第20話 ようこそ青空遊園地へ その2。

「追加料金は要らんで、一時間でも二時間でも閉園時間まで乗って貰っても構わんでな」

(そんなに乗っていられませんて)


 それでものんびりと池を一周すると四、五十分経っていた。

(腹が減ったな)


 そりゃ腹も減るだろう、一年分の運動を小一時間でこなしたのだ、選択肢は三つ、さっきの食堂か街のレストランかコンビニ弁当。


 いやレポーターとしてはここで食べない訳に行かない、それにいつ閉鎖されるか分からない、もう二度と食べることが出来ないのだ、青空牛カレー食ってやろうじゃないか。


 意気揚々とさっきの食堂へ向かう。


 食堂が見える所まで来た私の目に驚愕!の光景が飛び込んできた。


「ええー!」思わず驚きの声を上げた私、そこには屋根のないテラスに置かれた二十席ほどのテーブルが人で埋め尽くされていて、まだ十数人がカレーの順番を待っていた。


 人数を数えていたおばさんが「あと一食でおしまいでーす」と声をあげている。

 これは大変、向こうから数名が駈けてくる、ここで食い損ねたらもう二度と口にすることが出来ないかもしれない、私もガタが来た足腰に鞭打って何とかあと一食に滑り込んだ。



 しかし一体この盛況はどうした事だ、いよいよ閉園が迫り「最後の晩餐」よろしく「最後の昼食」と名残を惜しんでやって来たのだろうか。


 私の後から来た人におばさんが「ごめんなさいね、カレーはもう売り切れたの、ソバかうどん食べていって」と何人かに言ったが誰一人そば、うどんには行かず残念そうに帰って行った。


 なのでそのおばさんに「あの人たちは入場料だけ払って何も食べずに帰るんですか」と聞いてみた。

「いやいや入場料は取られはせんよ、平日に遊びに来るのはあんたみたいな代わりモンしかおりゃせん」

 初対面のおばさんに変わりモンの烙印を押されてしまった、自覚が有るだけに反論も出来ない。


 唖然としている俺に「あんたもお昼を食べたってうてみ、運が良けりゃあ200円返してもらえるかもしれんで、保証はできんけど」

 お昼を食べたらフリーパス。。。垣根が途中で無くなっていても不思議ではなくなった。


 順番が来てカレーを受け取る、このおば、いやおばちゃんは失礼だ、結婚してるかしてないか、三十前後だろうか、山姥やまんばの中に紅一点(後は紫?)のせいかとても若々しく見える。


 まるで妖怪にさらわれ無理やり働かされているピーチ姫ではないか。

 天涯孤独のこの身の上「姫様助けに参ったぞ」とタンカを切りたいところだが、このブヨブヨの弱り切った体で、たくましい妖怪ばばあに太刀打ちできるわけがない。


(姫様かならず助けに参ります、しばしお待ちを)と心に誓う。


 カレーライスのお肉のところを一口

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赤鬼娘 番外編 青空公園紹介ブログ 一葉(いちよう) @Ichi-you

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