第191話 共同作業 1ー1

カレー作りが始まった。


役割分担としては、俺と真昼が色々と切る担当。そして、一ノ瀬と郷田がご飯担当。そして、村瀬が煮込んだりする係だ。


それぞれ会話ができない程度に少し離れている。


俺たちはそれぞれ別れて作業を開始した。


俺と真昼は野菜などがたくさん置いてあるスペースに向かう。


周りにも俺たちのように野菜などを切る担当の人たちがいた。

 

まな板や包丁、そして切るものを用意し終えたので作業スタートだ。


最近では俺たちもよく料理をするので、野菜や肉を切ることで特に難しいことなんてない。


2人の間に食材を置いて、切れたら次のやつって感じにしている。


チラッと真昼の方も見てみたが、問題なく切れている。


思ったより早く終わるかもしれないな。


俺たちはあった野菜の半分ほど切り終えた。


このままいけばあと5分くらいで終わりそうだ。


そんな時だった。


「ねえ京くん、せっかくの共同作業だし、どうせなら一緒に切ろうよ」


こんなわけのわからないことを言い出したのは。


「は?」


純粋にこの状況についても頭が回らなかった。


今なんて言った?


なんか、イッショニとか聞こえたんだけど、気のせいなのかな?うん、きっと気のせいだよな?


だって、普通に考えても理解が追いつかない。


野菜を一緒に切るってどういう状況なのそれ。


少し考えた。


その中で、俺に浮かんだこと。たしかにこれなら意味があっていると言えなくも……ない……のか?


唯一頭に浮かんだこと。でも、それ以外考えられないし、きっとそれだ。


俺は自分の切っていた野菜を半分に切って、その半分を真昼に渡した。


きっと、共同作業ってことは同じ野菜を2人で切る。それは半分ずつ切るってことなんだろう。


それなのに、それなのに……、なんか「は?」みたいな顔して真昼が俺の方を見ている。


あれ?間違っていたのかな?


なんか真昼の顔がだんだん険しくなってきたんですけどー!


どどどどどどうしたらいいんだ?


謝ったらいいのか?


でも、なんで謝ったらいいのかもわからないし、どうしたらいいんだ?!


真昼は大きくため息をつく。


あれ?そんなにもやばいことしちゃったの?


「いい京くん?」


「はい?」


「今から、私が本当の共同作業ってことを教えてあげるから、これからは私の言うことちゃんと聞いてから行動してね。文句は受け付けないからね」


「は、はい……」


どうやら、怒らせてしまったのかもしれない。


ここは素直に聞いておいた方がいいだろう。


すると、真昼はニコッ笑って言った。


「それじゃあ、私と京くんの共同作業のスタートだね」

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