白髪の女性編

第149話 白髪の女性

翌日の昼休み。俺は郷田と掲示板に来ていた。


今日の昼休みに、一学期期末テストの高得点者30名の名前と点数が張り出されることになっていた。


中間テストの時は特に勉強もしていなかっため、どうせ30位なんて無理だと分かっていたので見に来てはいなかった。


でも、前回32位の郷田に3点しか負けていないので、もしかしたらという期待を込めて来ていた。


一ノ瀬の順位も気になるしな。あれだけ勉強頑張ってたんだからきっと1位なんだろうな。


「いやー、楽しみだな!中間の時はあとちょっとだったからな。今回はきっといってるはずだ。そうでなきゃ、テスト前の努力が水の泡じゃねえか」


「いや、普通に32位でもすごいと思うぞ」


「いや、32位だったら掲示板に載らねえだろ?じゃあ、誰も俺のことを賢いと思わないわけ、俺こんな見た目だし。で、勉強できるとみんな分かったら、俺の周りにも可愛い子たちが来てハーレム勉強会とかできるかも」


「発想がきもいな。まあ、俺も実際最初はだいぶビビってたからな」


「やっぱりか……。みんなそう思ってるんだよな」


わかりやすくショックを受けていた。


「まあ、俺、今は怖いなんて思ってないけどな。ちょっと怒らせたらめんどくさいやつって感じだ」


俺は親指をたてて、グッジョブを表す。


「それ慰めてるのか貶しているのか……。お、あそこだ!行くぞ京!」


前に掲示板が見えて、郷田のテンションが若干上がる。


掲示板の前にはかなりの人で賑わっていた。


そこには一ノ瀬の姿もあった。真剣に掲示板の方を見ていた。


郷田は掲示板の方に走っていたので、1人残された俺は一ノ瀬のもとに向かった。


「どうだった?」


「…………」


一ノ瀬は返事もせず、ずっと掲示板の方を見ている。いや、見ているというよりかは、睨んでるように見える。


俺も掲示板の方を見た。



1位 白雪小春  476点

2位 一ノ瀬来未 464点

3位 佐藤賢治  461点

4位 ………………………

5位 ………………………



「まじか……」


まさかの1位と2位の間に12点。


誤差なんてものじゃない。


一ノ瀬が悔しがるがるのも無理はない。


一ノ瀬の方を向くと、一ノ瀬は心を折られた……ではなく、目に炎が見えた。


「よし、二学期中間テスト、さらに勉強しなくちゃね」


俺はこんな一ノ瀬を見たのは初めてかもしれない。


ものすごく、心の底から『かっこいい』と思ってしまった。


「おお一ノ瀬ちゃん!2位すごいね。てか京、俺たちランキングに載ってたぞ!俺が26位で、京が27位だ!」


「おお!まじか!やったな」


子供みたいにハイタッチをする。


「でも、白雪さん、さすがにすごすぎだろ。今回のテストで476点とか。京も文系で90点取れたら、白雪さんとも張り合えるかもな」


「はは……。てか、白雪さんってそんなすごい人なの?」


正直、白雪なんて名前は初めて聞いたので全く知らなかった。


「いや、白雪さんは完璧だね。一ノ瀬ちゃんは元気もあって、仲良くできる美人さんだけど、白雪さんはなんていえばいいのかな……。芸術作品みたいな?とにかく美しいって感じだし、近づくのもちょっと躊躇してしまう感じ」


「なんだよそれ。さすがに盛りすぎだろ」


「いや、見れば分かるって!あ、ほらあそこの白い髪の人」


俺は掲示板の集団をかき分け、女性を見た。


「…………」


「…………」


目があってしまった。


しかも、見たことがないわけではなく、昨日見た。


そこには、昨日俺がナンパから救ってあげた白髪の女性がいた。

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