第223話 地獄の始まり

こうして始まった地獄の勉強合宿。


本来であればみんな嫌がるはずなのに、誰も文句一つ言わない。


え?どうしたの?頭おかしくなったの?


本気で心配してしまいそうになる。


なんで勉強が嫌いな真昼や村瀬までやる気になってんだよ!


怖えよ!なんかあるのか?!



結局、お昼ご飯まではみんな休憩一つせずに勉強に没頭していた。一名を除いては。


「ふぅ……。けっこう進んだぞ!」


郷田が伸びをしながら言う。


そう、一ノ瀬と白雪さんを除いてで言えばダントツで進んでいた。さすがは学年26位!


それに比べて学年27位の俺は全く進んでいなかった。


まずですねぇ……。俺今まで夏休みの宿題とか全くやらない派の人間なんですよねぇ……。


全くやる気が出ないと言うか何というか……。


てか、なんで誰も俺にこのこと教えてくれなかったの?!あ、行かないって言うに決まってるからか。納得納得。


でも、家の鍵盗まれたのって犯罪じゃないんですかー!訴えたら勝てるんじゃないか?


などと考えながら昼食を食べる。


もちろん本気で考えているわけではない。


そんなことをして本当に裁判とかなったら面倒以外の何物でもない。


それに、こんなことで友達を失いたくないしな。


トモダチタイセツ!



「それじゃあ昼の部も頑張りますか!」


郷田が肩をぐるぐる回しながら言う。


「あ、そうだ、提案なんだけど、私たちはあいちゃん以外に6人いるでしょ?それで、勉強ができる、得意な人と勉強が苦手だったりやる気がない人で3、3に分けられるから、昼からはペアでやってみない?それなら勉強の教え合いとかもできるしね。あいちゃんは好きなところで勉強ってことで。どうかな?」


一ノ瀬がみんなに言う。


あのー、『やる気がない人』って間違いなく俺のことですよねー?目あってますもんねー。まあ、反論するわけではないが、なんかむかつくなおい!


そしてその結果は俺以外は満場一致。


誰も俺の手元が動かないことに気づかなかったのか、無視したのか……。うん、間違いなく後者だな。


「それじゃあはい!」


そう言って割り箸を取り出す。あっ!絶対準備してたぞ!くそっ!これで俺も強制的に勉強をやらせる作戦か!やるなぁ……。


割り箸には、底が赤く塗られたもの、青く塗られたもの、そしてノーマルがあって、ペアを作れるようになっている。


「どうぞー」


それをかき混ぜ、底が見えないようにして俺たちに向ける。


なんか肝試しの時みたいだな。


そして……。



俺は引いてしまった。一ノ瀬という最大の敵に。


これ絶対になんか仕組んでるじゃないかと色々見たが、全くなかった。だって普通の割り箸だもん。


そのほかには、郷田、真昼ペアと白雪姉、村瀬ペア。あいちゃんは俺と一ノ瀬ペアのところに入ることになった。


さっきから郷田のテンションがおかしい。


なんだか真昼が心配になってきたんだが?!


それに、白雪さんと村瀬のペアもかなり心配だなぁ。


てか、最悪のペア組になってしまったんじゃないか?!


なあ、やり直さないか?!


「どうせだし、個別の部屋とかでやったほうがいいんじゃないかな?それの方が誘惑とかなくなるかもだし」


あのー一ノ瀬さん、はっきりこっちを見ないでください。


そして、これも一名を除き満場一致。



結果、俺たちは村瀬の両親の部屋を使わせていただくことになった。



俺は連行された。


あああああああ!!!!!たすけてえええ!!!!


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