元地下アイドル刺殺事件
こんにちはKです。
皆さんは、地下アイドルというのを御存じでしょうか。
小さな劇場で定期的にライブを行う、メディアには露出していないアイドルの事を指します。近年、この地下アイドルが、人気を博しています。
某国民的アイドルグループが、秋葉原で活動を始め、全くの無名から全国区にのし上がった。この影響が大きいのでしょう。
特に、昭和時代のアイドルと異なり、ファンとの距離が非常に近いというのも、人気の一つだと言われております。
時代が移り変わっても、夢見る若者を食い物にする、汚い大人は存在します。今回は、夢を叶える為に上京した、少女の悲しい事件を紹介します。
平成最後の年。三十一年の二月五日に、台東区上野に有る賃貸アパートの一室で、女性の刺殺体が発見されました。
警察の発表をご覧になられた方は、御存じかと思いますが、念の為に時系列を追って、事件の概要を説明いたします。
先ず、事件の第一発見者である女性Sさんと被害者の女性Tさんは、アパートの一室をシェアしていました。
二人は高校の友人で、卒業と共に就職の為に上京、それから二人で暮らしていたそうです。
事件当日、二十時にSさんは帰宅しました。帰宅した際に、鍵が開けっ放しであった事を不信に感じます。そして直ぐに部屋の明かりを点けて、恐る恐る室内を探りました。
すると、リビングから廊下の辺りに血痕らしき跡を見つけます。更に血痕は廊下からバスルームに続いていました。バスルームの戸を開けると、血塗れの遺体を発見します。
そしてSさんは、直ぐに警察へ連絡をしました。
連絡を受けた警察が到着し、怯えて小さくなっている、Sさんを保護しました。
現場となったアパートは、バストイレ別、キッチンスペース付きの二部屋です。
Tさんの遺体からは、複数の打痕と刺し傷を発見。遺体が死後硬直を始めてる事から、死亡時間を十七時から十八時と推定。ただし、遺体発見時のバスルームは、然程血が飛び散っていませんでした。
血痕を辿り室内を探ると、Sさんが使用していた寝室に、夥しい血が飛び散ってました。
実況見分を終え、警察は捜査を始めます。ただ当初警察は、第一発見者のSさんを、容疑者として疑っていました。
Sさんの保護を理由に警察署に連れて行き、直ぐに事情聴取を行います。ただし混乱中のSさんからは、有力な情報を得る事は出来ませんでした。
その後、保護者の上京を待って、警察はSさんを解放します。
状況が進展したのは、翌週の月曜日。建国記念日で祝日となった十一日に、若い男性Nが警察署に出頭します。
Nは、自分が犯人であると供述し、Tさんを刺した包丁を持参しておりました。包丁にこびり付いた血痕や指紋等を解析し、犯人である可能性が非常に高いと判断した警察は、NをTさんの殺害容疑で逮捕しました。
しかし、疑問点は残ります。
被害者Tさんと容疑者Nの関係、ルームメイトであるSさんの部屋で殺害された事。この二点に関して、Sさんが直接的な関係者であると、警察は睨んでいたのです。
そして、警察はSさんへ任意出頭を要求し、再び事情聴取を行います。その際Sさんは、Nと会った事が無いと証言しております。
Nの証言からも、Sさんの関与を疑う要素は出てきませんでした。
以前Tさんは、仕事を辞めて地下アイドルとして活動をしていました。TさんのファンであったNは、執拗に付け回し、Tさんの住居を突き止めました。
そして、ルームメイトであるSさんの存在を確認。Sさんの平均的な帰宅時間を把握したNは、事件当日の十六時に、部屋へ押しかけます。
そこで、思いの丈をぶつけるが、素気無い態度でTさんにあしらわれます。Tさんの態度に怒ったNは、暴行した上で部屋に押し入りました。
その際Nは、Tさんを強姦しようと考えました。初めて自宅を訪れたNには、どちらがTさんの部屋かは、わかりません。Sさんの部屋を使用した事には、意図は無いと供述しています。
この時、Sさんの激しい抵抗に遭い、殴りつけて気絶させます。怒りで我を忘れたNは、台所に有った包丁を使い、Sさんをめった刺しにしました。
数分後、我に返ったNは、自分のしでかした事に動揺し、咄嗟に遺体をバスルームに隠し、凶器となった包丁を持ち去ります。
その後、部屋に閉じこもっていたNは、Tさんの事がニュースになっている事を知り、恐怖が募ります。しかし、自分が愛するTさんを、殺してしまった事の悔恨も、感じていたそうです。悩んだ末、土日を挟んだ翌週の月曜の朝に、警察へ出頭する事を決意しました。
この証言を元に、警察はNをTさんの殺害犯として断定します。ここまでが、ニュースで取り上げられた、事件の詳細です。
そしてここからは、私がSさん自身に聞いた話をお伝えします。
静岡県の浜松市で育ったSさんとTさんは、小中高と一緒に過ごした、仲の良い友人関係にあったそうです。
全ての始まりは、高校時代です。Tさんは音楽活動に目覚めます。そして自ら作詞作曲を行い、駅前での弾き語りや学園祭でライブ等、精力的に音楽活動を行っていました。
