第227話 初日のヒロイン
「まじかよ……」
俺のペアとなった相手は明らかに嫌な顔をしやがった。
そう、俺の相手はこのペア決めに一番燃えていた男である。
まさかの20%の確率を引いてしまうとは微塵も思っていなかった。
まさかの平和……。
ちょっと女子と一緒に寝れなくて悔しいという理由と、ほっとしたような気持ちもある。
しかし、これなら郷田が女子たちにやばいことをしないという意味ではかなりの大勝利なのかもしれない。
まあ、初日から女子と寝てたりしてたら勉強どころじゃないしな。
初日は平和に俺・郷田ペア、一ノ瀬・白雪姉妹ペア、真昼・村瀬ペアという結果になった。
「どうする?俺はもうちょっと勉強するけど」
それは部屋に戻った後のこと。
ヤンキーなのに真面目な郷田は監視係がいない場所でも勉強を続けるそうです……。すごいですね……。
てか、真面目に勉強とかするんだったらヤンキーキャラやめろよ!
それだけ真面目な性格してるんなら、服装とか直したら絶対先生からの評価上がるだろ!
「俺はまあ今日はいいかな……」
俺はスマホを取り出し、イヤホンを装着(ボストンバッグにたまたま入っていた)、そうしてアニメ鑑賞を始めたのであった。
ラノベが読めないのは辛いけど、アニメがあればなんとか耐えられそうだ。
このイヤホンは俺の命綱的存在だな。くれぐれも一ノ瀬の前では見せないようにしよう。
俺がアニメを鑑賞し始め、郷田が勉強を開始してから2時間ほど経った。
郷田もやっていた課題などを片付け出した。どうやら勉強は終了したらしい。
「お前何見てんの?」
スマホの画面を覗き込むようにして見る郷田。
「ああ、これはまあ日常形のアニメでなんかボーッとしながら見れるアニメだな。正直もう何回も見てる。郷田も一緒に見るか?」
「おう!最近はちょっとテレビでも見てるぞ」
「おお!いいなー!それじゃあ……」
俺はスマホからイヤホンを抜き取り、音が出るように設定する。
俺はさっきまで見ていたアニメを中断し、他のアニメに切り替える。アニメにハマってもらうには面白い作品を見ないとな!
こうして俺たちのアニメ鑑賞が始まった。
「ふぁぁ………。なんか眠くなってきたな」
あくびをしながら言う郷田。
「そうだな。そろそろ寝るか」
気づけば12時を回っていた。
俺たちはベッドに移動する。
シングルベッドなのでかなり狭いが仕方がない。
電気を消す。
俺たちは狭いベッドをがたいの大きな郷田とシェアしなければならないのだが、正直かなり辛かった。
「あ、そうだ」
俺は絶対に言っておかないといけないことを今の今まで忘れていた。危ない危ない。
「ん?どうした?」
郷田が聞く。やっぱり自覚はないよな。
「真昼のことなんだけどさ、多分今日ちょっと嫌がられてたと思うぞ」
「えっ?!」
どうやら本当に気付いていなかったらしい。電気が消えていて郷田の顔は見えないが、落ち込んでいるのがよくわかる。
「ちょっと真昼とひっつきすぎだと思う。真昼の顔だいぶ引きつってたし」
「まじか……。相手との距離を縮めたければ実際でも近い距離で接しましょうって見たんだけどな」
どこの情報だよ!すごい嘘だな!てか、普通これ信じるか?郷田大丈夫か?
「それは多分男ならってことだと思うぞ。女子に近づかれたらドキドキするだろ?」
否定して長くなっても面倒なので、都合の良いように変えさせてもらおう。
「ああ、そうだな」
うん、郷田くん正直だね。
「まあ、男子と女子とでは違うから、少しは考えて行動した方がいいってこと」
「なるほど……。サンキューな!京がいなかったらこのままボディータッチまで行く予定だったわ」
おお?!あっぶな!郷田さんやばいぞ!
「そ、そうか……。まあ、明日からは気を付けろよ」
「おう、ありがとな。おやすみ……」
「おやすみ……」
朝、目が覚めた。
あれ?なんだかベッドが硬い気がするなぁ……。
それに、俺の目の前には浮いた足。
あ、なるほど、ベッドから落ちたのか。
てか、頬が痛いなぁ……。
俺は起き上がり、ベッドの状況を確認する。
郷田が『大』の字で寝ていた。
これもしかしたら、俺郷田に殴られたんじゃね?
それで落とされたんじゃね?
めっちゃ頬痛え……。
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