JD-008「少女のお腹を眺めるのは大事な事です」
依頼をこなしに洞窟に行って魔物を倒してたら少女拾いました。
うん、文字にするとなかなかカオスだね。なんて説明しようかな……。
「マスター、どうされました?」
「ううん、ラピスを連れて帰ったのをなんて言おうかと思ってね」
特に追加で採取するような物も無いようなので、俺達は洞窟をすぐに出ることにした。
復活はもう少し後なのか、途中にはブルースライムは全くいなかった。
そして再びの太陽。解放感と共に背伸びをしながら考えていると、ラピスがこちらを見上げてくる。
ラピスはややたれ目で、どこかほわわんというか、優しく包み込んでくれそうなオーラがある。
……どう見ても小学生高学年だけど、ね。 でも、なんでかちゃん付けじゃなくてラピス、って呼ぶのがしっくりくる。
ジルちゃんが少しラピスより年下に見えるからだろうか?
「そうですわね……ジルちゃんを妹としたのでしたら……。
マスターを追いかけてきた幼馴染ぐらいがいいでしょうか?」
「わーい、一緒」
指をあごにあて、考え込む姿はあざと可愛い。ジルちゃんが平坦声に超天然に対して、ラピスはなんだか、知っている動きに見える。
(可愛ければいいけどね!)
美少女が自分を慕って、マスターと呼ぶ、最高じゃない?
「じゃあそれで。でも、2人とも人前ではあんまりご主人様とかマスターとか言わないでね?」
今のうちに釘を刺しておかなければならない。ジルちゃんはもう手遅れかもだけどさ。
「なんで? ご主人様はご主人様だよ?」
「わかりました……でも、なんとかなりますわよ、きっと」
ジルちゃんには何度か説明したけど、わかってくれたのだろうか?
ラピスはラピスで何やら……。多少不安は覚えながら、トスタの街に戻る。
宿のおっちゃんに納品をし、他の報酬を受け取るべくギルドへと向かう。
受付のお姉さんばかりか、近くの同業者もこちらをぎょっとまではいかなくても疑惑の目で見てくる。
それはそうだろう。
ジルちゃんもラピスも可愛らしい少女だが、外に出るにはやや幼い。
しかもそんな2人が左右にくっついてるとなれば、ほら。
「おう、兄ちゃん。可愛い2人で両手の花か、ああ?」
「そ、それはですね」
テンプレ的についに絡まれるようだ。使い込まれた革鎧に背負った槍と腰の手斧。
顔は……まあ、道で出会ったら横に避けるレベルだ。がしっと肩を掴まれ、逃げ場を失う。
左右にいるジルちゃんとラピスが反応してしまう前に、男はこちらを見た。
「カッコいいとこ見せようと無理すんじゃねえぞ。俺はガキの葬式はごめんだ。ウサギでもいっぱい狩ってろ。肉もうめえからな」
「え? あ、はいっ!」
どうやら良い人の様だった。ちょっと怖い顔で笑顔になり、肩を叩きながら去っていく。
向かう先は難易度が高いと言っていた依頼の多く貼られる場所、つまりは今の人は熟練者ということだ。
「調子に乗らず、気を付けよっか」
「ウサギさんおいしいよ?」
つぶやいた俺の心に響く癒しのジルちゃんの声。ラピスはにこにことしたままだ。
気を取り直して素材引き渡しのカウンターへ。そこで行き返りで手に入れた石英と討伐部位を引き取ってもらう。
「あ、これってこんなになって価値ありますかね?」
「どれですか? ああ! トールさん、奥に行ったんですか?
生きて帰って来たから良いものの……年に何人かはあの大きいのに食われてるんですからね!」
差し出したビッグブルースライム(仮)の核は砕けた状態で価値があるのかわからなかったけど、この言い方からすると倒した分の意味はあるようだ。
「泉に気を取られてしまって……それで、捨てなくてもいい感じですか?」
「ええ、D級ポーションの材料です。上手くやればCも狙えるかな……あ、いつもとってきてる薬草はF用ですよ」
お姉さんの言葉に頷きながらふと思った。そういえば……なんでアルファベットがあるかは謎だな、と。
というか今さらだけど日本語喋ってるのかな? 自動で翻訳されてる可能性が高い、となると
今のアルファベットも俺に合わせた翻訳なのだろう。
わかりやすくていいけどさ。
「じゃあ買取で。後、この子、ラピスの登録もお願いします」
「はい、ではこちらが金額ですね。さて、登録ですか……トールさん、こんな小さな女の子2人も連れて……自首するなら今の内ですよ?」
お金のやり取りが終わった後、受付のお姉さんはとんでもないことを言いだした。
いや、はたから見たらそう見えるのか?