そんなTさんが、なぜ高校卒業と同時に、就職をしたのか。それは、生活基盤の安定を願う、両親の説得が一因でした。ただ、両親の説得だけで、Tさんは夢を諦めたのでは有りません。
親友であるSさんが、東京での就業を進路として希望していた。それが一番の要因となったのでしょう。
就労先は別になったものの、二人は都内の会社で採用が決まります。そして、平成二十九年三月に、二人は上京します。
娘一人で暮らすのは、二人の両親共に心配だったのでしょう。ルームシェアリングが可能なアパートを探し、二人は東京での暮らしをスタートさせます。
Tさんの転機になったのは、同年八月。某地下アイドルグループのマネージャーをしていたYという女性に、Tさんはスカウトされます。
元々容姿に優れ、学内でも人気の高かったTさんです。何かしらの業界から、スカウトされても、おかしくは無かったのかもしれません。
しかし、Tさんにとっては一度諦めた夢です。それに就職し、安定した収入を得る事が出来ています。何度もYの誘いを断りました。
ただYは、Tさんの音楽への情熱を知ると、更に熱心にスカウトします。次第に心を動かされ、諦めた夢が沸き上がって来たのでしょう。Tさんは仕事を辞め、某地下アイドルグループに所属する事になります。
Tさんが加入した後、某地下アイドルグループは、瞬く間に人気を得る様になりました。
この当時の事を振り返ったSさんは、Tさんが毎日とても楽しそうにしていたと、話してくれました。
実際に、充実した毎日を送っていたのでしょう。当時のライブ映像を見せて貰いましたが、ステージでのTさんはとても輝いていた様に感じました。
ただその一年後、平成三十年八月に、Tさんは某地下アイドルグループを、唐突に辞めます。私は、辞めた理由をYに確認しました。
有名な芸能プロダクションに、所属出来る事になった。そこで、メジャーデビューが決まり、TVの仕事も増えそうだ。
Tさんは、世話になったYへの礼と共に、そんな話しをしたそうです。
それ以降のTさんは、毎日忙しそうにしていたそうです。帰りが翌朝になったり、何日も帰らなくなることも、多くなって来ました。
ただ、いつになってもメジャーデビューどころか、楽曲の作成をしている様子は有りません。ましてや、TVの仕事等は、行っていたのでしょうか。
何よりも、某地下アイドルグループで活動していた頃のTさんとは、明らかに表情が変わり、暗くなっているのをSさんは感じていたそうです。
堪りかねたSさんは、Tさんに問いただしました。そしてTさんは、ぽつりぽつりと、事情を話してくれたそうです。
Tさんがやらされていたのは、俗に言う枕営業です。
有名プロデューサーと言われる男と、一晩を共にする事で仕事を貰う。所謂、業界の悪習です。
ただ、問題なのは夢を食い物にする、汚い大人だけではないのかもしれません。身を売ってでも、TVの仕事を貰いたい。そんな女性が実在するのも、悪習が無くならない一因かも知れません。
Tさん自身は、不運としか言いようが有りません。枕営業を行って貰った仕事は、TVドラマのエキストラと、台詞の無い端役が数件だけ。しかも全て地方の撮影で、交通費、宿泊費は全額自己負担でした。
辛ければ、プロダクションを辞めれば良かったのではと、Sさんの話しを聞いて思いました。
しかし、Tさんには辞められない事情が有ったのです。
それは、某地下アイドルグループを卒業という形で辞め、ファンやメンバーから、多くの応援を受けて送り出された。それらに対する、後ろめたさでは有りません。
Tさんは芸能プロダクションの社長に、脅されていたのです。
初めの枕営業は、嫌がるTさんを数人で無理やり裸体にして性行為に及ぶ、強姦紛いの行為でした。
その翌日、Tさんはプロダクションの社長に、詰め寄ります。しかし、Tさんがそこで見せられたのは、Tさんの顔や裸体を始め、局部まではっきり映った、性行為の映像でした。
それは誰にでもわかる、れっきとした犯罪行為です。Tさんは、警察に届ける事を、示唆しました。ただこの様な事は、汚い大人達にとって日常茶飯事だったのかも知れません。
プロダクション社長は、脅す様な口調でTさんに言ったそうです。
「これを、ネットに流出されたくなければ、枕営業を続けろ。警察に訴えても無駄だぞ。コネが有るからな、握りつぶして終わりだ。それに、これ以上ガタガタ言うなら、東京湾に沈めるぞ! いいか、お前は面が良いんだ。体でプロデューサー達を喜ばせろ! うちのプロダクションとの繋がりを深めるのが、お前の仕事だ! 勿論、お前に見張りをつけるからな! 逃げられると思うなよ! 少しでも誰かに漏らしたら、お前の命は無いと思えよ!」
直ぐに、Tさんの行動監視を目的とした、マネージャーがつけられました。自宅には、盗聴器が仕掛けられました。
