいいいいい!!!」
一瞬の出来事。
あれほどいた兵が全滅───。
目の前で、その光景を目の当たりにした、ブーダスはジョワアアアア……と股間を濡らしていた。
ちなみに、彼の傍らにいた副官はいち早く逃げ出し、そして、今さっきの空からの砲撃によって首だけを残してシミになっていた。
───よぅ……。
『ひさしぶりだな!!! さ・い・ば・ん・ちょ・う・ど・の!』
そして、クラムがブーダスの前に立ち塞がる。
それは、死刑を宣告されてから数年ぶりのこと──────。
再び、クラムとブーダスは邂逅した。
圧倒的に立場を代えて………………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます