第216話 脱衣所

俺は郷田に引きずられ、そして、温泉に連れてこられていた。


正直なことを言うと、俺は昨日風呂に入っていない。


この暑い季節に風呂に入らないってことは、相当俺は匂っていたはずだ。


だから、まあ風呂に入れたのは普通に嬉しかった。



脱衣所についた。


俺たちは服を脱ぎ、籠に入れていく。


そこで俺は見えてしまった。


ムキムキで、バッキバキに割れた腹筋。


郷田だった。まるでテレビのCMのように割れた腹筋、これぞまさにシックスパック!!


その隣にいる大野は郷田ほどではないが、綺麗に腹筋が割れているのがわかる。


さすがはサッカー部というところか。


その隣には俺と同じ帰宅部の橋本。それに行きのレクリエーションの時、たしか趣味はゲームだと言っていた。


ということは、俺と同じで家に引きこもっているやつだ。


よし、仲間だ!絶対俺の仲間だ!


俺は橋本の方に視線を向ける。


…………なんだと…………。


俺と同じでぽっこりお腹だと思っていた橋本が……。


腹筋が割れているというわけではないが、しっかりとお腹は引き締まっていた。


くそっ!裏切り者め!


「京どうした?早く脱げよ。行くぞ?」


郷田が全裸の状態で言ってくる。


いや、そりゃー誰か1人でも俺と同じようにぽっこりお腹がいたら全然普通に脱ぎますよ?


でもですね、俺の目の前にはムキムキマッチョに、爽やかイケメン、そして普通に引き締まった腹筋くんだよ?


恥ずかしいに決まってるじゃん!


「もー何をためらってるんだよ。さっさと脱げよ」


若干郷田がイライラしてきているなと感じたので、俺は素直に従うことにした。


服をすぐに脱ぎ捨てる。


「お前、やっぱりちょっとは体鍛えたほうがいいぞ?」


分かっとるわ!この林間学校が終わったら筋トレちゃんとするし!する……し。


郷田からの言葉に心の中で叫ぶ。


「んじゃ行くか!」


こうして俺たちは大浴場へと向かった。


てかやばい!


俺の体中傷だらけなんだけど!やばい、帰りたい!



ここに入ったのが、地獄の入場ゲートだということを俺はまだ知らなかった。

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