第160話 可愛すぎる
部屋の中に入ると、白雪さんは大人しくベッドの上にいた。本気で俺が運ぶと思っていたのかもしれない。
パジャマは上下灰色。高校生男子とかが着てそうな感じのやつ。俺とほぼ一緒だし。
もう、イメージ通りで何も言えねえ。
アニマルパジャマとか着たら、学校中の男子を虜にできそう。
「大人しく寝ておいてください。寝ている間に変なこととかしないんで」
寝ている間に俺に襲われるという心配をしているかもしれないので付き添えておいた。
「は、はい。心配はしてませんよ」
「あ、そうですか」
なんかちゃんと言われると照れてしまう。
「では、愛彩のことをお願いします。おやすみなさい……」
白雪さんはそう言って、布団をかぶった。
よほど体調が悪かったんだろう。3分にも満たない時間で完全に眠りについたようだ。
「あいちゃん、ご飯はいつも何時に食べてる?」
なるべくこの家の生活リズムに合わせた方がいいと思ったのであいちゃんに聞いた。
「いつもは6時ぐらいになったら食べてるよー」
元気に返事をする。元気なのはいいんだけど、この状況ではちょっとダメなんだよなー。
俺は唇に人差し指を当てて言った。
「しー。今日お姉ちゃんちょっと体調悪いらしいから、大きな声は出さないようにね」
俺は優しい口調で注意をする。
素直なあいちゃんはこくこくと頷く。うん、いい子だ。
今の時間はまだ4時半。6時まではまだ十分に時間がある。
「あいちゃん、6時になるまで遊ぼっか」
俺が言うと、あいちゃん大きく頷く。なるべく声は出さないようにしているんだろう。めっちゃ可愛いし、めっちゃいい子。
「何する?」
「トランプ!」
我慢できなかったかー。でも、可愛いから許すー。
こうして始まったトランプ大会!
結果だけを言ってしまうと、5回やったら4回は負けてしまった。
だが、これは俺が弱いからと言うわけではない。
正直に言ってしまうと、本気を出してしまったら、間違いなく全勝していただろう。
わざと負けてあげたのだ。
力的には真昼といい勝負だった。
ババ抜きなんてわかりやすい例。
俺があいちゃんの手札から一枚取るとき、ババに手が触れると突然目がキラキラする。そして、離れると分かりやすくショックを受けた顔を見せる。
その結果、俺が勝ったら『くそーっ、もう一回!次こそは!』、俺が負けたら『やったー、もう一回!次も勝つぞー!』だ。
相手に勝たせるのもかなり難しいんだよな。
でも、あいちゃんみたいな可愛い子が相手なら、いくらでも負けてあげられる。
うん、可愛いは正義だ!
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