第212話 持つべきものは親友だよな!
俺は城作りを開始した。
はじめにそこ辺にある砂……ではなく泥をかき集める。
そして、そこら辺にある貝殻……ではなくそこら辺の石で削っていく。
………………………………以上だ。
終わってしまった。
30分もかからず終わってしまった。
普通にいい感じの城ができた。
しかし、まだ1時間以上残っていた。
やばい……、暇だ。
もう一個作るか。
そうして、二個目の城作りを始めようとしたときだった。
「あ、いたいた!けーちゃん何してるのー?」
目の前には村瀬がいた。
「暇だから城作ってた」
俺が言うと、村瀬の視線も自然と俺の作った城1号に向く。
そして、目が飛び出しそうなくらい広がる。
「えっ?!何この城完成度高すぎじゃない?!これ暇だから作ったってレベルじゃないでしょ!なんなのけーちゃんって実はすごい人なの?!」
「いや、単にぼっちだから今までもこんな風に過ごしてたってだけだ」
なにもすごいなんて言われるようなことでもない。
泥で城作っただけだぞ?
しかし、村瀬はまるで芸術作品を見るかのように見て、そして言った。
「けーちゃん、これは才能だよ!将来はこんな仕事に就いたらいいんじゃない?」
「まあそうだな……」
いや、そんなわけあるかああ!!
どんな仕事だよ!!
泥で城作る仕事ってどんな仕事だよ!
海で作ると考えたとしても、少なくとも夏しか仕事来ないじゃねえか!
まあ、それでちゃんと生活できるなら構わないけどさ。
そんなわけないので、そんな夢はすぐに捨てた。
「ねえけーちゃん」
「ん?」
「夏休み、一緒にプールに行こうよ」
俺の目を見て真剣に言ってきた。
たしかにいいな。俺もちょっとは友達とプールとか憧れる。
「そうだな。夏休みにみんなも連れて一緒にプールに行こう!きっと楽しくなるはずだな」
俺はが言うと、村瀬はちょっと顔を引きつらせながら、
「あ、うん……。そ、そうだね。みんなで行こっか。それじゃあまた後でね」
そう言って村瀬はどこかへ行ってしまった。
よし、2個目の城作るか。
終わった。
今回はさっきよりも早く作ることができた。
まだ30分以上も時間がある。
なにをしよう……、もう一個作るか。
そうして作り始めようと泥を集めていたときだった。
「あ、京くんいた……って、ええ?!なにこれ?!京くんが作ったの?!」
村瀬とほぼ同じ反応ありがとう。
「まあ、暇だったからな」
「いやいや!これは暇だから作れるってものじゃないよ!これは芸術だよ芸術!」
え?ほんと?
なんか一ノ瀬に言われるとちょっと本当なのかと思ってたしまう。嘘つくようなやつじゃないし。
「そ、そうか?まあ、それなら考えてみようかな」
ちょっと将来のことも考えてみようかな。
あ、そうだ!
「来未、夏休みさ、一緒にプールに行かないか?」
「え!えええ?!ぷ、プール?!」
何やらものすごく驚いたように聞き返してきた。
「ああ、さっき村瀬とも話してたんだけど、夏休みにみんなでプールとか行けたらいいなって」
言うと、なんだか安心したように一息ついていた。
それに、何やら顔が赤い。
「いやー、突然デートに誘われたのかと思っちゃったよー」
いつものようにからかうようにして言っているが、なんだかいつもとちょっと雰囲気が違う気がする。
「さすがにそんなことはしねえよ。さすがに俺と来未じゃ釣り合わないだろ。高嶺の花すぎるな」
これは正直な気持ちだ。
こんな美人で性格も良くて、まあよくからかってくるけど、それでも完璧すぎると言ってもいい。
さすがに俺でも現実を見ることくらいはできる。
「え?!そ、そうかなー。まあプールはいいかもね。まっひーも京くんもこの川で遊ぶこともできなかったし、小春ちゃんとも遊びたいしね」
「そうだな、ありがと。じゃあ真昼とかにも声かけとくよ」
「うん、それじゃあお願いしようかな。それじゃあ今日の夜よろしくね」
そう言って手を振ってどこかへ行ってしまった。
あと20分くらいか……。
よし、あと1個作るか!
できた……。よし、これで時間は経ったかな……。
おや?まだあと10分もある。
どうやら10分で作ってしまったらしい。
何しよう……。もう1個作っちゃう?そんなときだった。
「よう京!何して……てええ!!お前どうしたんだ?!」
手をあげて近づいてきたと思えば、大声で驚きを表す。いや、俺は芸術作品をだね……。
「いや、暇だったからなちょっと作ってた」
俺がさっきの2人と同じように答えた。
またすごいって褒めてくれるのかなぁ。
「いや、お前どうした?!病んでんのか?!」
それは俺の予想からは正反対の言葉だった。
病んでる……。たしかにそうなのかもしれない。
そして、郷田はそのあと信じられないようなことをした。
俺の作った城1号2号3号を踏みつぶした。
「おい!何してんだよ!」
俺の芸術作品をつぶした?!何してるんだ?!
「目を覚ませ!現実から逃げるな!お前は1人なんかじゃない!」
「はっ!」
俺は郷田の熱のこもった言葉に目を覚ました。
やっぱり持つべきものは親友だよな。
「あ、郷田、夏休みに俺や真昼とかも一緒でプールに行こ……」
「行く!もちろん俺も行くぞ!やっぱり持つべきものは親友だな!」
俺は郷田と肩を組みながら、笑顔で城の破壊作業を続けた。
うん、持つべきものは親友だよな!
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