第188話 勉強クイズ 前

「それじゃあこれから勉強クイズを始めまーす!」


「「「「イエーーイ!!!!」」」」


このノリにも少し慣れてきて、クイズが替わろうとしていた。


『勉強クイズ』。そのまんまんだ。


今までに習ったことや、国語ならちょっと知らなさそうな漢字を出していくクイズ。シンプルだ。


「それじゃあ、初めは国語ね!ちょっと知らない漢字!はい、これ!」


『鯏』


Aくんはそう言って漢字の書いた紙をみんなに見せる。


見た感じでなんとなく魚関係なんだろうなとはわかるんだが、『鮭』みたいによく見るような漢字ではないし、全く分からない。こくごきらい。


バスの中でも知ってる魚の名前を叫ぶ奴らが数人いた。それで当たったら奇跡だな。


そんな中、このクラスでは期末テスト1位、学年で2位の学級委員長が口を開いた。


「あさり」


一ノ瀬が言ったので皆そっちに視線を向ける。そして視線はAくんの元へ。


「せいかーい!さすがは一ノ瀬さん!」


「すごいねー!さすがは一ノ瀬ちゃん!」


さすがは我らが学級委員長!勉強だけでなく、クラスの男子、女子のどちらからも人気なんだよなー。


もし、俺がこのあさりって感じを答えられた場合。


「ふっ、さすがはキモオタ」


「キモッ」


絶対こんなな感じの言葉が帰ってくる。


ほんとに悲しい現実だよな。


「じゃあ、次の問題!教科は数学!」


そう言ってAくんは式の書かれた紙を見せる。


『(2481+3459)÷9÷4÷5÷11= 』


と書かれていた。


ほう、この問題でAくんという人が少しわかった気がする。性格が悪い。


一見、このように割る数がいっぱいあった場合、答えが1の場合が多い。入試でもややこしい問題の答えが1なんてことはよくある。


しかし、このたし算している2数の和を素因数分解してみたら、一個だけ素数が残っている。


うん、かなり性格が悪い。


この問題を見た瞬間、クラスの数人は「いち!」と言っていたが、そんなに簡単なわけがない。そんな問題なら誰が一番早く言えるか勝負になってしまうからな。


まあ、俺には答えがもう出ているんだが。


しかし、やっぱり答えるのって言うのは少し怖い。


さっき考えたときみたいなことを言われたら立ち直れなくなっちゃうし。


まあ、いっか。どうせ勝っても得なことって特にないし。


みんな必死に頭の中で考えている。


俺はもう答えが出ているため、暇つぶしに目を閉じていた。


「あああああああ!!!イライラしてきたー!おい京!答えわからないのか?!」


郷田がイライラしたのだろう(いや、自分で言ってるし、本当にイライラしているんだろう)。俺に聞いてきた。


聞かれたわけだし、俺は指を3本立てて、答えが3だということを伝える。


「おい!答えは3か?!」


郷田はすぐさまAくんに聞く。


「は、はい!」


Aくんはしっかりと返事をする。合っていたみたいだ。


「お前すげえな!目閉じてたってことは結構前から分かってたのか?」


「ま、まあ」


「す、すげえ!」


「ほんとだな!あの森木が数学得意だとは!」


「まあ、森木は中間、期末共に数学は100点だったからな!」


俺たちの担任である五条先生は勝手に人の成績を公表しやがった。


「「「「「えええええええ!!!!!」」」」」


なんか、いつもみたいな殺意の視線ではなく、初めて普通に注目されてしまった。

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