第176話 目の前にヤンキー

「今から行ったら白雪さんも一緒に買い物できるんじゃないか?」


食事中に出した俺の提案に皆が賛成し、今みんなで電車に乗っていた。


白雪さんはバイトの用意なども手に持っている。


今の時刻はまだ12時になったところだ。


白雪さんも1時間くらいは楽しめるんじゃないかな。


女子って買い物好きだって聞いたことあるし。少なくとも真昼と一ノ瀬は好きだ。


ついでにあいちゃんの欲しいゲームソフトも買えばいいし。



さて、どうしようか。


今の状況を簡単に説明すると、前に郷田みたいなヤンキーが数人座っている。


そのヤンキーたちは今にも俺に殴りかかってきそうな雰囲気を漂わせている。


まあ、わからなくもない。


なぜか?俺たちの座っている席順に問題があった。


右から一ノ瀬、真昼、俺、あいちゃん、白雪さんだ。


すいません。でも、俺が自分から真ん中に座ったわけではないんです!信じてください!


そもそもあいちゃんは俺の手を握ってるし、真昼は俺の袖元をつまんでいる。そして、あいちゃんと真昼が何故だか睨み合いをしていた。


流石に子供すぎる……。


と、まあこんな感じなわけで、勝手に俺が真ん中に座らせられたと言うわけなんです。


しかし、電車中でものすごく姿勢良く座る白雪さんとニヤニヤしながらこっちを見てくる一ノ瀬。


ダメだ……。助けを求められる状態でもない。てか、一ノ瀬は助けられるだろ!絶対この状況を楽しんでるだろ!


昔までのめちゃくちゃ優しい一ノ瀬はどこに行ったんだー!


俺は出来る限りの行動(なるべく前を見ない)をとる。


前は見ない前は見ない前は見ない前は見ない前は見ない前は見ない前は見ない前は見ない……。


俺が心の中で唱え続けていたら、突然電車内が揺れる。


慣性の法則により、真昼が俺の方に倒れてきた。自然と俺に倒れかかる。


それにびっくりした俺は、つい前を見てしまう。


あ…………………………………………。


なんか、前の人から怒りマーク見たいなのが見えるんですが幻覚かなにかかな?うん、きっとそうだ。


俺は再び下を向く。


大丈夫、前には誰もいない。大丈夫前には誰もいない。大丈夫前には誰もいない。大丈夫、……。


またしても心の中の世界へと向かう。


そんな中、何か手が引っ張られるような気がした。


「京くん、行くよ。ついたよ」


「お兄ちゃん、行こー」


「お、おう」


どうやら、駅に着いたらしい。


俺は素早く電車を出る。


そして、電車の扉が閉まった。


俺は電車の出発を見届けたあと、小さくお辞儀をした。


「よし、行くか」

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