第130話 メリーゴーランド
「わ、悪いな」
俺はベンチでぐったりしていた。
その原因はもちろんジェットコースターだ。
あまりにも迫力満点で、俺は今吐き気に襲われている。
「ううん、大丈夫だよ。でも、ごめんね。苦手だったなんて知らなかった」
デート中に女子に心配されるなんて恥ずかしすぎるだろ!
くそっ、でも身体が言うことを聞いてくれない。
5分ほど経っただろうか。
ようやく吐き気も治ってきた。
真昼をこれ以上待たせてもだしな。
「よし、そろそろ行くか。真昼、悪かったな。でも、俺を気にせず行きたいアトラクションあったら言えよ。でも、先に言っておく。絶叫系は無理だ」
絶叫系のアトラクションさえ行かなければ、なんとかなるだろ。
この時はまだ気付いていなかった。
まだ、まだもう一つこの遊園地に俺の苦手なアトラクションがあることを。
「うん!」
俺と真昼はゆっくりと歩く。俺のリハビリも兼ねて。
「あ!メリーゴーランド待ち時間0分だよ!せっかくだし乗ろうよ!」
本当に待ち時間が0分だったからなのか?なんかめっちゃ目が輝いてるぞ?
「お、おう。いいぞ」
メリーゴーランドが絶叫系なアトラクションなわけもないので特に断る理由もない。
俺たちはメリーゴーランドになることなった。
”チャラチャラチャチャチャチャラチャラ……”
何故だろう……。めちゃくちゃ恥ずかしいんだが。
いやまあ普通に考えたら、このアトラクションは俺たちみたいな高校生が乗るようなアトラクションではないことぐらいわかる。
若干入場ゲートでスタッフさんに笑われた気もした。
まあ、普通はそうだよな。
だって、俺たちと同じようにチャラチャラという音楽に合わせてゆっくりと動くこの……なんだ、馬に乗っているのはほとんどが、いや、全てが幼稚園児、もしくは小学校低学年といったところだ。
もし、そんな息子娘を見ている親になったとしよう。
息子が楽しそうにしているな。
あ、他の子たちも楽しんでるな。
あれ?なんだ?高校生か?なんで高校生なんかがメリーゴーランドに?ふっ。
うん、俺が親の立場だったら多分こう思うね。
よって、普通に考えて俺たちは笑われるような存在ということだ。
「京くん♪楽しいね♪」
なんだが、どうやら俺の隣で馬に乗って動いてる彼女は周りの目も気にせず、このメリーゴーランドというアトラクションを素直に楽しんでいるらしい。
いや、どこにそこまでテンション上がる要素あるの?!
まあ、こんな笑顔見せられたら、俺も少しはメリーゴーランドもいいなって思っちゃうけどさ……。
それにしても……、何分このまま動くんだよ?!
こういった特に取り柄もないアトラクションってどうしてこんなにも長いのだろうか。
1分ぐらい動いたらいいんじゃないの?
まあ、隣の方は2、3分経った今でも笑顔で楽しそうにしているんですけどね。
音楽がだんだんゆっくりになっていき、数分間動いていた馬はゆっくりと減速していく。
そして、止まる。
ようやく終わったらしい。
『みんなありがとう!また遊びに来てね!』
それと同時にアナウンスらしきものが流れた。
声から想像するに、ウサギさんかな。
子供たちはワキャワキャしながら親の元へと戻っていく。
俺たちも馬から降り、出る。
やっべ、めっちゃ恥ずかしかったあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます