冷却魔法のエネルギー・パラドックス

 冷却魔法のエネルギー・パラドックスとは、魔法による加熱(加熱魔法)でマナを消費するのならば、冷却魔法によってマナが回復しないのはおかしいのではないか、という議論である。

 同様のケースは冷却魔法以外でも見られるが、最も感覚的に顕著であることから、このように呼ばれている。


 さて、エネルギー保存則は絶対である。これが成り立たないことは世界が存在しないことに等しい。つまり偽である。

 解決策として、荒唐無稽なものも含めて幾つか挙げよう。

  ・消えたエネルギーは異空間に流れた。

  ・使用できず、観測できないエネルギーになった。

  ・エネルギーを得たマナが散ってしまった。


その1「消えたエネルギーは異空間に流れた」

 これは空間魔法の発想から出ている。空間魔法は質量を(等ポテンシャルの)異空間に移すことができるが、見かけ上はエネルギーが喪失している。つまり、冷却魔法とは熱を異空間に移す現象であり、異空間でエネルギーが散逸するため観測できない、とする理論だ。


その2「使用できず、観測できないエネルギーになった」

 これはもう、一種の諦めである。観測できないが在る、という主張は、否定も肯定も難しい。


その3「エネルギーを得たマナが散ってしまった」

 これは気体の分子運動から発想を得たものだ。つまり、高温の気体分子はより運動量が大きく、全体として高い圧力場を形成するため拘束が難しいという性質だ。

 仮にマナを微小粒子の集合として、我々がMPだとかマナ量だとか呼んでいるものが、拘束しているマナのエネルギー総量だとしよう。冷却魔法によって反応し、吸熱して一定以上のエネルギーを得たマナ粒子は拘束を破って放出されてしまう、という主張である。


 さて、文量から察せられるように、第3案が有力であると筆者は考えている。その根拠として、次節にてある実験を紹介しよう。

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