第241話 協力

「それじゃあまあ、これからは自由に遊ぶってことでいいかな?」


「さんせーい!」


一ノ瀬の提案に郷田がすぐさま賛成する。


みんなも一ノ瀬の提案に異論はないので、すぐに決定した。


「じゃあ私はちょっと思いっきり泳いでこようかなー」


腕を回しながら一ノ瀬が言う。


さすがは運動大好き一ノ瀬さん……。


目がガチなのを見る限り、きっとものすごいスピードで泳ぎまくるんだろうな。


てか、『ちょっと思いっきり』って明らかに矛盾してません?国語が苦手な俺でも分かりますよ?


「それじゃあ俺も泳ごうかなー」


そして、女子のことしか頭にない郷田が軽い感じで言う。こいつ絶対地獄見るなぁ……。


「そっか、じゃあ行こっか」


一ノ瀬が郷田を手招きしている。うわぁ……、地獄に引き連れてるぞ……。


しかし、そんなことに気づかない郷田は嬉しそうについて行った。


次に会う時が楽しみだな。


「俺たちはどうする?」


「適当に流れるプールでも行く?」


「そうだな」


運動が大好きなあの2人以外のメンバーはこんな感じで適当だった。


俺たちは特にこれといったことをするわけでもなく、軽く泳いだり歩いたりした。


プールってなんか楽しいな。



今はお昼、一ノ瀬と郷田が帰ってきたので昼食にした。


予想通り郷田は完全に力尽きていた。


やっぱりか……。


郷田でも敵わないって一ノ瀬ってマジでやばいやつなんじゃ……?


そんなことを考えながら売店へと向かっていた。


俺たちはそれぞれ欲しいものを買い、今はベンチに座って食べていた。


そんな時だった。


1人の女性がこっちに向かってきた。


「まひるちゃーん!くるみちゃーん!」


その女性は真昼や一ノ瀬の前で止まる。


そして、その他のメンバーも見る。もちろん俺も。


「え?!森木?!やっぱり真昼ちゃんとか来未ちゃんって森木と仲良かったの?」


それ普通に失礼じゃないですか?


てか、なんで俺のこと知ってんの?もしかして同じクラスの方ですか?


「まあ、家が近所だからね」


一ノ瀬がその女性に言う。


「へぇーそうなんだ。て、そうじゃなくて、急なことになっちゃうんだけど、みんなに協力してもらいたいことがあるんだけど」


その女性はなんかめっちゃテンパっていた。


これは何かが起こりそうな予感がする……。


その予感は的中した。


「あのね、今日このプールである企画をすることになってるんだけど、人数が足りてなくてさ。もし良ければみんなにも出て欲しいんだけど……。早く人数集めて来いって怒られて……」


話しながら若干涙目になっていた。マジで怒られたのかもしれないな。


「私は全然いいけど、その企画ってなんなの?」


一ノ瀬は涙目の女性に向けて聞いた。


「それは……『愛の告白選手権』っていう企画で……。好きな人とか大切な人に向けて一言叫ぶみたいな企画なんだよね……」


女性は断られると思っているんだろうな。


だって普通に考えてそんな企画に参加したい人なんているわけないだろう。


きっと分かっているのだろう。そこまで声に力がこもってない。


しかし、答えは予想とは違う結果になった。


「それなら協力させてもらうよ」


「うん、私もやる!」


「私もやる」


「あいもー!」


すぐさま4人の参加が決定した。


「それなら小春ちゃんもだよね?」


「え?え?ええ?!」


どうやら白雪さんも道連れにされてしまったらしい。



こうしてこのプールの特別企画『愛の告白選手権』が始まろうとしていた。

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