第198話 ペア+お化け

「おう、よろしくな」


俺の前にいたのは黒髪の女性だった。


昔はとても優しい人なんだなぁと思っていたが、最近ちょっと俺への態度が変わりつつある女性、その名を一ノ瀬来未という。


まあ、お化け役のボッチ以外なら誰とペアでも良かったんだけど。


4人に嫌いなやつはいないし。


そして、俺たち以外にも一組のペアができていた。


郷田・村瀬ペアだった。


ヤンキーの郷田とギャルの村瀬。


意外と相性がいいのかもしれないな。


そして、お化け役になってしまったのは、カレー作りで熱を出して回復したばかりの真昼だった。


おつかれさまです……。


真昼は膝から崩れ落ちていた。


うん、気持ちはわかるけどどうしようもない。


神様が味方してくれなかったのかな。


「はーい!お化け役を引いた人はしゅーごー!」


さすがにかわいそうに思えてきてしまった。


俺たちからしたら普通に先生からの招集に聞こえるが、きっとお化け役にあたってしまった人からすれば、「クジでお化け役を引いた負け犬どもはさっさとこっちに集まれ」みたいな感じに聞こえてるんじゃないかな。


多分俺ならこんな感じに聞こえる。


真昼は涙目になりながらも集合場所へと歩き出した。


どんまい真昼。



俺たちが出発するのは真ん中くらいなので、まだ出発まで時間がある。


真昼を除いた4人は雑談をしていた。


ちなみに、真昼はさっき暗闇へと消えていった。


「なぁ、今からペアの交代とかできないのかよ」


「全くの同感。あんたとけーちゃんが変われば完璧だったのに」


郷田と村瀬は言い合っていた。


やっぱり相性最悪なのか?


俺と一ノ瀬はそんな2人を見て少し笑みが溢れた。


その後も10分ほど喋った。


「そろそろ並ぶか」


「そうだな」


俺たちはそろそろ順番が回ってくることを確認し、出発地点に向かった。



2分ごとにペアが出発していくため並び始めてからも10分ほどかかった。


俺たちの前に郷田と村瀬が懐中電灯一つを持って出発した。



2分って意外と長いんだな。


俺たちが出発することには郷田たちの姿は見えなかった。


「そろそろいくか」


「そうだね、レッツゴー!」


かなりノリノリの一ノ瀬だ。


俺はかなり心臓がドキドキしてるんだけどな。


林間学校の肝試しっていうのが楽しみなドキドキとお化けが苦手で恐怖のドキドキで。

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