「ち、違いますよ! ジルちゃんは妹同然だし、ラピスは村で一緒に育ったんですよ、なあ?」
「ええ。ジルちゃんを連れて旅だったと聞いて、いてもたってもいられず。
案の定、危ない目にあっていたのを颯爽と助けていただきました。
もう、これはついて行けというお導きですわ。
私、トールさんを主人としてついていく所存です。ねえ、マスター?」
俺のすがるような問いかけに、ラピスはにこやかに答えたかと思うと大きな爆弾を投下した。
最初は良い話だったのに! 心なしか、周囲の視線が変わった気がする。
「ジルもねー、ご主人様って呼ぶ。そのほうが悪い虫がつかないっていってた」
二人ともどこからそんな言葉を覚えてくるのか。あ、俺か?
元が俺の持っていた石だというなら、見聞きしていた物を知っていてもおかしくは……ないのかな?
まあ、深く考えない様にしよう。
2人とも俺が持っていたやつから産まれてきた精霊だということだから、どれぐらいかはわからないけど俺の影響を受けている。
言葉も俺しか知らないような向こうのネタが混ざるからな。いや、今はそれどころじゃなくて……。
「トールさん」
「はいっ!」
受付のお姉さんの冷静な声。俺が思わず背筋を伸ばしてしまうのも無理はない、無いのだ。
「稼ぐために無理をするなとは言いませんが、2人が路頭に迷わないように十分気を付けてくださいね。
ギルドは援助する組織じゃないので何もできませんが……。
助言ぐらいはできますから」
(あ、これ1周回って裏に何かあると思ってくれてるパターンや)
真剣な顔のお姉さんにやや引きつり気味に笑みを返しつつ、その日は宿に戻ることにした。
宿の主人には感謝をされたが、1人増えると伝えると微妙な顔をされた。
それはそうだ、ベッドが足りない。
そこで3人部屋に引っ越すことにした。その分宿代が高いけど、しょうがないよね。
明日からまた稼げばいいのだ。稼げばいいのだけど……。
「さあ、マスター。私を見てくださいな、すべてを!」
「なんでそんなにノリノリで脱ぐのさあ! ジルちゃんは今日はいいの!」
ジルも?と脱ぎ掛ける彼女を制するも、ラピスはベッドに転がるなりペロンと自分の服を上までたくし上げた。
ジルちゃんよりは大きそうな胸元まで一気にだ。思わず顔をそらしてしまう。
あれだ、こういう流れは無駄に恥ずかしいのだよ。例え、ブラというには微妙な布を胸に巻き付けているとしても、ね。
「マスターは恥ずかしがり屋さんなのですね。いいんですよ、みんなマスターの物です」
「ちょっと意味違くないか? まあ、明日からのためにも見るけどさ」
ジルちゃんと比べ、ネオンの青色のようにぼんやり光るお腹の魔法陣。
ややしっとりとした質感を感じる肌に目を奪われそうになるけど、頑張って目的の場所を見て中身を読み取る。
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守護名:ラピス
メイン貴石:ラピスラズリ
サブ貴石:ターコイズ
貴石ステージ:1
マナ:十分
マナプール:-
○習得貴石術
水属性
氷属性
槍化
○習得スキル
青色の祝福
リジェネーション・ソウル
貴石解放(受)※現在使用可
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ジルちゃんと比べて違いはサブ貴石と術、スキルかな……なんとなく意味はわかる。
「ラピス、メインとサブは入れ替えられるの?」
「今は難しいですね。マスターが私たちの様な貴石を別に見つければチャンスはありますよ。
あの場所で2つ一緒だったのはかなり幸運です。1つならともかく……ええ」
どうやらそう言う物らしい。今のところ不便ではないから特に変えるつもりもないけれど。
もういいんですか?と聞いてくるラピスには俺の手で服を元に戻すことで答えた。
「二人とも、明日からよろしくな!」
顔の赤さを誤魔化すような叫び。もしかしなくても、ラピスにはばれてそうだなあと思いつつ。
俺の異世界チートライフ、まだまだこれからです。
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