第106話 荷物運び

俺たちは、村瀬と別れた後マンションに帰ってきて、お泊まりの準備を始めた。


真昼と一ノ瀬は準備をする必要があるが、俺は教科書を集めるだけでいい。


なぜなら、俺のボストンバッグは今村瀬の家に置いてあるからだ。


俺はカバンに全教科の教科書とラノベを5冊ほど入れた。


いや、息抜きは必要だから!必要……だからね!


終わった。部屋に戻って5分ほどで準備は終わった。


真昼と一ノ瀬の準備ができたら、俺の部屋に来るらしいのでそれまでの間暇な時間となる。


ラノベ読むか。


俺は本棚からラノベを一冊取り、読み始めた。



そして、30分ほど経っただろうか。真昼と一ノ瀬はボストンバッグを持って俺の部屋に入ってきた。


俺は本にしおりを挟み、カバンの中に入れた。


「準備できたか?」


できているから来たのだろうが、一応聞いてみた。真昼と一ノ瀬は頷く。


「それじゃあ行くか」


俺は玄関で靴を履き、出発した。


なのに真昼と一ノ瀬は動こうとしない。


「どうした?」


俺が聞くと、一ノ瀬が元気に答えた。


「これから村瀬さんの家に行くと、罰を与えれなくなっちゃうから、罰は今日村瀬さんの家まで私たちの荷物を持っていくことに決まりましたー」


えっ、これめちゃくちゃ楽になったんじゃね?


ここから村瀬の家まではたかが10分程度だ。


1週間の罰が10分間の罰に!


最高じゃねーか!


「わかった。でも、これで許してくれるんだよな?」


「反省してないのなら許さないよ」


俺のテンションを見て一ノ瀬が言った。


「いや、めちゃくちゃ反省はしてる。これからはこんなことないようにはするから」


「それなら許してあげる。ってまっひーが言ってました。じゃあよろしくね」


俺は「おう、任しとけ」と言って、2人からボストンバッグを受けと……重てえええええええ!!!!


えっ、なんでこんなに重たいの?


その重さは俺の想像の数十倍は超えていた。


金属でも詰め込んでるのかとツッコミたいレベルだ。


普通に考えれば、ボストンバッグに入っているのは、教科書、私服、制服、パジャマと歯ブラシなどのはずだ。


それなのに……。それなのに、どうしてこんなにも重たいんだ?!


「これ……、なに入れてるんだ?」


重さのあまり、聞いてしまった。


「ん?ああ、うん。私は教科書とか服とか色々だね」


隣で「私も」と真昼も頷く。


『色々』という言葉の恐ろしさをこの時はじめて知った。


断ることも出来ないし、俺は決心した。


「行くぞ」


俺はカバンを背負い、歩き出す。



30分後、ようやく村瀬の家に着くことができた。


決心したところまでは良かったものの、マンショを出て休憩。少し歩いて休憩。休憩……。


10分で行けるはずの村瀬の家がとても遠く感じた。


やばい……。俺ちゃんと肩ついてる?なんか足がプルプルしてるんですけどー。


やっぱり運動不足の人間は調子にならない方がいいな。


俺は少し成長した気がする。

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