第155話 ぐ、偶然……ですよね?

木曜日、HRも終わり、俺は教室で白雪さんを待っていた。


真昼たちにはなんとか納得してもらった。かなりキツかった。


今日は妹さんと会うことになっており、明日はバイトの面接だ。放課後白雪さんと行くことになっている。


「すいません、待たせてしまいましたか?」


白雪さんが若干顔が赤く、額に汗を垂らしながら言う。きっと白雪さんのクラスのHRが少し伸びてしまって、走ってここまできてくれたのだろうか。


なんていい子だ。


「全然大丈夫ですよ。それじゃあ行きましょうか」



俺たちは教室を出る。


廊下を歩いてる間に彼女の呼吸もだいぶ落ち着きを取り戻した。顔は依然として赤いが。


校門出ると右と左に道がある。


俺が住んでるマンションは右側にある。


そして、左側に歩いていくと駅がある。


だから、基本的にはほとんどの人が左側へ行く。


どうせ駅側だろうと思って俺は左側へと歩き出した。


「あ、あの、森木さん、私の住んでるところはこっちです」


そう言って右側を指す。


え?じゃあ、もしかしたらご近所さんなのかもしれないな。


俺は白雪さんの隣を歩く。


「家、この辺なんですか?」


「はい、あと10分ぐらいで着くと思います」


あら偶然、俺も自分のマンションまで10分ぐらいだ。


「そうなんですか?俺も家この辺なんですよ。偶然ですね」


「そうですね」


そう言って沈黙が走る。


ダメだ、白雪さんとは全く話が続かない。


「映画館のバイトってどんなことするんですか?」


なんだか気まずくなってしまうので、適当にバイトの話に持って行った。


「そうですね……。入場ゲートでする仕事や、ジュースなどを渡したりする仕事、その他には掃除などですね。大丈夫ですよ。そこまでしんどくないですから。すぐに覚えられますよ」


あれ?たまたま……だよな?


「そ、そうですかね。まあ、まだ受かってすらないですけどね」


んん?!た、たまたま…………ですよね?!


「大丈夫ですよ。森木さんのような方が落ちるはずがありません」


「そ、そうですかね……」


そんなはずないよな?!そんなはず……そんなわけないよな?!


「はい、着きましたよ。私と妹が住んでるのはここです」


俺は肩をびくりと動かしてしまった。


彼女は大きな建物の前で立ち止まってそう言った。


それはとても大きな一軒家と言うわけではなく、マンションのように見える。


どうやら俺は彼女と同じマンションで住んでいたようだ。

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