第107話 新たな条件
村瀬の家に着いた俺たちは、荷物を持ってリビングへと向かった。
そして、荷物を適当なところに置き、勉強道具を取り出した。少しでも勉強がしたいのだろう。
不思議なことに、俺以外の3人はみんな数学をしている。
「おい真昼、文系教科はもう終わったのか?」
流石に昨日の今日なのでやっていないのはわかりきっている。
「あ、いや、でも村瀬さんとの勝負もあるから仕方ないというかなんというか……」
またしてもおねだりをするように言う真昼。どうやらちょっと本気で言わないとダメなようだな。でも、どうすれば……。あ、いいこと思いついた。
「それじゃあ勝手に決めるけど、なんか真昼とあーちゃんがしている勝負で、1教科でも赤点があったら、無条件で負けな」
「「えっ!」」
突然出した俺の条件に、真昼だけではなく村瀬も反応した。どうやら、村瀬も真昼と同じ状態なのだとすぐに分かった。
「決まりな」
俺は強制的に話を終わらせる。流石に、数学と理科の点数が極端に高くて、そのほかの教科が壊滅的なんてことになればそれこそダメだ。なんとしてもそれだけは塞がなければ。
2人は「まじで……」「嘘でしょ……」などと完全に諦めムードになってしまった。
えっ、そんなにやばい状況なの?!
「み、宮下さん、私たちのやる気を上げるための良い方法を考えてみたんだけど、これはどうかな。この勝負の勝者は後日京くんと2人きりでデートできる。今のままなら2人ともやる気がでない。それなら勝った時の報酬があったらやる気出るくない?」
村瀬はそう言って俺の方を見てくる。一応許可を取りに来ているのだろう。
しかし、しっかりと目が主張している。「お前に拒否権なんてないからな」と言われる気がする。
そんなに脅されて反抗する度胸もない俺は承諾するしかなかった。
「勝手にしろ。でも、一教科も赤点取るなよ?」
俺が言うと、「まっかせてよ!」「赤点なんてとる気しない!」と、一気にテンションが上がった。
普通の人からすれば、俺とのデートなんて死んでも嫌だと思うだろう。でも、どうしてこんなにも喜べるのだろうか。自分で言うけど、俺は自分のいいところなんてあるとは思えない。まぁ、好きって言われることに関しては普通に嬉しいけど。
その後、2人はすぐさま数学のワークを閉じて、文系科目を取り出した。
文句ひとつ言わずに取り掛かる2人を見て俺は感心する。
一ノ瀬はというと、黙って数学のワークに取り掛かっている。
こっちはこっちでかなり燃えてるようだ。
まぁ、負ける気しないけど。
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