3 米とぎの話

都会に住む従姉妹の家に一週間ほど滞在して、グミ子は我が家に帰ってきた。母は、離婚後、4人の子どもたちを連れてずっと世話になっていた祖母の家を、ようやく出ることができたのだった。

従姉妹の家では、快活で饒舌な伯母がすべてを取り仕切り、開けたリビングに皆集まってくる。今さっきまで見聞きしていたものを再現したくて、グミ子は母に明るく話しかけた。それに対しグミ子の母は、安物のパイプ椅子に体を持たせかけて、ううんと唸った。

テレビから2メートルと離れていない台所のシンクでは、お釜に入った4合ほどの米が、ただ一本流れる水道水にゆすがれていた。グミ子の母は、疲れきっていた。グミ子が米とぎをしようとすると、母親は軽く制した。かといって自分がやるでもなく、ただ水道水が一本、流れ続けているのである。沈黙と疲労感が占める家庭というものが、純粋なまでの誠心を、グミ子に植え付けた。

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若者はみな哀しい ふうこ @amanndora2

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