第150話 お誘い

「も、もしかして、昨日助けていただいた方でしょうか?」


白髪の女性が俺に聞いて来た。


間違いない。俺が昨日ナンパから救った女性だ。


「おそらくそうだと思います……」


「昨日は本当にありがとうございました」


そう言って彼女は頭を下げる。


「えっ?どういうこと?!あの白雪さんが頭下げてるぞ」


「てか、それ以前に普通に人と喋ってる。先生以外の人と話す時は、ほとんど相手にしてもらえてなかったし」


外野がうるさい。てか、そんな人なの?!


昨日も俺と普通に話してたけど。


「あの、できれば今日の放課後、少しお時間いただけないでしょうか」


外野のいる状況では話しづらいのだろう。外野の話を聞く限りでも人見知りとかなのかな?


俺には友達と遊ぶ予定なんてあったこともないので断る理由もない。うう……悲しい。


「はい、俺は大丈夫ですよ」


「それでは、HRが終わったら、教室で待っておいてください。そこから喫茶店にでも……」


「はい、わかりました」


それで会話は終了。


俺たちは別れると、一ノ瀬と郷田が近づいて来た。


「おい京、白雪さんとどんな関係なんだよ?!お前今の状態で満足できないとかバチ当たるぞ」


郷田の言いたいことがいまいちわからなかった。


「いや、昨日出かけた時にちょっと色々あってだなぁ……」


「なんだよ色々って!なあ、俺たち親友だろ?話してくれよー」


「私もちょっと気になるかな。さあ、京くん、昨日何があったんだい?」


一ノ瀬までかなり食いついてきた。


え?白雪さんってそんなに喋るだけですごい人なの?!


郷田だけならなんとかなりそうだが、一ノ瀬を相手にしてしまったら勝てる気がしない。


俺たちは掲示板の集団から離れた。


そして、2人に説明した。


「昨日ちょっと出かけてたんだけど、その時にその……白雪さん?がナンパされてて、俺に助けを求められちゃって、まあ助けた。って感じかな」


彼女の妹探しもしたが、5分もしたかどうかのことだし、特にこれを言ったところで何もないので黙っておいた。


「いや、ナンパから救ったって、軽く言ってるけど、すげえなお前。ちょっと見直したわ」


「うんうん。普通に感心してしまったー」


「そりゃどうも。ほら、早く飯食わねえと昼休み終わってしまうぞ」



放課後になった。


今日、俺たちのクラスのHRは長かった。


HRも終わり、クラスのみんなは解散する。


今日は真昼たちにも先に帰ってくれと言っているので問題ないだろう。一応一ノ瀬に「あいつらを任せた」と若干押しつけみたいになったが言っておいた。


クラスの半分くらいが教室を出た頃だろうか。


俺は待っていろと言われたので席で座っていたら、白雪さんは教室に入ってきた。


「も、森木さん、それでは行きましょうか」


俺たちは一緒に校門を出て、喫茶店に向かった。


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