第217話 森木京揚げ
温泉。
みんなは温泉と聞いたらどう思うだろうか。
気持ちが落ち着く。心に染み渡ってくる。最高の場所……。
否である!
俺自身、全く落ち着いた気持ちなんてない。それどころかおどおどしている。
心に染み渡ってくる?否だ!心どころか傷口に染み渡ってきて激痛が与えられる。
最高の場所?ふっ、そんなバカな!否否否だ!最高どころか、なんの安らぎもない地獄の場所だ。
テレビとかで一度は見たことのある生きているエビとかをそのまま調理するやつあるじゃないですか。
俺今そのエビになった気分なんですよねー。
逃げたくても逃げれない……。
俺これからは生きたままのエビを調理したりする機会があっても絶対にしないぞ。誓う!
そんなわけで風呂場に着いたのだが……。
俺はどうすればこの危機を脱出できるかどうか考えていた。
まず、湯船に浸かってしまうと俺は死ぬ。
でも、さすがに体くらいは洗わないと、二日連続で風呂に入っていないことになる。
さすがにそれはまずい。
ではどうするか……。
俺は悩んだ。
5分後。
「ああああああああ!!!!!」
俺は水風呂に突っ込まれていた。by郷田。
「助けてええええ!!郷田!ごうだああ!!!」
郷田は俺の肩をとり、俺と一緒に水風呂へと入る。
えっ?!なんで?!郷田なんで全く動じてないの?!なんなのこいつ化けもんなの?!化けもんだったー!
「ギブギブ!!ってかなんで?!なんで冷たくねえの?!」
俺は必死に郷田に訴える。
傷口がなんだかピリピリしてきた。これやばいんじゃないんでしょうかー。死にそうなくらい痛いんですけどー!
しかし郷田はゆっくりとこっちを向く。ニヤニヤしている。こ、こいつ……!
「まあ、多少の罰は受けないとな。それと、筋肉があったらこんなもん寒くもなんともねえ」
なに?罰が火炙り(水風呂)の刑ってこと?!
てか、筋肉あったら水風呂なんかも平気なの?!そんなわけあるかあ!と突っ込みたいが、郷田みたいにムキムキマッチョが言うんだからなんだか本当なのかと思ってしまう。
そんなわけで、俺は5分ほど水風呂に漬けられた。
「よし、次は風呂行くぞ!」
郷田はそう言って、若干水風呂に慣れ始めた俺の肩をしっかりと掴み、風呂に向かう。
まあ、水風呂よりかは温かい方がいいだろう。と思っていたんですが……。
「うあああああああ!!!はあ?!なんでこんなに熱いんだよ!ギブギブギブ!!」
なぜかものすごく熱かった。周りにはみんな普通にこの熱湯風呂に浸かっている。はあ?!謎。
そうか!!水風呂に浸かっていたから温度差で熱く感じているのか!なんか油で揚げられてるみたい。
そんなわけで5分後。
俺の唐揚げが出来上がってしまった。
どうだい!今なら森木京揚げ千円だよー!
って安すぎだろ!
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