第81話 朝

「それじゃあ、そういうことで。これから雷が鳴った日は京くんの部屋集合ね」


「いや、そもそもおかしいだろ。なんでお前たちが俺と寝るんだ?こんなの学校の生徒にでもバレたら、俺確実に殺されるんだけど。こんなのセクハラで訴えられてもおかしくないレベルなんだけど」


一緒に寝るのが嫌だというわけではない。むしろ喜んでると言ってもいい。


しかし、さすがに俺がこいつらと寝ると色々まずい。もし寝ている間にこいつらの胸やら下半身やらを触ってしまうと刑務所に入ってしまうかもしれない。


これは自分の身を守るための行動なのだ。


「でも、どうしたらいいの?知らない人と寝るよりは、京くんの方がいいし。ちょっと恥ずかしいけど、それは仕方のないことだよ」


一ノ瀬が俺がいいと言ってくれた。やばい、めっちゃ嬉しい。


「そ、それなら、二人で寝たらいいんじゃないか?女子二人で寝ることには何にもならないし、これなら大丈夫なんじゃないか?」


「いや、怖がってる二人で寝ても意味ないじゃんか。一緒にいて頼りになる人がいないと意味ないんだよ」


えっ、俺頼りにされてるの?めっちゃ嬉しいんですけどー!


「そ、そうか……」


「京くんは私たちと一緒に寝るのは嫌?まぁ、そりゃそうだよね。嫌だよね……、わかった。諦めるよ」


えっ?なんか断り過ぎたか。


「ち、違うんだ。俺が言いたいのは、二人は女子高生なのに、俺なんかと寝てもいいのかってこと。俺は嫌だとか全然思ってはいない。二人がいいなら俺は断る必要はない」


俺が二人に説明すると、一ノ瀬は少し安心したような顔を見せた。


「よかったぁ。てっきり嫌がられてるのかと思っちゃった。ちゃんと考えてくれたんだね。ありがとね。私たちもそういう京くんだから一緒に寝ることもできるんだよ。あ、でも、どさくさに紛れて私たちの身体の大事なとこ触ったりしたらダメだからね」


「あ、当たり前だ。でも、もしかしたら、少しは当たるかもしれない。その時は許してくれ。絶対にわざと触ったりはしないと違うから」


一応、たまたま当たってしまった時のために言っておいた。


「大丈夫だよ。さすがにそんなことを疑ってる相手とは一緒に寝たりしないよ。どうせしてもいいって言ってもできないだろうし。ね、まっひー?」


真昼も隣でうなずいた。


俺も一応男だからな!突然狼になって襲うかもしれないんだからな。


なんかここだけ見ると、二人とも俺のことが好きなのかと思ってしまう。まぁ、ありえないことなんだけど。


「それじゃあ、朝ごはんにでもしよっか。私作るから、二人はお話でもしてて」


そう言って一ノ瀬はキッチンへと消える。


「なぁ、本当に俺なんかと一緒に寝ても、なんとも思わないのか?」


つい真昼に聞いてしまった。


しかし、これは正直な気持ちだ。


もし、俺みたいなオタクと一緒に寝てもいいか学校でアンケートしたら、『いい』と答えるのは、5人もいないだろうな?


「確かに、緊張はするかな。恥ずかしいし。でも、京くんと一緒にいると落ち着くんだよね。これは私が小さかった頃から何にも変わってないよ」


「そうかなぁ。俺といて落ち着くなんてわからないな。でも、そう言ってもらえるとお世辞でも嬉しいな」



一ノ瀬は作り終えた朝食を机に置き、俺たちはそれを食べた。


ってか、こいつらと楽しく話してるけど、今日なんか予定なかったかな……。


俺は壁にかけられた時計を見た。もう9時半か。


っ!思い出した。村瀬たちとの勉強会だ!たしか10時開始の予定だから……、やばくね?!


「悪い、今日ちょっとこれから予定あってさ。俺は飯食ったらすぐ部屋出るけど、二人はどうする?」


「私たちはどうしよっか。ここでする?どうせ6時ごろには帰ってくるでしょ?それまで待ってるよ。予定って、誰と?勉強会?」


「え……っと、郷田、郷田と勉強会なんだ。多分6時ごろには帰ってくると思うけど」


「わかった。いってらっしゃい」


俺は朝食を素早く食べ、服を着替えて、勉強道具を持って部屋を出た。

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