閑話休題 その一

閑話休題 その一

 閑話休題 その一


 伝統の運動訓練。

 合同演習で敗北した側に課せられるものだ。

 シェラとフォルテシアは、最初のランニングを終えた。

「けっこう厳しいね」

「一年生は八レリュースだけど、二年生はその倍を、規定時間内に走らなきゃならない訳だから、まあ負けたくないのは分かる」

 この後、素振りと重量引きが待っているらしい。

「素振り何回だろうね」

「五百程度……だと思う」

 最近、フォルテシアはシェラとラーソルバールとはそれなりに会話する。

 相変わらず、愛想が悪いように見えるが、それでも以前よりは良くなっている。

 特に二人にはその違いが分かるらしい。

「フォルテシアは意外と平気そうだね」

「この程度で悲鳴を上げていたら、来年はどうなる」

「ごもっとも……」

 毅然とするフォルテシアの横で、対照的にシェラは来年の事を一瞬想像して憂鬱になっていた。

「一年生、並べ。素振り七百!」

「げげ…」

 教官の声が響き、一年生は整列した。

 フォルテシアの予想よりも多い回数に、シェラは声を漏らした。

 隣でフォルテシアが苦笑いする姿が見えた。

(あんな表情もするようになったのか)

 シェラは少し得した気分になった。


 日が暮れ始める頃、素振りを終え、重量引きを始めた。

 二年生が丁度ランニングを終え、帰って来るのが見えた。

「うは、大変だ……」

 即座に素振りを始める二年生の姿に、来年の自分の姿を重ねる。

「あんなに体力ついてるのか」

 シェラのひとり言はフォルテシアには届いていないようだった。

 線の細いフォルテシアには重量引きは相当厳しかったようで、終わった直後に倒れ伏していた。

「意外な弱点だね」

「も…だめ…」

 動けなくなったフォルテシアを見て、普段とのギャップに笑いが止まらなくなるシェラだった。


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