第240話 ウォータスライダー

「お兄ちゃん!あれ行こ!」


あいちゃんはウォータスライダーを指差して言う。


「いいぞ!一緒に乗ろうか」


「やったー!」


「それじゃあちょっと行ってくるわ」


俺は残りの高校生組に向けて言う。


「まあ、仕方ないね。それじゃあ2人はウォータスライダーの後に合流って感じかな。それじゃあ私たちは50メートルプールにでも行っとくね」


一ノ瀬が言う。


「分かった。それじゃあまた後で」


そうして俺とあいちゃんはウォータスライダーへと向かった。



ちょっと待ってください。結構高くないですかこれ?


階段を登っていて気づいたのだが、これってめっちゃ高かった。


今丁度階段を登り切ったのだが、だんだん怖くなってきてしまった。


「お兄ちゃん、楽しみだね!」


しかし、あいちゃんはこの高さをなんとも思わないのか登るにつれてテンションが高くなってきている。なので俺も、


「ソ、そうダな、たのシミだナー」


と頑張って楽しみな感じを出す。


これってほんとに楽しいのかな?なんで高いところから落とされるだけなのにこんなにも人気なんだよ?


今時の子はよく分からんな。



「次の方どうぞー」


とうとう俺たちの番がきてしまった。


スタッフさんが俺たちを呼ぶ。


なので俺たちもウォータスライダーの入り口へと移動する。


「お2人で一緒に滑られますか?」


スタッフさんが俺たちに向けて聞いてきた。


「お兄ちゃんなの!だから、あいと一緒にすべるのー!」


あいちゃんはぴょこぴょこと跳ねながらスタッフさんに向けて言っていた。


スタッフさんが俺とあいちゃんを交互に見る。


そりゃそうでしょうね。黒髪と白髪ですからね。


複雑な家庭だとか思われてるのかな?


まあ、そもそも家族では無いんだけどね。


まあ、2人とも兄妹ということに抵抗がないからいいんだよ。


「わ、わかりましたー!それではお兄さんが乗ってもらって、その上に妹さんが乗ってもらいましょうかね」


スタッフさんの指示を受けて俺たちは言われた通り俺がボートに座り、俺の膝にあいちゃんが座る。

 

あいちゃんのお尻が俺の股間部分に当たっているが、妹で興奮したりする兄ではない!


「それでは行きますよー。レッツスライダー!」


スタッフさんの掛け声と共に俺たちは水が流れた空洞の中に入れられる。


「いやあああああああああ!!!!!」


「ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」



めっちゃ怖かった……。


左右に振られまくってものすごいトラウマを植え付けられた気分だ。


俺はスタッフさんにボートを返し、プールサイドに上がる。


そして、そこには50メートルプールに行くと言っていた5人がいた。一ノ瀬の手にはスマホも。


「どうしたんだ?50メートルプールに行ってたんじゃなかったのか?」


俺が聞くと、一ノ瀬はクスクスと笑いながらスマホを俺に見せる。


それは動画になっていて、ウォータスライダーの出口を映し出していた。


『いやああああああああ!!』


俺が出る直前まで叫んでいた言葉と完全にビビり切っている顔はまんまと撮影されていた。


一ノ瀬はそれを見せるとスマホを下ろす。


おい!


このニマニマと笑う一ノ瀬……。


これはまたからかい材料にされることでしょう。


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