最終話 告白

私は京くんに告白をした。


人生で初めて告白をした。


京くんは今どんな顔をしているんだろう。


顔を上げることができなかった。


少しの沈黙のあと、ようやく京くんは答えを出してくれた。


「ごめん、好きな人ができた……。だから、来未とは付き合えない……」


どうやら私はフラれたらしい。


「そっか……」


やっぱり私は好きになるのが遅すぎたのかもしれないな。


ああ、最初の告白くらい決めたかったなー。


あれ?景色がぼやけて……。


目をこすって気づいたのだが、私は泣いていた。


京くんの前で泣いたのって多分初めてじゃないかな?


肝試しの時も泣いてはいたけど、それは京くんが目覚める前だからね。


でも、そっか……。


京くんはまっひーか愛月ちゃんのことを好きになっちゃったかぁ……。


そっか……。


「その好きな人には告白いつするの?」


私が京くんに聞くと、京くんは突然おどおどしだした。


「いや、するってことは決めたんだけど、実際どんな時にすればいいのか分からなくてさ」


やっぱり京くんは京くんだね。


突然かっこいいな思ったり肝心な時にダサかったり……。


まあ、そういうところも好きなっちゃったんだけどね。


「それならちゃんと今日告白をすること」


「うそだろ?!」


「嘘じゃない。さっき言ってたよね?今日一日くらいは言いなりになるって」


「…………」


京くんのやってしまったみたいな顔。とっても可愛い。


「それに、その相手もきっと早く言って欲しいって思ってるはずだよ」


「そうだよな……。うん、わかった。ちゃんと今日告白するよ」


京くんの顔つきが変わった。うん、やっぱりカッコいい。


「それならこの観覧車降りたらもう帰っていいよ。先に帰って告白しないとね」


どうせ一緒にいて気まずくなるだけだしね。


「いや、それは違う」


「えっ?」


「確かに今日告白はする。でも、今は来未とのお出かけだからな。ちゃんと荷物運びくらい付き合う。一緒に帰ろうぜ?」


京くんは私に優しく声をかけてくれた。


やっぱりそうだよね、好きになったのは間違いなんかじゃないよね……。


好きになって良かった……。



観覧車から降りた私たちは特に寄り道をすることもなくまっすぐ家に帰ることになった。


そして今は私たちが住んでいるマンションの前。


「それじゃあ行ってくる」


「うん」


今の京くんは本当にカッコよく見えてしまう。


京くんは私に背を向けて歩き始めた。


私は……。私は…………!


「京くん!」


私の声に京くんは振り返る。


私はその顔にめがけて顔を近づけた。


そして、口と口を触れ合わせた。


「…………?!」


そんな簡単に諦められるわけがない!


だって、私の初恋でフラれてもなお好きだと思っているんだから!


数秒後私は口を離す。


「私は諦めないからね。一回フラれたからって負けるような女じゃない。私は結構頑固な女だから。だから、私はこれからも京くんにアタックしまくるから。覚悟しておいてね」


絶対に私に惚れさせてやるんだ!


京くんは完全な固まっていた。


まあ、突然キスされたんだし仕方ないか。


「ほら、早く告白してきな」


私が背中を叩いてあげると、京くんは私に背を向けて走り出した。


ついでに小春ちゃんに一通ラインを送っておいた。


『今日は相談があるから小春ちゃんと外食したい。あと、あいちゃんもよかったら一緒に来て欲しい』と……。



誰かと付き合ったから試合終了ってわけじゃないんだ。


0.1%でも勝利の希望がある限り私は絶対に諦めないからね!




俺は今硬いコンクリートの上を走っていた。


さっき一ノ瀬にキスをされた時はとても驚いた。


それに、正直一ノ瀬が俺のことを好きだなんて思ってもいなかった。


でも、俺には心の底から好きだと思える人をようやく見つけた。


今日はちゃんと今の気持ちを伝えるんだ。



「どうしたのけーちゃん?」


家から村瀬が出てきた。


「ああ、ちょっと話したいことがあってな」


正直ものすごくドキドキしていた。


ちゃんと言えるか不安だな。


「言いたいこと?そんなの明日でもよかったのに」


村瀬は落ち着いてるようだった。


「いや、今日伝えたいことなんだ」


そう、俺はちゃんと伝えないといけない。


「そうなんだ。うん、わかった、聞くよ。で、話ってなにかな?」


伝えるんだ……。


俺は落ち着くために深呼吸をする。


よし、言うぞ!


「告白のことなんだ」


「えっ?!こ、告白?!へ、へへ返事ってこと?!」


村瀬はさっきまでの落ち着いた様子ではなく、ものすごくおどおどしていた。


俺も正直それぐらいおどおどしていて、体の震えが止まらない。


俺は震えを抑えながら頷く。


「わ、わかった。すーはーすーはー……。うん、オッケー。よし、聞くよ」


村瀬は返事を聞く準備ができたらしい。


正直俺もかなり緊張している。


俺も改めて深呼吸をする。


すーはーすーはーすーはーすーはー……。


よし、覚悟を決めろ!言うぞ!


