第231話 バイト
勉強合宿3日目である今日、俺と白雪さんは外出していた。
そう、今日は初めてのバイト日だ!
正直めちゃくちゃ緊張しているが、白雪さんが隣にいるとものすごく安心する。
俺が今日から働くことになるのは隣町の映画館だ。
以前俺たちも行ったことがあるところだ。
それに、俺はおそらく店長からかなりの評価を得ている。
だって面接する前から採用が決まっていたんだからな。あの時の緊張を返せ!
そんなわけで、電車に揺られること約10分。
俺たちはショッピングモールに着いた。
そして、エレベーターで4階まで移動する。
白雪さんが先導してくれるのであればその後ろについていく。
前方に店長とおじさんがいた。
「お、小春ちゃんおはよ。それに森木くんもだね。今日からがんばってね」
店長が俺の背中を叩きながら言ってくる。
「は、はい!がんばります!」
おお!!これが上下関係というものなのか!!
俺は人間として成長したのかもしれない。
ちゃんと敬語使えたぞ!
「制服は控え室に置いておいたから、着替えてきてくれる?」
「は、はい!」
挨拶は基本だからな!俺だってやるときはやるんだ!
俺と白雪さんは控え室に入った。
すると分かりやすく制服が置いていた。
「服はここで着替えてください」
白雪さんの目線を追うと、そこには服屋さんによくある試着室みたいなのがあった。なるほど理解。
俺は更衣室?試着室?まあ、着替えるところに入って着替えを始めた。
若干着るのに時間がかかったがなんとか着ることができた。
俺がカーテンを開けるとそこには制服姿の白雪さんがいた。
綺麗な白髪は一つにまとめられており、初めて白髪の人のポニーテールというものを見てしまった。
アニメとかでも白髪のポニーテールって結構レアな気がする。
なんか今までの大人って感じよりかは、少し可愛いって感じだ!めっちゃいい!
俺は研修中のカードを首から下げて白雪さんの後ろをついて学ぶことになった。簡単に言えばアシスタント的な?
やっていて気づいたのだが、映画館ってやることがいっぱいあった。
それに、1日だけで色々な場所に移動する。
ポップコーンとか作ったりすることもあれば、ゲートのところでチケットの確認や特典の配布だったり……。
正直映画館って楽なんじゃね?って思っていた自分を殴ってやりたい。一日中立ちっぱなしだから、めちゃくちゃ足とか痛い。これは明日は歩けねぇな。
そんなことも考えながら白雪さんの後ろをついてアシスト(邪魔)をする。
俺は気づいてしまった……。
白雪さんが特典を渡している時の相手の顔が明らかに緩んでいることに。
俺はこそっとその時の白雪さんのことを観察をすることにした。
おおおおおお!!!!!!なんだこれ!
これが営業スマイルというやつなのかああ?!
めちゃくちゃ可愛い!!
これはビューティフルではなくプリティーだ!
学校とかでの白雪さんの姿とは全くの別人だった。
そりゃ気付かねえわ!
てか、俺でさえ完全に目を奪われていた。
やばいですね、バイト初日で仕事のことよりも可愛い女の子に目が行くなんて……。
でも、これは男として正常なはずだ。それぐらい可愛い!
てか、この笑顔が演技なんだとしたら人間不信になってしまいそうになるな。
「ふぅー、疲れたなー!」
俺たちは控え室にて帰る準備をしていた。
俺はアシスタントとしてたくさん白雪さんの足を引っ張りまくったのに、俺が白雪さんよりも疲れているという現実。
この人は凄すぎます。
「そうですね、今日はたくさん覚えることもありましたし、疲れるのも普通ですよ、お疲れ様です」
そして疲れた俺へ癒しの言葉をかけてくれる。こんな母親が欲しかった。
もう、この人完璧超人すぎでしょ!
俺は改めてこの人の凄さを知ってしまった。
「帰りますか」
「そうだね。今日はぐっすり眠れる気がする!」
「そうですね」
俺たちはバイトという機会を得て、社会の厳しさと白雪小春という完璧超人を発見してしまった。
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