第203話 絶景
なんだろう……。
体が動かない……。
俺は、死んだのか?
まあ、詳しい高さまではわからないけど、きっと崖か何かから落ちたんだろう。
きっと死んでるんだろうな。
後頭部には何やら柔らかく、枕みたいな感じのものがあった。
今日起きてたことが全部夢でしたー!みたいなことにならないかな?
もし夢なんだったら、死なずに済んでたのかもしれないな。
まあ、この数ヶ月間は毎日が天国みたいな日々だった。
友達もたくさんできたし、ものすごく楽しかった。
楽しかったなぁ……。
俺の視線の先には光があった。
なんだろう。天国への入り口とかなんかなのか?
その光源は色々なところに動いたり、隠れたりしている。
そして、隠れたときには、目の前には大きな山のようなものが見える。
まるでおっぱいみたいだ。
いい眺めだ。
「ん?」
なんだか、俺の頭に何かが当たったような気がした。
すると、さっきまで枕の役割を果たしていたものが突然動き出した。
「ゔぞ……。おきだの……?」
そうして、俺の前に見知った顔が現れた。
さっきまで一緒に肝試しをしていた一ノ瀬だ。
なるほど……。結局、守れなかったのか。
最後くらいカッコよく決めようと思ってたのなぁ。
「くる、み、も、しん、じゃった、のか?」
俺は喋ろうとしたのだが、なかなか喋れない。
死者って喋りにかかったりするのかな。
「ちがうよ、生きてるんだよ!私たち!」
「え?」
今なんて言った?聞き間違いか?生きてるって聞こえたんだけど、聞き間違いか?
「京くんが守ってくれたおかげで、私たちは生きてるんだよ」
「マジ、で?」
俺が聞くと、一ノ瀬は今まで見せたことがないような笑顔を見せた。
「マジだよ。ありがとね、私を助けてくれて」
なんの光なのかはわからないが、一ノ瀬のとても綺麗な笑顔が見えたとき、心の底から思った。
よかった……。俺はこの子の笑顔を守ることができたのか。
「どう、いたし、まして。帰る手段って、見つけた、のか?」
そう、この手段を見つけない限り、俺たちは結局生きることができると言えるわけではない。
まあ、どのみち体が動く気配すら見せないんだけど。
「それがさ、私たちって意外とバカなのかもしれないね。スマホのライトがあったんだよ」
「あ……ほんとだな」
そうだった。肝試しといえば懐中電灯!みたいなノリがあって、スマホのライトというのに気づかなかった。
「で、京くんに膝枕してる間、いろんなところを照らしてみたんだけど、階段みたいなのがあったから、そこから帰れるかもしれない」
「ひ、膝枕?!」
とっさに出て来た言葉だからだろうか。
素直に喋ることができた。
ってことは……、俺は膝枕をされていて、この目の前にあるおっぱいみたいな山っておっぱいだったの?!
今思えばすごいボリューム!
てか、なんかだんだん回復してきた。体は動かんけど。
「それじゃあ、そろそろ行くか?」
俺が一ノ瀬に向かって言う。言っているが、目の前にあるのは、ビッグパイなので、おっぱいに向かって喋ってるみたいになった。
「動けそう?」
一ノ瀬が聞いてくる。顔は見えないけど。
おお、おっぱいが喋ってるぞ!
やばい、頭がおかしくなってきた。
「いや、動かない。できれば補助を頼みたい」
俺が素直に言うと、一ノ瀬は少し笑ってから言った。
「それじゃあ、残り5分だけ、私の膝枕で癒してあげようではないか。それから出発しよっか」
「そうだな……。それなら、お言葉に甘えて」
そうして俺は5分間の間、目の前のパイパイを鑑賞した。
そして、その間に一ノ瀬が言った。
「あ、それと、明日のキャンプファイヤーさ、まっひーと愛月ちゃんと3人で考えた結果、私が京くんと踊ることになったんだ。せっかく他の人の誘いも断っちゃったわけだし……。森木京さん、もし明日動けそうだったら私と踊ってくれませんか?」
「よろこんで……」
なんで勝手に決まってるんだよ!と言いたかったが、なんか一ノ瀬の勢いで言ってしまった。
てか、言う順番逆じゃない?
なんかセリフ的に、一ノ瀬が王子様で、俺がお姫様みたいな感じになってない?
おーい!俺男なんですけどー!
そんなことはなるべく考えることなく、俺は目の前の絶景を残りの時間をフルで堪能した。
いや、マジですごいから!
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