(一)武技大会③
フォルテシアは斧を使う女子生徒との対戦となった。
慣れない武器相手にも、フォルテシアは無難な対応をした。開始直後に剣を出して牽制した後、即座に斧の有効範囲をかいくぐり、懐に入り込んで早々に決着をつけてしまった。
「やりにくい相手かと思ったけど、案外あっさりいくもんだねえ」
感心しきりなラーソルバール。
(いやいや、普段どれだけ……)
途中でシェラは思考を放棄した。
「初日はこんなもんかな?」
こういう時にはどうしたら良いか、どう動くかと考えることも多い。何だかんだ言っても、見ている分にはそこそこ面白いものだと、ラーソルバールは少し考えを改めた。
「フォルテシアはこのあと代表会が有るから、戻ってこないって言ってたよ」
フォルテシアを迎えようと、会場を見ていたラーソルバールには意外な言葉だった。
「何か有るの?」
「さあ? 明日以降の運営会議らしいけど、詳しいことは分からない」
会では苦労しているらしいので、今更ながらに代表を押し付けるようにしたのは、申し訳無いことをしたと反省する。
だが反面、色々と経験してあの内向的な雰囲気が少し緩和してくれれば、などという願望がない訳でもない。
何せあの会はある意味強敵揃いだからな……などと考えていたら、その強敵が一人歩いていく。
「お、エラゼル」
「彼女も、もう少し温和だとね……」
シェラが苦笑いする。
「そしたら大変だよ、きっと。あの見た目だからね、求婚だ婚約だと……」
「そうかもねえ……まあ、身分違いの恋で玉砕する人は多そうな気がするけど」
二人は本人の聞こえないところで、話に花を咲かせる。
ふと、エラゼルが立ち止まり、こちらを見やる。そしてすぐにまた歩いていった。
「なに? あの人、ラーソルの居る場所分かるの?」
「あはは、偶然でしょ。でも、もしかしたらシェラの言った事が聞こえたのかもよ」
「無礼者が! って一喝されちゃうわ……」
二人は笑った。
実際、エラゼルはラーソルバールを見たわけではなく、明日以降の天気が心配で、風と雲の流れを気にしただけだった。
決勝まで、晴天であれ、と。
「ところで、二年生のトーナメント表見た?」
「あ、そうだった」
自分達の事ばかり気にしていて、完全に忘れていた。
慌てて、二年生のトーナメント表が掲示されている場所へやって来た。
「えーっと、アル兄と、エフィ姉は……」
二人の名前を探す。シェラも反対側から探すのを手伝う。
「あ、アル兄は勝ってる」
「エフィアナさんも勝ってるよ」
ふんふん、と満足げに鼻を鳴らすラーソルバール。
「あ、アル兄の言ってた、……何とかいう人は?」
「ああ、強いらしい人ね。ええと……忘れた」
名前を忘れる程度だから、まあいいやと思った時、背後から声がした。
「マディエレ・ジラセーラだよ」
「うわっ、エフィ姉!」
「何だい? 化物が現れたようなその反応は」
呆れたような顔でラーソルバールを見るエフィアナ。
「突然後ろから声がしたから、ビックリしたんだよ。二人の様子を見に来ただけなのに」
「こんなあたりで負けると思ってるのか?」
「全然思わない」
即答した。少なくとも、三回戦くらいまでは心配していない。
「なら、戻って自分達の方に専念しな」
「ちぇっ……」
不満そうに頬を膨らます。
「じゃ、エフィ姉頑張ってね」
「あいよ、あんた達もね」
笑顔のエフィアナに、手を振ってラーソルバール達は二年生のエリアを後にした。
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