第四章:レイヴンズ
第一話『夜空に立つ』・「チームウルフなら、勝てる!」
冬場の午前0時でも寒くはなかった。夜風が強くても
防寒機能もある
彼女の
『また、来るかな』
「来る。アイツらは必ず」
四か月間で三度目。
隣の兎羽歌ちゃんは
年明けの神内の街を
けど俺たちは穏やかじゃない。
「それにアイツらを放っておけない」
『うん、厄介』
もし待たなかったらどうなるか。アイツらの行動は理解してる。
どこともなく夜空を見上げた。
プラネタリウムにいるみたいだ。ここから星に手が届きそうで。
『来る。匂いが、近い』
「了解」
悪の匂いはわからない。
だけどアイツらの
「俺も感じる」
『
マントを出してない白の背中を見せてくる。
「いや、」
爽快な夜の
「今夜は自力で
『頑張って、るね』
やれるはずだ。
「準備運動も兼ねて」
『了解』
兎羽歌ちゃんが後ろ足で踏ん張るように立ち上がった。
ググっと音がするほど上半身がスリムになっていく。白いボディスーツもフィットしたまま。
命名されてしばらく経つ。
つけたのはプロメテウス。
プロメテウス。ファイアボール・
『
『完了です♪』
相変わらずな声。
『マイティモードも感知しました』
ヘラクレスの筋肉がさらに増す。
やはり
戻った日の彼女の言葉も思い出す。
『マイティとバレットの先、なにかあると感じるんです。あともう少しで』
俺は、
『大丈夫だよ、ゆっくり試そう』
そう言った。
彼女にとって
衝動を悟られないように。
腰に携えてたスカルフェイスガードも顔にあて、
それが合図。
二人同時にへりから身を投げ出す。
高いビルからの落下。
あの芸能事務所よりもっと高い。
夜の街の景色、
風の抵抗、
地面の黒さ、
迫ってくる。
自殺者なら目を閉じるかも。
俺に怖さはない。
息を吐く。
吐き続ける。
脚の筋肉と背中の筋肉、
体のバランスや導く呼吸。
フローに入り、
頭の中でなにかを走らせ、
ファイアボールも操縦する。
全部を練り上げて融合させ、
閃くような感覚で、
着地する――
タンッと足が地面に着く、
瞬間に衝撃を感じて反応的に分散させた。
まさか中腰で成功するとは。
ドンッと音がした。
見ると膝をついた白い巨体。
コンクリートの地面にひびが入ってる。
当然だけど彼女も無事。
来る、
向き直って暗闇の中を見た。
黒い塊がゆっくり迫ってくる。
薄暗い街灯のせいだけじゃない、
小さいほうが大声を発してきた。
「待たせたな
いや、ブサイクどもッ」
反射的に構えた俺は、
「くそッ」
声も出た。
やるしかない。
逃げる選択はできない。
確認する。
「マイティ、準備は」
『いつでも、やれる』
プロメテウス、迎撃態勢を。
『サンダーフィンガー・
二つの人影が足早になる。
匂いも近づく。
今度こそ勝つ。
*
「……」
『ヒヒヒ』
「よるなババア」
『あんた
「黙れ、どっかいけ」
『そろそろポリ公が来ちまうイヒヒヒ』
「消えろッ!」
『そう
「ふざけてんのか殺すぞ糞ババア」
『ヒヒッ。ただし取り引きには代価がつきもの。ワタシはあんたの――がほしい』
「イカレてんな」
『さあ選べ。心の中でいい』
「テメエ……」
『ワレラはもう繋がっている』
『うッ、ぐああああ」
『ほしい。ワレはほしい。お前の、お前の右側の』
「畜生ッバケモノババアがァ!」
『目玉を』
「オレは次にどうすればいいッ!」
『叫ぶ者よ。
語る者よ。
そして
今こそ、
*
芸能事務所の爆破事件。
テレビでニュースを見たのは一ノ瀬とやり合った翌々日の今朝。
昨日はずっと寝込んでたからテレビも見れずじまいで今もまだ体が重い。
酷使するとこうも反動があるのか。でも本当の出来事だったと思える。
前に
なんにせよもっと体力つけないと。
午前中は昨日に続いて兎羽歌ちゃんが様子を見にきてくれた。スーパーへ連絡もしてくれてる。
こんな時に生活保護のケースワーカーのおばさんも来たりして、兎羽歌ちゃんが代わりに話をしてくれてた。
午後の情報番組でちょうど事件の報道。前にフライヤも出てた番組だ。
そうだ彼女は死んだ。
電話も繋がらない。
はずなのに。
爆発現場では死傷者なし。
どうしてなんだ。
あの時。プロメテウスに質問を投げかけたあとは返答がなかった。
事務所付近で大金が見つかったと報じられてる。俺たちが高所に吊るした一ノ瀬の近くにバッグを置いたから。
犯人も示したつもりだった。だがニュースにヤツの名前はない。
一ノ瀬誠があの状態から逃げた。大金も置いたままでなぜ。
それでもヤマと名乗ってた運転手は逮捕されてた。
ヤマが口を割れば一ノ瀬も捕まるかもしれない。そしたら俺も共犯で……まあその時はその時だ。
しばらくはヤツを警戒しないと。背後に不明な点もある。
一連の件は午前中に兎羽歌ちゃんと話せた。ニュースの情報も共有したから安心感はある。
一ノ瀬との過去やフライヤの死も教えた。
悲しんでた彼女はやっぱりいい子だ。
俺の衝動なんて気の迷いでドSの
呼び鈴が鳴ってる。
兎羽歌ちゃんが戻ってきたのか。
ドアを開けたら、
知らない美少女が立っていた。
青っぽい目。
見覚えがある気はしたけど、
その子より肌の色は薄いから、
「あの~今日隣に引っ越してきたんですけど」
そういえば隣は空き部屋で、
だから二人で吠えても平気で、
目の前の女の子が耳元へ近づいてきて、
「お隣同士またよろしくね。
え。
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