第109話 やばい、手が止まらない。
俺は今風呂に入っている。
前に村瀬の家の風呂に入った時は、村瀬が風呂場に入ってくるというハプニングもあり、俺は多分そこで気絶した。なんせ村瀬はそのことを隠すから、俺の記憶にあることは起こっているんだろう。
今日も入ってくるんじゃないのかと思っていたが、一ノ瀬が監視をしてくれていたらしい。
そのため、落ち着いて風呂に入ることができた。
俺が風呂を出た後も3人が順番に入り、そして、勉強だ。
やり始めて約1時間、この3人の前では言いにくいのだが、全くやる気が出ない。
いや、そもそも今までテスト勉強なんて全くしなかった俺からしたら、今回のテストは過去1勉強していると言ってもいいだろう。まあ、入試を除いてだけど。
正直言うと、もうテスト勉強なんてしなくても、全教科ある程度の点数は取れると思う。それに、真昼と村瀬は文系科目の勉強をしてるから質問なんてこないし、一ノ瀬は数学の勉強やってるけど、間違いなく俺には質問なんてしてこない。
俺は何をすればいいんだろうか。
「なあ、俺ちょっと休憩したいからあーちゃんの部屋借りてもいいか?」
俺が聞くと、村瀬は「いいよー」と言った。俺はカバンを背負って村瀬の部屋へ向かう。
部屋に入ると、俺はすぐにカバンからラノベを取り、読み始める。このラノベはさっき自分の部屋で読んでいたやつだ。ずっと続きがとっても気になっていた。
俺はページを1ページ1ページ読んでいく。
そして……、あれっ?もうあとがき?やばっ、最後まで読んでしまった。
時計を見ると10時半を回った頃だった。
うわー、やっちゃったよ。テスト前なのにラノベ読んじゃった。ま、まぁ、でも一日ぐらいは休憩必要だよね。うん。たまには必要だな。
気づいた時には2冊目の本に手を出していた。
それに気づいたのは、そのさらに1時間後だった。
勉強を終えた3人が俺の部屋じゃなくて村瀬の部屋に入ってきたのだ。またしてもやってしまったと思う。
「ずいぶん余裕なんだね、京くん?」
一番に喋ったのは、今日一番大人しかった一ノ瀬だった。
あ、これ軽く怒ってますよね。まあ、一応ライバルにされてるみたいだし、そいつが全く勉強してなかったらさすがにそうですよね。
「あ、あはははーー……すいませんでした……」
はじめは笑ってごまかそうをしていたのだが、一ノ瀬の顔を見たら謝るしかなかった。
「まあ、私からすれば、敵がサボってるだけだから関係ないしー。こっちからすれば好都合だし」
なんか初めて見たなこんな一ノ瀬。
俺は少し腰が引ける。こんな女を相手に勝ち目があるわけがない。
「ま、まあ、そろそろ寝るか?」
「そのことなんだけど、今日から数日間、私は京くんと一緒に寝ます」
え、なぜ?純粋にその疑問でしかない。それを言ったのが真昼や村瀬ならすぐに理解はできるのだが、それを言ったのは、一番言わなさそうな一ノ瀬だったからだ。
「え、なんで?」
「いや、村瀬さんの家にはベッドが2つしかなくて、誰が京くんと寝るかでまた喧嘩になるかもしれないから、私が京くんとなることにした」
なるほどな。でも、あの2人が一緒に寝て大丈夫なのか?!
「わ、わかった」
そして今、村瀬の両親が寝ているベッドに俺と一ノ瀬が入っている。
ダメだ。全く寝れる気がしない。最近は不眠が続くなぁ。
「ねえ、起きてる?」
あ、なんかこういうシチュエーションラノベで読んだことあるぞ!
「ああ、起きてる」
「京くんって、まっひーと村瀬さん、どっちが好きなの?」
「いや、それが今は全然わからないんだよな。ほんと俺ってクソみたいな人間だよな。人から告白されといて、答えないとかさ」
「そっか、まあ、じっくりと考えたらいいんじゃない?そんな適当に答えていいことでもないしさ。それに、勉強サボって何時間もラノベ読むのは確かにクソ人間だね。それじゃあおやすみ」
「いや、絶対怒ってるだろその言い方。まあ、おやすみ」
俺は一ノ瀬に背を向ける。そして静かに目を閉じた。
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