第108話 犬猿の仲

勉強を始めてから1時間ほど経ち、時計の針は6時頃を指す。


真昼と村瀬はちゃんと集中している?のかは分からないけど、ちゃんとワークに取り組んでいる。顔は完全に困ってるけど。


それから少し経ち、真昼はペンを置いた。


「そろそろ6時半だし、晩ご飯にしない?」


そうだな。俺もそろそろお腹が空いてきていたからちょうどよかった。


「はあ、なんだ、集中力もう切れたんだ。そんなので私に勝てるとでも?」


どうやらその発言に村瀬が突っ掛かったらしい。


「はあ?!私はみんながお腹空いてるのかなと思って言っただけだし!」


晩ご飯まではまだもう少しかかりそうなので、俺は教科書を開く。


お、いいのを見つけた。


犬猿の仲。意味は……仲が悪いこと、また、顔を合わせると喧嘩が始まってしまうくらいの仲の悪さを表すらしい。


俺は2人を見る。


なるほど。一瞬で理解できてしまった。意外と勉強と日常って似ているんだな。



結局2人の言い合いは10分ほど続き、ようやく終わった。終わったと言っても一ノ瀬が間に入ってくれたおかげなんだが。


俺は?ま、まぁ、ちゃんと勉強してた……かな。いや、さすがに女子同士の喧嘩を止めれるほど権力ねえよ!もし、止めに入ったら、真っ先にボコボコにされそうじゃん。


女子同士の喧嘩には女子同士で解決するべきなんだって!


でも、やっぱり一ノ瀬はすごいよなあ。ほんと尊敬するわ。



その後、晩ご飯を誰が作るかでも不公平だと喧嘩が起こりそうになった。


結局間をとって一ノ瀬が作ることになった。


しかし。この2人は本当に喧嘩が絶えないな。


『どっちが俺の隣に座るか』ということだけでもまた喧嘩が始まりそうになる。


さすがに今は、料理中の一ノ瀬は2人の間に入ることはできないので、俺が間に入るしかなかった。


しかし、きつく言うことのできない俺は、「じゃんけんで決めろよ」としか言えなかった


それで始まるじゃんけん。二回あいこを挟み、買ったのは真昼だった。


勝ち誇ったように右手を上げる真昼。そして、膝をついて悔しがる村瀬。


なんかこの光景を、ここ数時間のうちだけでも飽きるほど見た。


そして、案の定、食事中も言い合いが絶えることはなかった。


村瀬が俺にあーんをしようとする。それに反応する真昼と俺。すると「前はちゃんと食べてくれたのに」と言う村瀬。それに反応する真昼。


そして、結局2人からあーんをされた。


そして、もちろん洗い物を誰がするかということだけでも……。


ダメだ……。この2人が揃うだけでものすごく疲れる。

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