浮気の言い訳テンプレいただきましたー!
「……突然すぎんぞ。あと、ノックぐらいしろ。親しき仲にも礼儀ありだ」
思わぬ来客に、心の準備もできてなかった俺は、とりあえず最低限のマナーを求めるくらいしかできなかった。
もし自家発電中だったらどうすんだよ。佳世の浮気を知ってからED気味だったから最近はしてないけど。
…………
これが白木さんだったら、ドアを開ける前に向こう側でペコペコしてから入ってくるんだろうな。誰も見てないというのに。
…………
佳世を目の前にしても、何故白木さんのことを思い浮かべてしまうのか。自分で自分がわからない。
苦笑いが思わず出てしまったが、佳世がうつむいているおかげでバレてないようだ。
俺は気を取り直し、口を真一文字に結ぶ。
「…………」
それでも佳世は一言も言葉を発しないで、ただドアを開けたまま立っていた。
俺の次の言葉を待っているようにも思える。
仕方ない。
「……何しに来たんだ」
俺がそういうと、やっと佳世は顔を上げて俺を見た。
「……ごめんなさい」
「いまさら何を謝っているのか心底理解できねえ」
「ごめんなさい。ごめんなさい。許してください」
「……許すわけないけど。謝ってるってことは、自分が後ろめたいことをしていた自覚はあるんだな」
何をしたいのか、本当にわからなかった。
この前の時と比べて激情に支配されてないせいか、俺は理路整然と、佳世を追い詰めるための下準備を進めることができている。
「……」
「だんまりかよ。まあもう話すことはないから、出てけ。あらためてごめんなさいと言えて、少しは気がまぎれたか?」
「……ごめんなさい。わたし、本当にバカでした。一番大事なものを見失ってました」
「……」
「そして甘えてました。祐介がわたしから離れていくなんて思いもしませんでした。祐介なら何をしても許してくれると思ってました」
今回は佳世も興奮状態にないようで、静かに己の懺悔を始めている。
だが、ちょっと待て。確かに俺は佳世に甘かったが、何でもは許していないぞ。
大事にしていた144分の1スケールのギャンを壊されたときは、同じものがもう手に入らないからと、代わりにガンキャノンを持ってきやがって。ふざけんな! 俺はジオン軍のモビルスーツ以外のプラモなんていらねえ! ってずっと怒ったままだったよな。小学四年生の時。
……いや、なぜガンプラについて熱く語らねばならんのだ。そのことは取って入れて出す、エガちゃん方式でどっかに置いておこう。
しっかし、本当にナポリたんの言うとおりだな。恐るべき慧眼よ。
それとも、なまじ付き合いが長い分、俺のほうが客観的に佳世のことを見ることができていなかっただけなのか。
「……もう無理だろ。許すも何も、佳世のほうから離れていったんじゃねえか」
「……ごめんなさい」
「俺は前に言ったよな? 佳世のことを好きだと。でもその時おまえはどんな反応した?」
「……許してください」
「俺のことなんか、どうでもいいって態度だったじゃねえか。いまさらどうして許せと?」
「……なんでもします」
ん? 今何でもするって言った? 言ったよね?
ちくしょう、ICレコーダーで録音しとけば言質取れたのに。突然のことだったから準備不足も甚だしいわ。
「……じゃあ、帰れ」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。謝ることしかできないけど、ごめんなさい。お願い、許してください。祐介と離れたくないです」
ただでさえ敬語が気持ち悪くて仕方ないのに、そのうえ佳世が土下座をしてきた。
これさぁ、絶対に俺が秘密を知ってると思ってるよな。
ああもう面倒くせぇ。まわりくどいことはやめて、ホームランコースへストレートにぶん投げよう。
「……俺より池谷のほうがいいんだろ?」
「!!!」
ここで初めて、池谷という固有名詞が登場。
俺の詰問に、土下座状態の佳世が青ざめた表情のまま顔を上げて、絶望に包まれた瞳を向けてきた。
「わかってんだよ。池谷とカラオケデートしていたことも。この前俺の誘いを部活が忙しいって蹴ったとき、池谷と公園でベロチューしてたことも。そんなに池谷と一緒にいたかったくせに、なんでそんなことをいまさら佳世が言ってくるのか、心から理解できない」
「あ、ああ、あああ……」
「おまえは結局、俺を裏切ったんだろうが! 陰で俺をあざ笑ってたんだろうが!!!」
思わず怒鳴ってしまった。ヤヴァイ、自分で言っててテンションがアゲアゲになってきたわ。
どうにか落ち着かねばならん。ひっひっふー。いやこれは出産時だ。しーはーはー、ひーひずひむ。うん、三人称活用深呼吸で精神安定。
「あ、あああ、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃぃ……許して、わたしどうかしてた、おかしくなってたぁぁぁ……」
落ち着いたふりの俺とは真逆に、佳世が号泣しながら理解不能な宇宙語を叫び始める。
どうかしてた? おかしくなってた? 何それ、そんな言葉で俺が納得すると思ってんの? IQ足りないんじゃないの?
「そんな言い訳通用するか! 通用すると思ってるのか! いくら謝ったって許せるわけあるか!!!」
おっと、またまたテンションがあらぬ方向へ。ぜいぜあぜむ、ゆーゆあゆー。うむ、深呼吸は偉大だ。半分息切れしてるけど。
「ああああああぁぁぁぁぁぁ、お願い、許してぇぇぇぇぇ……」
佳世は激しく号泣。俺は激おこ。いや、俺は激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームだ。
佳世の自分勝手な言い分と、部屋中に響く泣き声が癪に触って仕方ないわ。
「佳世。もうさ、おまえいるだけでイラつくから、出てけよ」
いやー、浮気って怖いね。あれだけずっと一緒にいて情もあったと思うのに、ここまで冷淡に言い切れるなんて。
でもここで許したら俺は損しただけ、佳世は浮気を愉しめて得しただけだもんな。許すかヴォケ。
──なんてひとりで勝ち誇った気になっていたら。
佳世が泣き疲れた後、おもむろに自分の服を脱ぎだし始めた。
俺様、唖然。
「……おい、佳世。おまえ、何を……」
そうして下着姿になった佳世が、俺に抱きついてきた。
「祐介……お願い、一生のお願い。……今から、抱いて」
俺硬直。ただし息子以外な。
佳世の身体は温かかった。しかも微妙にいいにおいがする。昔から知っている、佳世のにおいだ。
──どんなエロゲ的
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます