第248話 髪

夢疑惑の件も一件落着し、今は12時ごろだった。


12時にはなったものの、さっき朝食を食べたところなので全く腹は減っていない。


”ガチャッ”


そんな中、俺の部屋の扉が開く音がした。


普通なら不法侵入かと思い焦るはずだ。


しかし、ここでは違う。


真昼や一ノ瀬は合鍵を持っているが、白雪さんたちは合鍵を渡していない。


だから、俺たちがいるときは基本的に部屋の鍵は開けている。


よって、突然部屋の扉が開く音がしても驚いたりはしない。


そう、しない……。俺の知っている人物だったなら。


俺と一ノ瀬の目線の先には赤髪短髪のいかにもヤンキーみたいなやつがいた。


あ、これ完全に空き巣か何かなんじゃないか?


隣を見ると一ノ瀬が何やらそのヤンキーを見ながら首を傾げていた。そして、一言。


「愛月……ちゃん?」



危ないところだった。


俺の手にはスマホがあり、その画面には電話のアプリが開かれており、11までタップをしていた。


あと0をタップして電話マークのところを押していたら警察に助けを求めていたところだった。


「びっくりさせないでよー。せっかく驚かせようと思って髪の毛切ったのに、私が驚かされちゃったじゃん……」


そう、この赤髪のヤンキーの正体は村瀬だった。


思い返せば元々立派なヤンキーでしたね。はい。


「いや、今までと雰囲気めっちゃ変わったから別人なのかと思った」


「うん、私もよく見ないとわからなかった


以前までは背中辺りまで伸びていた村瀬の髪の毛は、バッサリと切り落とされていた。


今の髪は少し丸みを感じていた。


以前のストレートもかなり似合っていたが、こちらもかなり似合っていた。


美人は髪型なんて関係ない。どんな髪型でも似合うということなのだろうか。


美人恐るべし……。


「どう……かな?」


「えっ?」


俺が村瀬のことをガン見していたからだろうか。村瀬は毛先を指でクルクルして聞いてきた。なんだこれ!可愛すぎるんだが?!


「この髪型……。似合ってる……かな?」


やばい……。昨夜真昼に告白したばかりだというのに、村瀬が可愛くて仕方がないんだが!


でも、ここはちゃんと思ったことを素直に言っても悪くはない……よな?


「似合ってると思うぞ……。可愛い……」


「そ、そっか……。ありがと……」


村瀬は顔を伏せた。


一体どんな顔をしているのだろうか。


「はーい、そこのお二人さーん、勝手にイチャイチャしないよー。愛月ちゃんは私と一緒でフラれたんだよー」


そこへ一ノ瀬の一言。


「わ、分かってるし。ただ髪が似合ってるか聞いただけだもん」


あれ?村瀬の言動ってこんなに可愛かったっけ?


もしかして、これが本当の姿だというのか?!


やばい!可愛すぎるじゃないか!

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