第129話 恐怖のジェットコースター

俺の声など聞こえるはずもなく(まあ、声に出してないから当たり前か)、ジェットコースターはガタゴトガタゴトと進んでいく。


はじめは平らな道を進んでいく。


これなら怖くないだろ?いやいや、この先が怖いんだって!


そう、俺の視線の前にはある。ジェットコースター最大の見せ場がある。苦手な人からすれば恐ろしい場所。そこに行ってしまうと、俺は死んでしまうかもしれない。


ガタンッ。今まで平らな道を進んでいたライドは角度を変える。


そう、頂上への道を進み出した。


ゆっくり進むライド。


ダメだ……。上がるにつれて恐怖が増していく。


ゆっくりゆっくり進むライド。


おい!早くしろよ!そんなにゆっくり進まれたら、ますます怖くなってくるじゃねえか!


さっさと落とせよ!


もう!早くしないと、恐怖でおしっこ漏らしちゃうじゃん!


そんなことは気にするわけもなく、俺を乗せたライドはゆっくりと進んでいく。


なんか、だんだん恐怖心より怒りの方が大きくなってるんだけど!


てか、なんで俺ジェットコースターなんかになってるんだ?


今思えば、確か俺って絶叫系苦手だった。


ああああああああああああああああああ!!!!!


やってしまった。


やばいやばいやばいやばい…………。


「京くん大丈夫?手繋いであげよっか?」


真昼は俺にだけ聞こえる声で言い、手を差し伸べてくれた。


まじで!めっちゃ怖かったんだよ。ありがたい。


しかし、口から出たのは、


「大丈夫だこれぐらい」


ああああああああああああああ!!!!!!!!!


つい意地を張ってしまったあああ!!!!!!!!


ほんとはおしっこ漏らしそうなんですう!


「そっか、わかった」


真昼は手を引っ込めてしまう。


ああああああああああああああああ!!!!!!!


もう、どうしようもない。


ゆっくりと進んでいたライドはとうとう頂上まで来てしまった。


もうどうしようもない!よし、覚悟を決めろ!


先頭ということもあり前がはっきりと見えてしまう。


ダメだ!怖いよお。少しずつ傾いていく。


やめてくれやめてくれやめてくれ……。


しかし、俺の願いも届くわけもなく、落ちていく。


「うわわわわわあああああ!!!!!!!」


「きゃああああ!!ははははは!!」


「ウヒェええええええええ!!!!!!!」


「きゃああああ!!ははははは!!」


「ウブブブブううああ☆¥#→2♪%ううう!!!」


ようやく速度が落ち着いた。


はあ、やっと終わったのか……。正直吐きそうだった。


頭が左右にぐらんぐらんして、吹っ飛ばされるかと思ったわ。


「……あ……」


俺には見えてしまった。2度目の上昇する場所が。


もうダメだ。俺はここで気を失ってしまうかもしれない。


2度目の上昇……。もう、考えることすら放棄していた。


ゆっくり進むライド……。


俺はもう気を失っているのかもしれない。


なにも考えることができない。


ん?俺の左手になにやら感触が。


向くと、真昼が俺の左手の上に手を重ねていた。真昼の顔が若干赤い。


「こ、これは、そう、私が怖いから!だから、手繋いでて欲しいな」


これは違う。だってあんなにはしゃいでたじゃないか。


きっとこれは、俺があまりにもビビっていたからだ。


俺の恐怖心を少しでも柔らげてくれているんだ。


恥ずかしい。普段なら立場が逆なんだけどな。


「ありがとな。よっしゃーーー!覚悟決めたぞ!さあこい!」


「うん!」


俺たちは2度目の頂上にきた。


そして、俺たちは真下へと落ちて行く。


しっかりと手を握る。


うん!怖くない!


「うわわわわあああああああああああ!!!!!」

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