「ごめん、あーちゃんとは付き合えない」


告白を断るというのはとてつもなく心が痛かった。


「そっか……。理由、聞いてもいいかな?」


村瀬はショックを受けたのだろう。


これがものすごく辛かった。


このことで村瀬とはこれまでみたいに遊んだりすることができなくなってしまうんじゃないかと思ってしまう。


「好きな人が、できた……」


「真昼?」


村瀬の声は少し聞きにくくなっていた。


顔を見ると涙を流していた。


「うん、真昼だ」


そう、俺は真昼が好きだ。


「そっか……。ぞっか……」


村瀬は涙の粒が続々とコンクリートに落ちる。


「ごめん……。ほんとごめん……」


俺には謝ることしかできなかった。


ラノベ主人公ならこんな時いい言葉が出てくるんだろうが俺はそんなものではない。ただのオタクだ。


それが悔しくて仕方がなかった。


少しの沈黙が走る。


「……し……め……から……。私!全体に諦めないから!今は真昼に負けたけど、絶対にいつかけーちゃんに振り向いてもらえるような女になるから!」


真剣に俺を見て言う村瀬。


俺はなにも言い返す言葉も見つからない。


「それじゃあまた明日。明日のお昼、けーちゃんの家いくから」


「え?あ、ああ、わかった」


村瀬はそれだけ言うと家の中へと入っていった。


これからも……仲良くして行けたらいいんだけどな。


よし、それじゃあちゃんと気持ちを伝えにいくとするか。



「ただいまー」


俺が自分の部屋に帰ると、そこには真昼がいた。


「おかえりー、くるちゃんも小春ちゃんたちも今日はご飯食べられないんだって。今日は2人だね」


「そうだな」


きっと一ノ瀬が何かしてくれたんだろうな。


ありがとな。



俺たち2人は食事を済ませ、2人でテレビを見ていた。


すーはーすーはー……。


ものすごく緊張してきた。


「そろそろ私は帰ろうかな。それじゃまた……」


「真昼、ちょっと待ってくれ!」


思わず反射的に止めてしまった。いや、止めてよかったのか。


「ん?どうしたの?」


真昼が俺の方を振り向く。


「いや、その……ちょっと話があるっていうか……」


くそっ、やっぱり俺は肝心な時に弱ってしまう。


伝えるって決めたのに……。


「話?京くんが私に話なんて珍しいね。また私とアニメ見たくなった?」


「あ、ああ、まあ、それもあるけど、今日は違うくて……」


なんで『好き』っていう二文字が口から出てこないんだ!


「ん?どうしたの?まあ、長くなりそうだし座ろうかな」


真昼は部屋に戻ってきて床に座った。


しばらくの間沈黙が続いた。


そんな中、真昼は俺から視線を離すことはなかった。


そうだよ、俺はこの子を守るって決めたんじゃないのか!


それなのに、『好き』一つ言えなくてなにが男だ!


俺はちゃんと真昼に好きだと伝えるんだ!


「真昼、聞いてくれて」


「うん」


よし、言うんだ!


俺は心の中で大きく深呼吸をした。


そして、言った。


「真昼、好きだ!」


「ふぇっ?!」


真昼は俺の告白に驚いた様子を見せたが、俺は止まらない。


「俺はバカだ。アニメやラノベにしか脳がない大バカ者だった。でも、今は違う。俺は真昼と一緒にいたいと思ったんだ。正直付き合ったからといって俺はそんなカッコいい彼氏になれるかなんて分からない。いや、多分無理だと思う。でも、その努力はしようと思う。それできっと真昼を幸せにしたいと思ったんだ。だから、だから!俺と付き合ってください!」


俺は頭を下げて告白をする。


今真昼がどんな顔をしているのかは分からない。


「…………」


あれ?真昼から反応がない。どう言うことだ?


俺はゆっくりと頭を上げる。


すると、目の前には目に大量の涙を垂らし、しかし満面の笑みの真昼がいた。


「私も!ずっと大好きだったよ!よろしくお願いします!」


そして、真昼は俺の胸に抱きついてきた。


俺はそれを素直に受け止め、手を真昼の背中に回した。


真昼の温もりを感じる。


「京くんの胸、温かいね」


「真昼もだぞ?」


「ははは!なんか、こんなの小学生の頃ぶりだね」


「そんなことあったか?記憶にないな」


「もう、京くんったら……。ねえ、京くん!今日って記念日ってことになるんだよね?」


「まあ、そうだな」


「それじゃあさ、記念日って事であの私たちの思い出のアニメ一緒に見ようよ!」


真昼は俺の胸から顔だけを出して言ってきた。


「あのアニメを見るのか?今季の面白い作品とかじゃなくて?」


「もう、これだから京くんは……。もっと思い出を大切にしようよ。ね?わかった?これからもちゃんと思い出たくさん作るんだからね?」


「あ、ああ、わかった」


俺は諦めそのクソアニメを見るための準備を始めた。



「楽しみだなー!」


真昼はとてもワクワクしているようだった。


正直このアニメは1週間前ほどに見ているだがな。


俺は準備を完了させ、ベッドに座る。


すると、真昼が俺の横に座る。


これが恋人の距離ってやつなのかな?


「よし、いくぞ!」


「おおー!!!」



一人暮らし初の隣人であった超絶美人の幼馴染は、俺の恋人になりました。



                 〜完〜

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