赤鬼娘 番外編 青空公園紹介ブログ

一葉(いちよう)

第19話 昭和ノスタルジー全開 青空遊園地 その1

「忘れられた場所、忘れられない味、昭和ノスタルジア」


 これがレポートのタイトル、確かに忘れていた、青空市のあちこちを思い浮かべても全く思い浮かばなかった場所だ、それに遊園地なのに忘れられない味って、何これ?


 レポートを読んでみる。


 青空遊園地、知っておられる方が居るだろうか?

 わたしは青空市の近隣に住むオジサンだがつい最近まで全く存在を知らなかった。

 会社の若い子達の会話が耳に入って、「美味しいカレー」だけが頭に残っていた、ブログ記事の話題に事欠いていたので今回はこの「青空遊園地」にスポットを当てることにした。


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 今ではすっかり影を潜めた昭和ノスタルジーがプンプン匂う青空遊園地、期待に胸が高鳴る、入場券を自販機で200円で買い入口へ。

 誰も居ない、ゲートは無人で看板に書かれた服を着た兎だけが頭を下げている。

 いや頭を下げなくて絵顔で「ようこそ」と言って欲しい、工事現場のおじさんではないのだから。


 遊園地なら一番目に乗るのはやはり何と言ってもジェットコースター。

 さっそく場所を確認して向かう、しかし少し不安が、先ほどから気にしているのだがあの、ガタガタガタと坂を上る音とか、線路を走るガーとかゴーとかそんな音が全く聞こえて来ない、まあ客も見かけないから人が来るのを待っているのだろうと思う事にして、乗り場に上がる階段まで着た所で札が掛けてあるのに気が付いた。


「整備中、本日の運行は有りません」

 はあ?メインの乗り物が休止中なんて入る前に知らせてくれよ、しかも薄汚れてペンキもハゲかけている、ずっと前からこの状態じゃないのか、不信が募る。


 気を取り直してメリーゴーランドへ、動いていない、音楽さえ鳴っていない、入口へ行くと「修理中、部品が調達できるまでお待ちください」マジックがかすれた文字で書いて有る、何年経っているやら。

 次、お化け屋敷、こういう所は電動とか無い分故障はない筈、故障では無かった。

「老築化危険に付き入場できません」っておい!

 次、回転ブランコ係員が居ない、なんだか宝探しをしている様な気分だ。


「有ったお宝発見!」始めて見る「営業中」の看板。

(ようし、良く見つけた、えらいぞ俺)


 なんか妙なテンションになって来た、「営業中」の看板を発見するだけで喜んでいる俺。


 だがしかし、係員が居ない、記憶を振り返ってみるが人影を見たのは、、、誰も居なかった。

 背中にツーと冷たい物が滴る。

 まさかここは幽世かくりよの世界!


なーんて。



 ともかくここは後回し、学生の頃夢見たスワンボートだ。


 外界と遮断された彼女と二人だけの時間が三十分も与えられる、、、夢はかなう事が無かったがそれゆえ今でも心ときめくアイテムだ。


 早る心を押さえボート乗り場え向かう。

 途中食堂らしきすっかり屋根のビニールが無くなった青空バルコニー付の小屋を横目に通り過ぎる。


『名物、大空牛カレー 600円』


 微妙だ、インスタントのレトルトカレー(何処でもそうだが)が600円は高い、しかしレジャー施設では千円程度が相場、安いのか、後で考えよう。


 少し歩くとボート乗り場の看板が見えてきた、スワンボートの絵も描かれている。

(よーしボッチだが念願のスワンボートに乗るぞ)


 乗り場へ来たがここも誰も居ない、辺りを見回して何か違和感が。

(あれ?遊園地の囲いがいつの間にか無くなっている、ここはただの公園?)


 もと来た方を振り返ると看板が目に入る、『再入場以外の方は入場門にお回りください』。

 何の事は無い、公園を回ってここから入ってここから出れば入場無料、まあタダで入るのも後味悪い。


 広い池を見渡すがボートの一隻も浮かんでいない、スワンボートの影も無い、係のおじさんも居ない、どうすりゃいいのだ。


 良く見ればボート乗り場の入口にある小さな小屋の中に、かかしが座って、、、いやいや爺さんだ、多分、椅子に座った小さな人型は息をしているのかさえ疑わしいほど、身動き一つしない。


 息で肩が上下したり、お腹の辺りが膨らんだりしぼんだりすることも無く、木の人形のごとく微動だにしなかった。


 これはこれでシュールに怖い。

「おじさん、おじさん、大丈夫?」

 声を掛けてみる。


「はあ、、、ここは何処、あの世かのう」

 とりあえず生きた人間だった、本人は生きてる自覚が無いようだが。


「ボートに乗りたいんですが」

「ボーとなんてしておらん、ただ暇じゃから寝ておっただけじゃ」

(いやボーとしてる方がマシでしょ)


「いえボートに乗りたいのですが」

「な、なんとボートに乗りたいと、もしかしてあんたは神様、仏様、お客様かえ」

「いや神様でも仏様でも有りませんが一応客のつもりです」


 やっと人が居たと思ったらボケまくりりの爺さん。


「ようきんさった、お客さんの顔が見れるとはあな珍しや、ありがたやありがたや」

 と言って僕の手を取ってひたすら感激してくれた、女子高生でなくてすんません、と言いたいくらいだ。


「おやじさん、スワンボートは無いの」

「ああスワンボートかね、有りますとも去年の台風でこの下に沈んでおる、ちょっと手伝って貰えたら引き揚げますから」

「へっ、沈んで、いやそれは、沈んじゃだめでしょ、いや普通のボートで良いですから」

「そうかのう、せっかく引き上げられそうだのに、惜しいのう」

(ってそんな事客に手伝わせるなよ)


「じゃあこっちのコウシン丸にしなせえ、火災で燃えた船と同じ名前じゃが、あんな高級な船とは違うで、沈んでも燃える事はありゃせん」

(だから沈んじゃダメだから、つっこみどころ満載である)


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