第199話 はめられた

出発し、俺と一ノ瀬は横並びで歩いていく。


懐中電灯を持っているのは一ノ瀬だった。


やばい、めっちゃ怖いんですけど!


お化け屋敷みたいだなと思ったらめちゃくちゃ怖くなってきたんですけどお?!


自分のことで精一杯の俺は、この時向けられてた視線には気づいてはいなかった。


出発して少し経ち、後ろを振り返っても誰もいなかなっていた。


俺の心臓の鼓動が早くなるのがわかる。


一ノ瀬と2人きりでいて、なんだかラブコメみたいだな。もしかしたら俺たちもアニメみたいな展開が……。


みたいなドキドキと、周りに誰もいない。お化けがものすごく怖いというドキドキ。


やばい、はやく帰りたい。


「ねえ、京くん、もしかして……肝試しとか苦手なタイプなのかなぁ?」


ニヤニヤしながら聞いてくる一ノ瀬。


うん、やっぱこいつ最近性格悪くなったぞおい!


「べ、べつに。来未こそ実はお化けとかが苦手なんじゃないか?」


できる限り平静を装って言う。


言われるだけだと思うな!たまには反撃もしないと!


「そうなんだよね。実はお化けが昔から苦手でさ。もし良かったら、手、つないでもいいかな?」


えっ?!


思わず口から出そうになって慌てて止めた。


あのなんでも完璧そうな一ノ瀬がお化けが苦手だと?!


あっ、でも、実は雷が苦手だってこともあったし、本当なのかも。


そして、俺もお化けが苦手だ。


これは手を繋いでも、一ノ瀬がお化け怖いから仕方なくってことにできるんじゃないか?


きっと俺がお化けが苦手だということを知れば、また弄られてしまう。


うん、これは完璧だ!


「ああ、いいぞそれくらい。お化けが怖いのは仕方ないからな」


うん、お化けは怖いもんね。


俺はなるべくお化けなんて怖くないですよって感じの雰囲気を出しながら、手を差し出す。


よし、これで安心して肝試しを終えることができそうだな。


しかし、一ノ瀬は全く手を出そうとしない。


「まあ、お化けが怖いっていうのは嘘なんだけどね!」


「は?」


「いや、なんかさっきから京くんがおどおどしてるから、てっきりお化けが苦手なのかと思ってね」


「…………」


「そして、手繋いであげようかって聞いたら、京くんがわかりやすく嘘つくからさ。たいへん面白ございました。それじゃあ、もう一回だけ聞いてあげよう。手、繋いであげようか?」


あれ?全部バレてたのか?


うん、絶対ばれてたな。一ノ瀬に隠し事とか100年早かったな。


でも、ここで甘えてしまってはまた弄られるだけだ。


「大丈夫だ。お化けなんて全然怖くなんてないし」


ここまできたら負けるわけにはいかない。


怖いけど頑張る!


「そっかそっかー」


ぐっ、完全に遊ばれてる。


「もう、行くぞ」


「はーい♪」


そうして再び歩き出し……。


カチッ。


この場が真っ暗になった。


「えっ?」


周りを見るが、何も見えない。


「あれ?懐中電灯壊れちゃったかも。流石にこれは怖いね。ひとまず手、繋ごっか」


近くから聞こえるが、場所は全くわからない。


「そうだな。流石にこの真っ暗の中肝試しってのはちょっと怖すぎる」


そして、俺は手を動かし、一ノ瀬を探す。


「ふふ……」


そんな声が聞こえた。


その直後、カチッと音がして、ここ周辺が明るく照らされた。


「とうとう白状したな!お化けが怖いと!」


っ!完全にはめられてしまった。


全て計算済みだったということなのか。


やはり恐ろしい一ノ瀬来未。


「ささ、いくよ。お化けなんて怖くない京くん」


ダメだ。俺肝試しが終わる頃には体も心もボロボロになってるかも。


俺は歩き始めた一ノ瀬の後ろをついていった。

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