下手をすると、Sさんまで巻き込んでしまう。それを恐れたTさんは、転居をプロダクションに願い出ます。しかし、その事が更にTさんを縛り付ける事になります。
第三者が居る事で、返っておかしな行為をしないと踏んだプロダクション社長は、Sさんとの同居を続けさせます。
無論、シャワーやトイレには、盗撮用のカメラが設置されています。知らず知らずのうちに、Sさんも裸体や局部の写真を撮られていたのです。
事情を聞いたSさんは、得も言われぬ恐怖を感じたそうです。それ以上に、親友であるTさんを慰み者にした、プロダクション社長達を許せませんでした。
それからSさんは、様々な手段を講じました。
ツイッターを利用した暴露。これは、悪手でした。Sさんのツイートは炎上すらせずに、鎮静化させられました。それからSさん宛の脅し電話が、毎日何度も来る様になりました。
それでもめげずに、Sさんは現状を知らせる為の、情報拡散を続けました。
例えば、五チャンネルと呼ばれる、掲示板への書き込み。ブログの作成。ツイッターでの拡散。新聞局や情報雑誌への、タレこみ。
しかし、プロダクションの対応が、Sさんの行動を上回りました。
掲示板での書き込みは全て無視をされる。拡散効果の高いツイッターでは、デマだと言われて見向きもされない。ブログには、陰湿な書き込みが殺到する。そして、新聞局等には手が回っていたのでしょう、軽くあしらわれたそうです。
そしてTさんは、Sさんに事情を話しをした時点で、重度の鬱を発症していました。
あれだけ明るく、精力的に活動していたTさんから、一切の笑顔が消え、食事も満足に取る事は無かったそうです。
Tさんは次第にやつれていきます。使い物にならなくなったと、判断したのでしょう。プロダクション社長は、Sさんと共にTさんを切り捨てる事を考えます。
そこで目を付けたのは、地下アイドル当時にTさんの追っかけをしていたNです。
Nは、地下アイドルグループからTさんが卒業し、その後メディアに姿を見せない事へ、苛立ちを感じていました。その為、Tさんのストーカー行為に及んだそうです。
プロダクション側は、Nを言葉巧みに騙します。そして、犯行を唆しました。
そして、犯行当日。この日Sさんは、当のプロダクションを訪れていました。当然、直談判をする為です。
結果は、Tさんの時と変わりません。もしかしたらTさんの時よりも、激しく脅されたのかもしれません。そして、Tさんの処分を仄めかされました。
逃げる様にプロダクションを去り、帰宅するSさんでしたが、時すでに遅くTさんは亡くなってました。
プロダクション側は、Nに殺害を命じた訳では有りません。
命じたのは、Tさんを強姦する事。そのショックで、Tさんが自殺すれば、計画は完了するはずでした。
先ず、マネージャーが、Nに合鍵を渡します。NはTさんの了解を得て、部屋に入った事にします。そして、行為に及んだのは、合意の上だった事にします。
また、Sさんの部屋で行為に及ぼうとしたのは偶然ではなく、Tさんへの見せしめの意味も込めての行動だったそうです。
しかし彼らにとって予定外だったのは、Nが暴走しTさんを殺害してしまった事。そして、第一発見者となったTさんの口から、自分達との関係が漏れる事を、プロダクション側は恐れました。
これらの事実を、Sさんが警察に証言しなかったのは、自分だけではなく両親まで殺すと、脅されていたからだそうです。
そして、脅しは今も続いているそうです。
Sさんは当時のTさんと同じように、心を病んでおります。両親の支えが無いと、歩く事さえ出来ない程です。
私は同席して下さったご両親へ、弁護士に相談する様に伝えました。念の為に、今も続く脅しについて、音声データー、書面、メール等、全てを保存する様に伝えました。
無論、私が信用する弁護士を、紹介しました。
殺害こそされてませんが、Sさんも立派な被害者です。実際にSさんを脅しているのは、プロダクション側の人間じゃないでしょう。
恐らく、暴力団の構成員の可能性も低いでしょう。所謂、どの組織にも属さず、いつでも切り捨てる事が可能な、集団かもしれません。
仮に音声データを撮ったとしても、証拠としては不十分でしょう。しかし世間には、プロダクションの悪行が周知されるはずです。
私が皆さんにお伝えしたかったのは、亡くなったTさんと、苦しみの只中にいるSさん。二人の真実を知って欲しいからです。
Tさんの無念は、計り知れません。Sさんは今も苦しんでいます。もし本書を読んだ方の中に、Tさんのファンがいらっしゃれば、Sさんの為に立ち上がって下さい。
世の中には、夢見る若者を食い物にする、汚い大人がいます。そして奴らは、決して表に出る事が無く、自らの手を汚す事無く、女性を物の様に扱い、私腹を肥やしています。
私は、この様な輩を許せません。皆さんはこの事件、どうお考えになるでしょうか?
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