JD-010「おなかでいっぱいたべましょう でもお残しはいけません」
「ふっ、んんっ」
俺と彼女たちしかいない部屋にその音と声は妙に大きく響いた気がした。
ベッドに寝転がったラピスが見せるお腹。ジルちゃんより一回り大きな体格のその部分は、彼女より僅かに成長していることを伺わせながらも幼いことに変わりない。
そこに浮かぶ魔法陣へと、オークから手に入れた石英を1つ、飲み込ませる。1つ入れる度に、つかんだシーツがゆがみ、耐えるようにラピスが唇をかみしめる。
それでも耐え切れずに漏れる声が俺の色々をひたすら刺激してくる。と、そろそろかなというところで石英が半ばめり込んだところで止まった。
「あれ? ラピス、もう入らない?」
「は、はい……たぶん、それで終わりじゃないかと。ふぁっ」
実際のところ、既にジルちゃんには別のベッドで石英を投入した後なので、既に彼女ははふーなどと息を吐きながら転がっている。
シーツがかなり乱れており、髪の毛も汗でしっとり。どう見ても事後です、ありがとうございます。
ラピスに意識を戻し、手ごたえがすごいけど最後まで押し込むように石英を持つ手に力を込めた。
ずぶんと、石英が魔法陣に沈んだ。体を震わすラピスからどんな声が聞こえたかは、割愛しておこうと思う。
「マスターも強引ですわね。あんなになるまで入れるんですから」
「ごめん。正直……2人がかわいいからさ、つい」
乱れたシーツや衣服を整え、石英が沈んでいったお腹を撫でながらのラピスの恨み言。
俺は正直に謝るしかなく、今もラピスの顔は見れなかった。普段は白いと表現するのが似合うラピスの頬はほんのり赤くなっており、おのずと自分がしたことを思い出してしまうからだった。
(これはまた、どこかで処理しなければ)
少女が2人になれば我慢しないといけない機会も2倍である。と、いい機会?なので気になったことを聞いてみることにした。
「ラピスもジルちゃんもさ、ご飯はご飯で食べてるけど、石英入れた時って美味しいの?」
ジルちゃんは食べられるよと言っていたけど、思ってたような食べる、とはやはり違うので気になるのだ。
「んー、すごい幸せな気分になるよ?」
「そうですわね……マスターのイメージで行きますと、砂漠でオアシスに出会った旅人の様、あるいは激しく運動した後に飲む飲料のような物でしょうか。こう、我慢できない感じですわね」
ジルちゃんの話はかなり曖昧だけど、言いたいことは分かった。
ラピスのいうことからすると、マナに余裕があっても石英投入はやってあげるほうがいいようだ。
決して2人のあられもない声が聴きたいからではない、無いぞ。
話しながら、見せてもらった2人のステータスはあまり変化がない。というか、貴石ステージとマナ以外は基本的に変わらないんじゃないだろうか?
スキルとかほいほい増えるもんじゃないだろうし……。
俺にもレベルとか何かあるだろうし、今は強くなればいいのかな。
今後のスケジュールを相談しながらその日は時間が過ぎていき、翌日も3人そろってギルドに顔を出していた。
相変わらず結構な人がいる。俺達がやっているようなゴブリン退治の部分を見る人もいれば、ちらっと目に入った中ではワイバーン討伐のお知らせを読む人など。
というかワイバーンいるのか。ドラゴンがいるならいてもおかしくは無いな……。
今のところ、地上を動く相手しか戦ってないけど巨大なハチだとかハーピーの様な奴らに出会うこともあるだろうから、今のうちに対策は練っておいて損は無いかもしれない。
「ご主人様、これ」
「あら、だいぶ依頼料が高いですね……」
「ゴブリンの3倍かぁ……」
そんな時、ジルちゃんが見つけたのは川の中州に溜まりがちな岩除去の依頼だった。
どうも、雨の度にこの辺に溜まってしまうらしくどかしてほしいとのこと。
岩は持って帰ってきたらいいのだろうか? 横にどかせばいいのか?という訳で困ったときはお姉さんである。
「これですか。まあ、危険はそんなにないですよ。
依頼としては川のそばに岩が積みあがってると思いますのでそこで捨ててもらえれば。
収納袋にもし入るようなら防壁に使えますから持って帰ってきてくださいね。
たまに、ニッパがやってくるので武器はあったほうが良いでしょう」
ニッパ?と顔に疑問を浮かべると、お姉さんは静かにカウンターの横を指さした。
そこには閲覧一回銅貨1枚、購入はこちらまで!と書かれた看板。
そちらに行ってみると置いてあるのは図鑑の様だった。そこそこ厚く、ページ数も結構ある。
銅貨を1枚払って覗いてみると、確かにゴブリンなど見知った相手も乗っている。
そこにあるニッパは……巨大なシオマネキだった。ということは、魔物か。
それにしてもこの図鑑は便利そうである。最後の方にはほとんど空想だろ?と思う様な描写でドラゴンの事が書かれている。それでもいい資料にはなるはずだということであっさりと購入を決定。
「あら、さすが稼いでますね」
「これで怪我が減るなら十分ですよ」
笑いながら真新しい図鑑を受け取り、ジルちゃんらの待つテーブルへ。
「美味しそう」
「1本で3人分はありそうですねぇ」
2人のニッパへの第一声はこれであった。周囲にいた冒険者の面々の中には軽く噴き出す人もいて、ちょっと和やかな空気になってしまうのだった。確かに身はジルちゃんたちの腕ぐらいありそうだ。
それはそれとして、依頼の準備だ。
今のところ、防具はともかく武器は俺が聖剣、ジルちゃんは短剣にラピスが槍、とややニッパ相手には足りない気がする。
特にジルちゃんは近接過ぎるだろうと思う。貴石術には打ち出す形の物もあるのだけど、出来るならマナは取っておきたい。
いざという時の貴石解放の問題もあるからね。
「というわけで武具店に来たわけだが」
「何言ってんだ? で、何を狩る。オーク……はもう狩ってる見てえだな」
店主のやや冷たい視線に耐えながら、俺はニッパが相手だと告げる。
すると店主の片眉が上がり、俺を見て、ラピスを見て、そしてジルちゃんを見る。
「ちいとばかしあのでかさと殻に対しては効率が悪いな。
悪いことは言わねえ、こいつとこいつを買っていけ」
そうして勧められたのは、手斧と、網。よく川とかで投げて使っていそうなあの網だ。
「そいつは赤蜘蛛の糸が編み込んである。普段の討伐でも使われるような奴だ。
白い嬢ちゃんがこいつで足を止めて、お前の剣かこの手斧で殴っちゃどうだ?」
俺の脳裏には、縛られて出荷体制に入る有名なブランド蟹たちが思い浮かぶ。
(なるほど。さすがプロだな)
今後も無駄にはならなそうなので、勧められた物を買い込み、街を出る。
今日もいい天気だな、と思いながら目的の場所まで3人で談笑しつつも襲われないかの最低限の警戒は行う。
やはり街道にはモンスターはほとんど近づいてこず、敢えてやってくるような奴は無謀な動きをするやつばかりだった。はぐれ、ってやつか。
2時間近くは歩いただろうか。
これまでの依頼で積みあがったであろう岩山が遠くに見え、そのうちに目的地である川が見えてくる。
そして、なぜかそこにうごめく何かの影も。
「マスター、あれ……なんですの?」
「わー、いっぱいだよ……?」
思わず足を止め、2人が呟くのも無理はない。
川に近づいた3人が見た物は、縄張り争いをするかのように互いに戦いあう、2色のニッパたちだった。
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