第157話 理想の妹ちゃん
白雪
そして顔だけをこっちに向けてくる。やばい、めちゃくちゃ可愛い!俺の妹と違いすぎるだろ!
「あい!ダメでしょ!ちゃんと朝言った通りにご挨拶して」
白雪さんはあいちゃんを俺から引き剥がし、あいちゃんをしっかりと立たせる。おかんか!
「し、しらゆきあいです。せ、せんじちゅはありがとうございました」
『先日』……言えなかったかー。でも、可愛すぎる!
あいちゃんの肩に手を置いて、白雪さんも「ありがとうございました。それと、ほんとうにすいません」と謝ってきた。本当におかんか!
ん?でも、何でずっと……。
俺は「いえいえ」と軽く返事を返す。
こうして玄関で挨拶が終わった。
「あの、森木さん。もしこの後予定がなければ晩ご飯までどうですか?」
「え?いいんですか?白雪さんに迷惑でなければ」
「やったー♪お兄ちゃん、ご飯できるまで一緒に遊ぼー♪」
そう言って、あいちゃんはまた俺に抱きついてきた。
やばい。俺の理想の妹像……これ!
だって、俺の妹なんて、口を開けば「死ね」だの「殺すぞ」だの……。
あいちゃんと比べたら、天と地の差。
「いいよ。いっぱい遊ぼっか」
「やったー♪いこーお兄ちゃん♪」
ああ……『お兄ちゃん』……。いい響きだ!
あいちゃんは俺の手を取り、リビングの方へと早足で進んでいく。
その時、俺は白雪さんに少し違和感があった。
しかし、あいちゃんに引っ張られ、白雪さんは見えなくなっていた。
「ねえ、お兄ちゃん♪なにして遊ぶー?」
ニコニコしながらあいちゃんが言う。
「ん?何でもいいよ。あいちゃんは何かしたいことある?何でもするよ」
「えっとね……じゃあ、トランプと、UNOと、全部持ってくるー」
そう言って部屋の隅にある箱の方へと向かう。
「あいが迷惑かけてるみたいで本当にすいません」
隣から白雪さんが小声で言ってきた。
そこで、俺はさっきからずっと思っていたことを言うことにした。
「大丈夫ですよ。それより、白雪さん、もしかしてたい……」
「大丈夫です」
俺の言葉を遮るように言う。この言葉で確信した。
白雪さんは今体調がかなり悪い。
「無理せずに休んだらどうですか?」
「何のことでしょう。私はだいじょう……あっ」
俺から離れようとしたのだろう。しかし、体は言うことを聞いてくれなかったみたいだ。
体だけが前に進もうとしたため、体勢を崩してしまう。
俺はとっさに彼女を支える。もちろん胸には触れていない。
「白雪さん……?」
俺は優しい口調で彼女に聞く。名前を呼ぶだけで言いたいことは全部伝わっただろう。
「はい……。今日は少し体調が悪いです……」
白雪さんは自分の身体が言うことを聞かないということを理解したのか、ようやく諦めてくれた。
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