第245話 観覧車
プールでの出来事から数日たった今日、俺は一ノ瀬と買い物(荷物運び)に来ていた。
そして今日、俺は一ノ瀬に話をしないといけない。
今思ってる感情を一ノ瀬には伝えなくてはいけない。
「京くんはい!」
かなりちゃんとした話なのでいきなり話すわけにもいかないしな。
今はちゃんと荷物運びとして働きましょうかね。
その後も俺はひたすら一ノ瀬の買ったものを持つ。それだけだった。
量は普通にやばい量だった。
重い荷物を持たされて一ノ瀬の後ろをついて行かないといけないのでかなりしんどかった。
あのときのことをかなり怒っているようですね。まあ、当たり前と言えば当たり前なんですけどね。
その後もひたすら俺の手への負担が強くなっていくだけだった。
5時になった。
夏なので日はまだ俺たちを明るく照らしていた。
「ねえ京くん、せっかくだし最後に観覧車乗ろうよ」
そろそろ終わりかなと思っていたので、『えっ?!まだあるの?!俺の手引きちぎれるよ?!』と思ったが、観覧車か。休憩にもちょうどいいかもしれないな。
「いいぞ」
俺は一ノ瀬の提案に否定することなく言う。
まあ、どうせ俺に選択権とか無さそうだけど。
そんなわけで、俺たちは今観覧車に乗っていた。
俺の正面には一ノ瀬が座り、俺の隣にはたくさんの紙袋が並んでいた。
どう考えても多すぎるな。
「今日はおつかれさま」
一ノ瀬はいつものからかい口調ではなく優しい声だった。
「別に構わないよ。流石にあんなことがあったんだから一回くらいは来未の言いなりにくらいなりますよ。ソレニイチノセサマミタイナヒトトオデカケデキルナンテシアワセデスカラー」
「あれー?最後の方ロボットになってる気が……。ははははははは」
「ははははははは」
観覧車が4分の1ほど進んだところの俺たちは2人揃って笑い合った。
「京くん、ちょっといいかな?聞いて欲しいことがあるんだ」
少し進んだあと、一ノ瀬が突然話し出した。
さっきまでの笑い合っていた時とは雰囲気が変わっていた。
一ノ瀬が俺に聞いて欲しいこと?同性には相談とかしにくい話なのかな?そんなこと全く思いつかないけど。
「ああ、いいぞ」
でも、一ノ瀬から相談してもらえるなんて初めてじゃないか?なんか嬉しいな。
一ノ瀬は雰囲気を変えることなく真剣な顔つきだった。
それなら俺もちゃんと話を聞かないとな。
俺も軽く姿勢を正し、真剣に話を聞く姿勢をとった。
「今から話すことは遊びで言っているんじゃなくてちゃんと真剣に言うから、真剣に考えて欲しいの」
「わ、わかった」
俺は一ノ瀬の真剣さを考えてちゃんと話を聞く。
「えっと……、あの……」
かと思えば突然声が細くなった。
どういうことだ?!何が言いたいんだ?!
「ゆっくりでいいぞ」
俺は一ノ瀬を落ち着かせるために軽く声をかける。
「うん、すーはーすーはー」
一ノ瀬は大きく深呼吸をする。
「よし、言うよ!」
覚悟を決めたように一ノ瀬の顔が1分前の真剣な顔に変わる。
だから俺は頷く。
そして、一ノ瀬から放たれた言葉を聞いた。
「私、京くんが好きです。ちゃんと異性として好きです。私と付き合ってください!」
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