最終話 伝えたいこと

「足以外はピンピンしてるよ。軽い捻挫でよかった。あいつとは大学行ってもバスケする約束してたから」



インターハイ以来見れなかった湊の笑顔に美結の頬はほんのり赤く染まった。



「……そうなんですね。大学行っても頑張ってくださいね」

「ありがとう。あ、ちょっと公園寄っていい?」



公園の前に差し掛かると湊は視線を向けた。



「はい、いいですけど」

「ちょっと待ってて」

「はい」



公園のベンチに美結を座らせると湊は足早にどこかへ向かった。



「どっちがいい?」



戻ってきた湊の手には紅茶とお茶のペットボトルが握られていた。



「あ、じゃあ紅茶で。ありがとうございます」



紅茶のペットボトルを美結に渡した湊はベンチに腰掛ける。



「……インターハイ終わったら伝えようって決めてたんだ。けど、結果負けちゃったし……言うか迷ってたけど聞いてくれる?」



お茶を一口飲んだ湊は口を開いた。


その手はペットボトルを力強く握りしめていた。



「はい、なんでしょう?」

「俺……好きだよ。福島のこと」

「へ?」



美結は訳が分からず固まっていた。


落としそうになったペットボトルを握りしめた。



「返事は?」

「えっと……あの。先輩って誰とも付き合う気ないんじゃ……」

「なにそれ。誰から聞いたの?」



湊は美結の言葉に驚愕していた。



「あ、前に湊先輩が告白されている所を偶然目撃してしまって……その時に先輩が言ってたから」

「あーあの時か。まあ、あの時はインターハイ近かったし部活に集中したかったからね」

「そう、だったんですね。本当はその時、告白しようとしてたんですよ」

「誰が?」



湊は小首を傾げる。



「私が湊先輩に……。湊先輩、私も好きです」



美結は湊の瞳を見つめた。


その頬は真っ赤に染まっていた。



「は……嘘だろ。じゃあ、目撃されてなかったらもっと早く付き合えてたのか」



湊は驚き大きく目を見開いた。



「そうですね」

「あ、でも。告白は俺からしたかったからよかったかな。福島に悲しい思いさせたけど」

「ほんとですよ。私、告白する前から失恋したのかと思いました」

「ごめん、ごめん。美結、好きだよ。俺と付き合ってください」



湊は笑いながら美結に手を差し伸べた。



「はい、お願いします」



美結もまた笑みを浮かべた。


そして、湊の手を握りしめたのだった。




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