第184話 郷田と村瀬

集合場所に着いた俺たちは、先生に出席を伝えに向かう。


先生の前には数人の列ができており、その中には村瀬もいた。


村瀬は俺たちを見つけたのだろう。自分の並んでたところから抜けて、俺たちの所に来た。


「おはよー。楽しみだね」


「おはよ。そうだな、楽しみだ」


こんなに楽しみな林間学校は生まれて初めてだ。


そして、そんな俺たち(特に俺)に熱い視線(殺意)が向いてるが、3ヶ月ほどこの生活をしていれば普通に慣れてしまった。慣れって怖いね。


そんなわけで、周りからの熱い視線は無視する。


数分後、先生の元へ行き、主席を伝える。


すると、先生から集合して座って並んでおいてくれと言われた。


しかし、視線の先には数人しか並んでいなかった。


まあ、俺たちは不良ではないので、素直に従う。


俺は自分の並ぶべきところに座ったのだが、真昼と村瀬は荷物だけを置いてすぐに俺の元へくる。


流石に学級委員長の一ノ瀬は真面目に座っていた。えらいえらい。


そして、俺たちは軽くおしゃべりを始める。


「おう、京!おはよ!」


そう言ってこっちに向かってきたのは、俺の親友の郷田強。


郷田は見た目はヤンキー(いや、中身もヤンキーだな)だが、優しい心も持っていて、俺がこの学校で初めて(唯一)できた男友達である。


俺たちの班ができたのも、郷田が計画したものだった。


おかげさまで、テストの際、一ノ瀬に数学で勝ったのに、その勝利報酬である『ひとつ相手に命令権』を使ってしまった。


まあ、別に使い道も思いついてなかったんだけど。


「おはよ」


俺も返す。


挨拶を返すのって気持ちいよな。中学生の頃は誰一人挨拶してくれなかったんだよ。


「宮下ちゃんもおはよ」


「うん、おはよー」


真昼と郷田も挨拶を交わす。


しかし、俺は以前からずっと気になっていなかったんだが、やっぱりかと思うことがあった。


郷田は村瀬のことが嫌っているのかもしれない。


だって、郷田って村瀬のことは『ちゃん』付けで呼ばないし、今回の班決めの時だって、郷田が班に入れてくれと言ったのは真昼と一ノ瀬だけだった。


何故だか村瀬を避けている気がする。


ギャルみたいな子が苦手なのかな?


それならそれで笑ってしまいそうになるが。


ヤンキーのお前が言うな!ってな。


気になるけど、なんか聞いちゃいけない気もするんだよなあ。まあ、勘なんだけど。


そんなわけで、郷田を交えての会話が始まる。


会話の中で村瀬も郷田もたくさん発言はしているが、お互いに目も合わせなかった。


ん????!!!!これ、何かあるな?!


あ、これ勘です。

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