(二)依頼①
(二)
ラーソルバール達も遂に二年生となった。
掲示されたクラス割りに、生徒達は一喜一憂する。
成績による振り分けもされているが、何故か成績優秀者がラーソルバールの居るクラスに偏った。
実は武技大会の決勝後、「友人関係を重視しているので、学校内の行事の面倒だったり目立つ役割はお断りします」と言ったことが原因だった。
その言葉に対して学校側が余計な配慮をした結果、「友人関係を重視している」という枕詞が一人歩きしたらしい。
本人にしてみれば「面倒な事をしたくない」と、そのまま言う訳にもいかずにもっともらしい理由を付け足したに過ぎないので、言ったことすら忘れていた程だ。
そんなこんなで友人としてシェラ、フォルテシアばかりか、エミーナ、ガイザ、そしてエラゼルまでもが同じクラスに組み入れられたのだった。
実は、寮に戻れば隣室のミリエルとも親しくしていたのだが、学校側の極秘調査からは残念ながら漏れていたらしい。
そんな騎士学校での新しい一年を、友人に囲まれて過ごす事ができる喜びに浸って居たかったが、現実はそう優しいものではなかった。
新しいクラスでの自己紹介もそこそこに、教師はいきなり生徒達にひと月の間の課外実習を言い渡した。
予想外の事態に生徒達はざわめいた。
勿論、毎年二年生は同様の事を行ってはいるが、極秘事項としているので、生徒達が知らないのも無理はない。
ただ、例年は十日間程度で終わるのだが、この年は違った。
「カレルロッサ動乱により国内の治安が乱れているので、数人が一組になって治安維持の為の活動を行って欲しい。そうすれば騎士として在るべき姿を学べるだろう」
そう教師は告げた。
カレルロッサ動乱が大きな要因となっている。建前も何もない本音である。
他国との戦闘ばかりではなく、国民に寄り添いその生活と安全を守るのも、騎士の役割だ。国内の安全確保のため、予定日数を延ばしてでも騎士団が出来ない部分の穴埋めをする。そうすれば学校では学べない事も身に付くはず、一石二鳥を狙ったというわけだ。
ただ、それ以外に大きな思惑がある。
ある人物に依頼するもう一つの目的を覆い隠すため、である。
この日、ラーソルバールは校長室に呼び出された。ラーソルバール自身に思い当たる節が無いわけでもない。
呼ばれたからには仕方が無い、相手が相手だけに断る事もできない。そう思って校長室の前までやって来た。
扉を叩くと、中からドートス校長の声がする。
「入ってください」
ラーソルバールは気負うことなく、扉を開けて中に入る。
「失礼します」
「ああ、挨拶は要りません。そこにどうぞ」
校長がソファを指して座るよう促すので、言われるがままに校長の向かい側に腰掛けた。
「この度は準男爵になられたそうで、誠におめでとうございます」
「……あ、ありがとうございます」
頭を下げようとするラーソルバールを、校長は手で静止する。
「本来であれば、お祝いをしたいところでは有りますが……。申し訳ないのですが、今日お呼びしたのはその事ではないのです」
校長の顔に笑みは無い。事情があるにしても校長らしくないなと、ラーソルバールは思った。
「早速なんですが単刀直入に申し上げましょう」
校長は咳払いをひとつすると、ラーソルバールの目を見る。
「貴女には冒険者になって頂きたい」
「はい……?」
意味が分からず、ラーソルバールは固まった。
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